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エンタメ

チョコレートプラネット、10年の下積み時代に見つけた〝ぶれない軸〟

「6.5世代」芸人が見せる骨太な心意気

チョコレートプラネットの長田庄平(左)と松尾駿=2015年10月25日
チョコレートプラネットの長田庄平(左)と松尾駿=2015年10月25日 出典: 朝日新聞

目次

2021年4月、霜降り明星、ハナコとともにコント中心のバラエティー番組『新しいカギ』(フジテレビ系)のレギュラー出演が決定したチョコレートプラネットの長田庄平と松尾駿。現在でも『有吉の壁』(日本テレビ系)といったバラエティーで大活躍しているが、過去には約10年もの下積み時代があった。コント・漫才・ものまね…と、どんな形態にも対応できる〝ぶれない軸〟を彼らは、どのようにしてつかみ、人気をキープしているのか。「6.5世代」を体現する2人の魅力に迫る。(ライター・鈴木旭)

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「ものまね」「お笑い」の垣根なくしたパイオニア

2017年、バラエティーで一気に露出が増えたチョコレートプラネット。きっかけは、2016年12月に放送された『ものまねグランプリ~ザ・トーナメント~ 今夜、真のものまね日本一が決まる!』(日本テレビ系)の出演だった。

まだレパートリーこそ少なかったが、長田は和泉元彌、松尾はIKKOのものまねで強いインパクトを残し、一躍注目の的となる。また、このことでデビュー以降2人が抱えていた壁も吹き飛んだ。長田は、当時の状況についてこう振り返っている。

「実は僕たちはそれまでひな壇のトークに苦しんでいたんです。コントをやっていない時の僕らは毒舌でもないし、賢くもないし、悪でもない。キャラがないコント芸人があの舞台で活躍するのは至難の技なんです。どんなコメントが帰って(原文ママ)くるかわからない芸人にはMCも振りませんからね」(2019年11月22日に掲載されたKKベストセラーズのWEBメディア「BEST TiMES」のインタビューより)

ものまねしたまま、ひな壇に座ってトークを展開する。過去をさかのぼると、神奈月が『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で披露してはいるが、これを毎週のように持続させたのはチョコレートプラネットが初めてだろう。

また彼らと連動するように、野沢雅子氏(ドラゴンボールの主人公・孫悟空の声優で有名)に扮するアイデンティティ・田島直弥、和田アキ子のものまねで知られるMr.シャチホコが活躍している。この事実からも、チョコレートプラネットは“お笑い芸人”と“ものまね芸人”の垣根をなくし、バラエティーの可能性を開拓したパイオニアと言えるだろう。

おなじみのポーズで交通安全を呼びかける「チョコレートプラネット」の2人=2019年12月7日、千葉市美浜区のイオンモール幕張新都心、佐藤瑞季撮影
おなじみのポーズで交通安全を呼びかける「チョコレートプラネット」の2人=2019年12月7日、千葉市美浜区のイオンモール幕張新都心、佐藤瑞季撮影
出典: 朝日新聞

『内村プロデュース』の魂を引き継ぐネタ職人

一方で、若手芸人が多く出演する『有吉の壁』(日本テレビ系)でも存在感を示している。

新キャラクターを誕生させようと企画された「ブレイク芸人選手権」では、“T”の文字を見つけると両手を広げて「ティー、ティティ、ティーティーティティ♪」と歌うリズムネタの「TT兄弟」、様々な問題に対してパーカーのフードを被ることで解決させてしまう「Mr.パーカーJr.」といったヒット作を生み出した。

チョコレートプラネットと同じく、「6.5世代」と呼ばれているパンサー、ジャングルポケット、シソンヌらも持ち味を生かしたネタは見られるが、反響の大きさと打率の高さを考えると頭一つ抜けている。それは、番組に対する思い入れが人一倍強いことも関係しているのかもしれない。

2020年12月25日に発売された「クイック・ジャパンvol.153」(太田出版)のインタビューの中で松尾は、「僕ら全然仕事がないときに『有吉の壁』に出させてもらって、しかもオーディションからだったんです。それは特別ですよね。『拾ってもらった』感覚はずっとある」と語っている。

番組MCである有吉弘行は、『内村プロデュース』(テレビ朝日系)によって再ブレークの足掛かりをつかんだ。ウッチャンナンチャン・内村光良が日の目を見なかった有吉を引き上げ、今は有吉が若手や中堅にチャンスを与えている。チョコレートプラネットは、この流れを継承するネタ職人なのだろう。

チョコレートプラネットが再ブレークする足掛かりをつくった有吉弘行
チョコレートプラネットが再ブレークする足掛かりをつくった有吉弘行
出典: 朝日新聞

「香水」パロディーから見える“ブレない軸”

SNSをうまく利用しているのもチョコレートプラネットの特徴だ。2019年は「芸能人YouTube開設元年」とも呼ばれたが、その約1年半前の2017年8月にチャンネルを開設している。

同時期、ガリットチュウ・福島善成、野生爆弾・くっきー!は、インスタグラムにものまねメイクの写真をアップして注目を浴びたが、彼らは動画に可能性を求めていたのかもしれない。「ASMR」や「○○してみた」などYouTuber的な企画もあるが、ネタやラジオなど芸人らしい動画も多く投稿されている。

