連載
#18 あなたの知らないトイレ
ウォシュレットのビデはストリップ発?トリビアのネタ、再検証したら
九州唯一のストリップ劇場が来年5月で店を閉めることになりました。取材中ふと頭に浮かんだのが「TOTO」。新製品開発の参考にするため男性社員がストリップ劇場に通ったという話です。この話はかつての人気番組「トリビアの泉」でも。お店がなくなる前に真相を確かめたいと取材を進めると、意外な事実が明らかになりました。
ストリップ劇場は北九州市小倉北区にある「A級小倉劇場」。トイレなど水回りの大手メーカーTOTOも同じ北九州市に本社を置いています。
記憶にあったのは、トイレなど水回りの総合メーカーとして知られるTOTOのウォシュレット開発について紹介するテレビ番組です。ウォシュレットが誕生したのは1980年。その3年後にビデ付きのタイプが発売されました。
水が噴き出す位置や角度を決める際には、担当の男性社員が多くの同僚の協力を元に位置を決めたそうです。ただ、ビデの開発協力は女性社員に頼みづらく、ストリップに通って位置決めの参考にしたという話です。
北九州市の会社だから、もしかしたら今回閉店を決めた「A級小倉劇場」に通ったのでは――。さっそく「ビデって、この劇場で研究して生まれたんですか」と経営者の木村恵子さんに聞いてみると、「そんな話は聞いたことないよ」との返事。スタッフたちにも確認してくれましたが、みなさんご存じありませんでした。
考えてみればそれもそのはず。お客さんが「今日は新商品の開発で来ました」と宣言して入店することはないでしょうから、お店の人が知らなかったとしても不思議はありません。
取材を進めると1冊の本にたどり着きました。2003年に「フジテレビ トリビア普及委員会」が講談社から出している「トリビアの泉~へぇの本~第Ⅱ巻」です。その中には劇場名の記載こそありませんが、TOTOの広報が実名でビデ機能の開発のため開発メンバーがストリップに通っていたと説明して、「84へぇ」を集めています。
これらの話を元にTOTOに取材を申し込みました。広報の桑原由典さんは「調べてみますので、少し待ってください」との答え。1週間後、話してくれたのは次のようなことでした。
「ビデの開発担当者はすでに退職している。かつて雑誌にそのような話が載ったことや、広報がビデの開発秘話としてそういった話をしたことは把握しているが、現状では社内に劇場で観察したという記録はなく、そういった所に通って開発の参考にしたかどうかは分からない。当時の広報が何を元に話したのかもわからない」
ちょっと驚きました。ちなみにウォシュレットの開発に多くの社員が協力したという資料はあるそうです。
ストリップの閉店に続き、そこにあったかもしれない商品開発の情熱まで不確かになったようで残念な気もしましたが、時代は移りゆく。その時々に記録を残していくことにはやはり意味があるんだということへの思いを新たにした取材になりました。
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