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Clubhouseが生んだ「雑談のオンライン化」 加熱した三つの理由

日本で急速に広まった招待制音声SNS「Clubhouse」について、コミュニケーションの観点からNEWPEACEの高木新平CEOに聞きました
日本で急速に広まった招待制音声SNS「Clubhouse」について、コミュニケーションの観点からNEWPEACEの高木新平CEOに聞きました

目次

「とにかく早く記事を出してくださいね!笑」。取材後に念押しされたのには理由があります。1月末から日本で急速に広まった招待制音声SNS「Clubhouse」について、いち早く使っている一人が企画集団「NEWPEACE」CEOの高木新平さんです。ユーザー数の急増により、日々、使われ方が進化しているだけに、簡単に説明することが難しい「Clubhouse」。公開打ち合わせや採用イベント、さらには夫婦配信など、様々な使い方に挑戦する高木さんには、どのように見えているのでしょうか。公開取材の形を取り、Clubhouse上でさっそく聞いてみました。(withnews編集部・丹治翔)

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取材はClubhouse上で公開の形で行った
取材はClubhouse上で公開の形で行った

「明らかに広がる」と直感

国内では1月下旬から、スタートアップの起業家などを中心に広まったClubhouse。アプリ上ではユーザーが自由に会話をするための「部屋」を作ることができ、オープンな設定をすれば誰でも入ることができます。話をするのはモデレーターやスピーカーで、リスナーが話すことはできません。モデレーターに招待されれば会話に加わることができる仕組みです。

サービスを使うには既存ユーザーからの招待が必要になるClubhouse。高木さんも、知人の起業家に誘われて24日に登録しました。

「登録をしたら、すでにたくさんのルームができていて。のぞいて聞いてみるとスピーカーに呼ばれて、いきなりセッションが始まって。これは面白いなと思いました。なので翌日からは自分で部屋を作って、配信も始めました」

仕事の話から、どうでもいい雑談や夫婦での会話まで、様々なテーマで1週間配信を続けたという高木さん。「他のSNSや知人たちからのメッセージの熱量で『明らかに広がる』と思ったんです。なので実験のつもりで色々と配信しています」

笑い声で感じた「余白」

高木さんが注目するのが、「笑い声」です。

「Clubhouseはみんなで“カッカッカッ”と笑ったときに、誰かの笑い声だけを吸い取らず、会話の重なりもオフラインと近い感覚で伝わります。アメリカのコメディードラマの笑い声みたいな」

「そういうZoomにはなかった『余白』がつくれていることで、リスナーとして聞いているだけでもスピーカーたちと感情をシェアして、一体感を高めやすい。まさに『雑談のオンライン化』が成立しつつあると思います」

新型コロナウイルスの流行が始まった昨春、外出自粛が求められるようになり、自宅にいても会議や飲み会ができるZoomなどのビデオチャットが浸透しました。高木さんは当時、「ようやく、若い世代だけでなく多くの人たちにとってオンラインとリアルの境目が溶けてきた」と表現。実際に会えるオフラインの環境だけが「リアル」ではなく、デジタル上でもオフラインと変わらないコミュニケーションができるのであれば、それも「リアル」とする考えです。

加熱した三つの理由

2度目の緊急事態宣言で高まっていたコミュニケーションの欲求を一手に引き受ける存在になりつつあるClubhouse。

「コミュニケーションに関するサービスは色々と見てきていますが、現時点では化け物です」

その背景には、Zoom会議やウェビナー、オンラインカンファレンスなどビジネス領域でのオンライン化があったからだと指摘します。

「ビジネス活動のオンライン化が進んでいなければ、Clubhouseもプライベートな話をする場だけにとどまっていたかもしれません。あらゆる領域のビジネス活動のオンライン化が先行していたことによって、パブリックな話とプライベートな話が混在する場になっていると感じています」

さらに近年、著名人がSNSでの活動を活発にしていることもClubhouseにとっては幸運だった言います。

「YouTubeやInstagram、TikTokを使いこなしている著名人にとっては『別の庭を持った』ぐらいの感覚だと思います。また、ラジオ的な雰囲気であることを考えると実はビジネスよりもカルチャーとの相性がいい。著名人やメディアの参加によってファンや視聴者が連れてこられるので、Clubhouseの裾野は広がると思います」

高木さんが今、実験しているのは「夫婦配信」です。

「Clubhouseが面白いのは、内輪っぽい情報や関係性、背景が伝わる『生感』だと思うんですけど、これは昨今のD2C(Direct to Consumer)の拡がりと重なっていると思うんです。きれいに編集加工された情報より、無駄があるけど、その無駄も含めて情報を取り入れる選択権や楽しみは、受け手側に主導権がある」

「なので、あえて自分も仕事や趣味の話だけじゃなく、自分の内側としての夫婦での会話を配信し始めました。継続できるかは妻の協力次第ですが、内側をさらけ出していくことで共感や親近感の輪って生まれていくんだろうなと思っています」

ビジネス活動のオンライン化が先行していたことによるパブリックとプライベートの混在化と、著名人の参入障壁の低さ。そして消費者が供給側の背景に興味を持つようになった価値観の変化。この三つがClubhouseへの関心を急速に高めていると高木さんは分析しています。

リアルの拡張、さらに加速へ

今までのSNSは「強者のゲーム」になりがちな側面もありました。

「Clubhouseも、ユーザーがどうマネタイズできるようになるかで変わってくるでしょう」と高木さん。

「広告モデルであれば、規模が大きい人にお金が集まるので、フォロワー数の競い合いが激しくなります。課金型であれば、発信者であるクリエイターと濃いファンが交わる場になるので裾野は広がると思います。どうなるかは分かりませんが、きっと分散型になっていくんじゃないですかね。そうしたら、下手に聴衆受けを狙うよりも、自分らしいニッチを楽しんだほうがいい」

ユーザー数の増加によって、日に日にその姿を変えてくClubhouse。将来性について高木さんは「このまま伸びるかもしれないし、成長が早すぎてすぐに廃れるかもしれない。先のことは分かりませんよ」とした上で、こう語りました。

「中長期的に見れば、あらゆるものがデジタル化するなかで、コミュニケーションもテキスト、ビデオチャット、さらにSNSの進化が交わってClubhouseが生まれた。今後どのサービスが新しいスタンダードになるかは分かりませんが、一度便利に進化したものは不可逆です。雑談のオンライン化によって、リアルの拡張はさらに加速していくと思います」

※今回は記事化が前提であることを高木さんも承諾した上で、Clubhouse上で取材を行いました。

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