その中、彼らの得意とするものまねがYouTubeユーザーのニーズと結びつく。2020年に大ヒットした瑛人の楽曲「香水」のMVを再現した動画をアップすると、爆発的な再生回数を叩き出した。現時点で3489万回再生。同様のパロディー動画を上げた四千頭身が894万回再生、オリエンタルラジオ・藤森慎吾が572万回再生という事実を考えても驚異的な数字と言える。

瑛人と長田の顔が似ていたり、女性ダンサーをIKKOに扮した松尾が演じていたりと話題性もあったが、何よりもMVを忠実に再現したクオリティーの高さが反響を呼んだのだろう。

この現象から受け取れるのは、流行に敏感なアンテナを持っていることと、いち早く自分たちの芸風に落とし込むことができる柔軟な姿勢だ。チョコレートプラネットは、コント、漫才、ものまねをこなし、バラエティーでは進行役も担うなど、一見すると器用さばかりが目立つ。しかし、裏を返せば彼らの中に“ブレない軸”があるからこそ、どんな形態でもアウトプットできているのだと思う。

ここ最近、音声SNS「Clubhouse」が急速な広がりを見せている。今のところ、ラジオに近い使い方が主流だが、レイザーラモンRGがシンガーソングライター・佐野元春の真似で歌詞を朗読したり、バカリズムが親交の深い後輩・おかゆ太郎の生い立ちをインタビューしたりと、独自の手法も生まれてきつつある。

この流れで、チョコレートプラネットがユニークなスタイルを発見するかもしれない。現状は具体的な動きはないが、注目したいところだ。


萩本欽一が絶賛した「動き」

では、チョコレートプラネットにとって“ブレない軸”とは何なのか。この点については、今までの実績が物語っている。

2006年にコンビを結成すると、彼らはすぐに賞レースで頭角を現した。「キングオブコント2008」を皮切りに2014年、2018年と3度も同大会のファイナリストになっている。さらには、「R-1ぐらんぷり」で2018年に長田が、2019年に松尾が決勝に進出するなど、それぞれの実力も知られたところだ。

彼らの強みは、何と言ってもコントにある。美大出身の長田がネタと小道具を作り、ボケとツッコミにとらわれない演劇的な要素を持っているのが特徴だ。きっと駆け出しの頃から、しっかりと自分たちの色を見つめ続けてきたに違いない。

前述の「BEST TiMES」のインタビューの中で、2人は下積み時代を振り返ってこんなことを口にしている。

「ガーッとすごい勢いで売れていく芸人の背中を何組も見てきたし、同時にテレビに出まくっていたのに、あっという間に消えていくという現実も見ていましたね。彼らがどうして人気が落ちたのかをジーっと観察していました」(松尾)

「一気に売れていく人はやっぱりすごいと思います。でも、消費されてしまったあとが大変だなって。しっかりネタをやっている人とそうでない人では、ブレイクした後に差が出るんだと気付きました」(長田)

彼らのコントは、同業者からも評価が高い。お笑い界のレジェンド、コント55号の萩本欽一は、2014年10月16日に掲載された「メディアゴン」のインタビューの中で「(「キングオブコント2014」の)決勝はネタが悪くて負けちゃったけど。動きはピカイチだった。ネタをやったあとの手さばき、足さばきができるんだよ」と2人の実力を絶賛している。

テレビの露出が少なかった2014年7月、チョコレートプラネットは主に俳優が出演する舞台『江戸のえじそん』に参加し、演技力に磨きをかけている。こうした地道な活動によって、萩本の言う“芝居の動き”を体得していったのだろう。

チョコレートプラネットの実力を認めていた萩本欽一
チョコレートプラネットの実力を認めていた萩本欽一
出典: 朝日新聞

「6.5世代」のタフさ

テレビ出演は早かったものの、その後は約10年くすぶったチョコレートプラネット。ものまねという武器を手に入れ、ジワジワと露出が増えた矢先の2019年には、「第七世代」と呼ばれる新たな波も押し寄せた。

この時期の松尾の心境については、2019年末に私がMr.シャチホコにインタビューした際に聞いたことがある。ある日、居酒屋で一緒に飲んでいると、松尾が冗談交じりに「オレらさ、第七世代に入れてもらえなかったよ。悔しいよな。オレらとシャチホコくんとりんごちゃんで、『ものまね第七世代』って言っちゃおうぜ」ともらしていたそうだ。

苦労して這い上がってきたところに、それまでになかった大きなブームが起きたのだから当然だろう。ただ、だからこそ、彼らの世代はどんな境遇にも負けないタフさがあるように思う。

かまいたち、ジャングルポケット、パンサー、さらば青春の光、ニューヨークなど、「6.5世代」「6.9世代」という微妙な位置づけをされる芸人たちは、それぞれが紆余曲折を経て現在のポジションを築いている。共通するのは、根底に「ネタさえ面白ければ何とかなる」という芸人らしいプライドを持っていることだ。

チョコレートプラネットもまた、これを体現し続けている。あらゆる種をまいた結果が、今になって次々と実りの時期を迎えているだけなのだ。どんな時代も、身に着けたスキルや芸は裏切らない。彼らの姿勢は、そんな芸人の心意気を感じさせてくれる。

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