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なにわのスケート靴職人、ロバさん 高橋大輔、紀平梨花…足元支える

勝負は「ミリ以下」の戦い

フィギュアスケートの刃を砥石で研ぐ田山さん=2020年10月27日、橋本佳奈撮影
フィギュアスケートの刃を砥石で研ぐ田山さん=2020年10月27日、橋本佳奈撮影

目次

フィギュアスケート選手にとって、スケート靴は商売道具。命とも言えます。大阪市北区の「小杉スケート」本店長の田山裕士さん(60)は、高橋大輔選手や紀平梨花選手などトップ選手や地元の子どもたちから「ロバさん」と愛称で呼ばれ、親しまれています。〝ミリ以下〟の調整に神経を使うスケートの刃。ロバさんの仕事場をのぞいてみました。

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高橋大輔選手とも気軽にLINE

「小杉スケート」は、阪急梅田駅近くの高架下に構える専門用品店です。

店内にはずらりとフィギュアスケート靴やアイスホッケー靴、スケートの練習用ウェアや刃を保護するケースなどが並びます。

今年の秋口に訪れると、女子選手が練習着のまま靴を持ち込んでいました。

「エッジ(刃)のここに傷が入っちゃって……」
「これじゃあ抜けるよ(刃が氷をとらえることが出来ないこと)」

ロバさんは、すぐに研いでトラブルに対応していました。

田山さんは、この道42年のベテランで大阪市の小杉スケート本店と臨海スポーツセンター店(大阪府高石市)を拠点に、関西圏、中四国や中部圏の数多くの選手の靴の面倒をみています。

直接コーチや選手の要望を聞いて仕上げる丁寧な対応が人気です。

高橋選手(左)が獲得したバンクーバー五輪の銅メダルを手に記念撮影する田山裕士さん=2010年5月、大阪府高槻市、田山裕士さん提供
高橋選手(左)が獲得したバンクーバー五輪の銅メダルを手に記念撮影する田山裕士さん=2010年5月、大阪府高槻市、田山裕士さん提供

アイスダンスに転向し、11月末のグランプリシリーズ・NHK杯に出場した高橋大輔選手は普段アメリカで練習していますが、国内に大会などで戻る度に田山さんに頻繁に見てもらっています。

田山さんが高橋選手とのLINEを見せてくれました。「どうなの?」や「お疲れ」など、気取らないやり取りが続いています。

取材した時も、NHK杯で高橋選手が戻ってくるタイミングでした。「もうそろそろ帰ってくるから、どうなん、と聞いてみようと思うんだ」といつも選手のことを気にかけています。

勝負は「ミリ以下の戦い」

スケート靴の調整で難しいのは、スケート靴と刃の位置をうまく調整することです。

スケート靴の靴底やかかとの部分は、黒や茶色で木のように硬いですが、多くは革で出来ていて、そこにスケートの刃をねじで数カ所とめています。

筆者もフィギュアの競技経験が14年ありますが、ちょっと右や左にずれるだけで、感覚が変わってしまいます。氷上に片足で立ったときに、重心が内側や外側に傾いてしまう感覚があると、ジャンプを踏み切るときなどに影響が出ます。スケート靴を新調した日は、一日、刃の位置が合っているかどうか、氷で試しては降りて付け替えて、と調整が必要でした。

トップ選手の中には、人一倍刃の位置にこだわることで演技力につなげている選手もいます。紀平梨花選手は、刃の位置の微妙な位置にこだわりがあるといい、国内で練習していたときはよく修正していたそうです。調子が良かったときの靴に刃がついたままの状態で何足も持っているという紀平選手。「梨花の場合はミリよりも小さな調整をしたよ。エッジ(刃)と靴の間の小さな隙間を無くすために苦労した」と田山さんは振り返ります。

店舗だけでなく、スケート場で作業しているときは、選手の練習の様子をみて「ちょっと靴を見せてみな」と、滑りの癖などから、選手やコーチとも頻繁に会話をします。田山さんから刃の調整や研磨を提案することもあるといいます。中には、刃の位置が違っても我慢して合わせてしまう選手もいるからです。

スケート靴を磨ぐ田山さん=2020年10月27日、大阪市北区、橋本佳奈撮影
スケート靴を磨ぐ田山さん=2020年10月27日、大阪市北区、橋本佳奈撮影

お父さんのような存在

田山さんは、選手のことを「梨花」「大輔」と呼びかけ、気さくに接しています。トップ選手だけでなく、小さい子どもたちにも同じように接しています。まるで、みんなの頼れるお父さんのような存在です。

「考えているのは、氷の上にちゃんと立たす、というだけやなあ。『優勝した』とか良い報告をしてもらうと、『頑張ったなあ』とほっとするね」

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