連載
#8 「きょうも回してる?」
ガチャガチャに透かし彫りの理由 アーティストとコラボ「鹿を…」
「ギリギリを攻めています」
個人で活動するアーティストは、SNSが登場したことで発表の場が広がりました。
インターネットが発達する以前は、個人で活動するアーティストが自分の作品を知ってもらうためには、何らかの賞を受賞したり、人が集まるイベントに出展することが必要な場合も多く、場所も期間も限られていました。
しかし、Twitterをはじめ、Facebook、Line、InstagramなどのSNSが広まることで、自分の作品を発表し活動できる範囲が圧倒的に広がりました。
一方で、イラスト等の二次元の作品でしたらインターネットを活用して広めることもできますが、造形物等の立体感のある作品については、インターネットだけでは魅力を伝えきることが難しいという側面もあります。
そんな立体感のある作品の魅力を一人でも多くの人に広めるための手段のひとつに、「商品化」があります。
そこで登場するのが、ガチャガチャです。
ただ、アーティストとのコラボ商品を作るケースでは、一般的に商品の量産化を視野に入れた時、現実的に造形のディテールが思うように再現できないケースが多いです。
安藤さんも、発注したムラマツさんの造形を初めてみたとき、最初は「無理です」と断ったといいます。「技術的にも難しいし、原価的にも厳しかった」
しかし「ここが作品の肝なので、なんとしてでも再現してほしい」というムラマツさんの作品への想いを汲み、SO-TA所属のモデラー(デザインをもとに実際に形にする人)と試行錯誤しながら、なんとか透かし彫りを再現しました。
ムラマツさんは、この透かし彫りについて「古くから受け継がれたものが、時代の流れという言葉を免罪符に急速に失われていく今、私はもう一度『日本』という国で継承されてきた美しいものに目を向けたかった」とコメントしています。
安藤さんは改めて神鹿の商品化を振り返って「アーティストのこだわりをいかに形にするか、それを社内で一貫して行えることがSO-TAの強みです。確かに1個500円でもかなり大変ですが、ギリギリを攻めています。僕たちだけで作ると、透かし彫りを入れようという発想にはならない。逆にやめようという発想になる」と笑っていました。
この神鹿は、パート1の反応が良かったため、パート2が来年1月下旬に発売されます。
なぜアーティストとコラボするのかと聞くと、安藤さんは「カプセルトイをきっかけに、お客様がアーティストの作品に興味を持ち、実際に個展に足を運んでもらったりする流れをつくりたいんですよ。そして作品を買ってもらえれば、アーティストの活動の幅も広がっていくかもしれないですよね」と話します。
アーティストの想いを限りなく形にすることでお客さんにもその想いが伝わるSO-TAの商品に、今後も目が離せません。
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「空想生物図鑑Ⅱー神鹿(しんろく)ー」のラインナップは、銀麟、黒麟、白麟の3種類。1回500円。
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