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コラム

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遊具のテープは誰が巻いた? コロナで見逃していた…身近な人権問題

子どもだって言いたいことがあったはず

ある日、公園の遊具が赤テープでぐるぐるに巻かれていました
ある日、公園の遊具が赤テープでぐるぐるに巻かれていました

目次

新型コロナウイルスによってめまぐるしく、日々が変わっていった2020年が終わろうとしています。子どもを連れて歩いていた時、目に入ったのが「使用禁止」の赤テープでぐるぐる巻きになった公園の遊具。生活が大変な人がたくさんいる中、子どもだって言いたいことがあったはず……。「第3波」が襲う今、「子どもの権利」について考えます。

「市民からの『通報』もあって」

今年4月末、近所の公園の滑り台が「使用禁止」の赤テープでぐるぐる巻きになっていました。

「これ以上、どこに行けばいいの?」

見慣れない赤テープを触る1歳半の息子に、「すべりだい、だーめ、って書いてあるのよ」「公園、ばいばいね」と説明していて、涙が出ました。

その頃は、夫婦ともに在宅勤務になり、保育園は医療職など在宅勤務出来ない世帯の子どもだけを受け入れる方針になっていました。

歩いたり走ったりが楽しい時期の息子を、家で遊ばせるのは、限界でした。仕事の合間に夫と交代で、息子を散歩に連れ出し、さまよいました。交通量が多い家の周りでは、子どもが事故にあわないか、ひやひや。

役所の公園課に経緯を聞いてみると「区内の公園は一律、複合遊具を使用禁止にしました」「子どもが密集して感染の恐れがあるので」「市民からの『通報』もあって」「都の方針もありまして」「ほかの区もやっているはず」。

私の町はまだマシだったようで、隣の町では全ての遊具がブルーシートで覆われ、その周辺に赤コーンを立てる徹底ぶりでした。

遊具は「完全封鎖」されていた
遊具は「完全封鎖」されていた

子どもが真っ先に制約された

子どもの権利について詳しい弁護士の一場順子さんは、「大人もみんな大変だった。でも、その中で、声が小さい子どもの権利が真っ先に奪われたことが問題でした」と話します。


一場弁護士は、今年9月、日本財団が発表した「子どもの権利を守る法律(子ども基本法)」の制定についての提言書をまとめた委員の一人でもあります。「日本はまだまだ子どもの権利が制約されている国なんです」


「子どもの権利」がどんなものか、「子どもの権利条約」(日本は1994年に批准・発効)に則して聞きました。

一場弁護士は「一番ないがしろにされたのは『休み、遊ぶ権利』(第31条)だったと思います」と指摘します。

公園の遊具閉鎖、友達と遊べる学校の一斉休校、夏休みの短縮……。確かに、休みと遊びは多く制約を受けていたかもしれません。「子どもにとっての遊びは、成長に必要不可欠なものです。大人の遊びとは違うのです」

オオバコ相撲をする子ども(写真はイメージ、pixta)
オオバコ相撲をする子ども(写真はイメージ、pixta)

とはいえ、未曾有の事態。みんなが我慢していたし、「権利」なんて言っていられなかったのでは?

「たしかに、感染という公衆衛生の問題があったのである程度の制約は『仕方ない』状況ではありました。でも、それをしなければいけない科学的な根拠はあったのでしょうか。理由を説明しなくても、『無言で抵抗をしない』子どもから、真っ先に制約された。本当にそれでよかったのか?と思います」


一場さんは、子どもの権利条約の原則の中で、特に大事なものとして「子どもが意見を表明し、参加できること」、「子どもの最善の利益」を挙げます。

前者は、子どもは自分に関係のある事柄について、自由に意見を表すことができ、大人はその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮すること、後者は、子どもに関することが行われる時に「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考えるという意味です。


「あの時、大人は『子どもの意見を聞く』『子どもにとっての最善』を考えられていたのでしょうか」

子どもの命を奪った戦禍の反省から

なぜ「子どもの権利」が守られなければいけないのか。それは、条約が生まれた歴史が関係しています。
第二次世界大戦後、「子どもの権利条約」の草案を出したのは、ポーランドでした。ナチス・ドイツによってアウシュビッツ強制収容所が建設されるなど、迫害の舞台となりました。戦争で亡くなった国民600万人のうち、200万人が子どもだったとされています。


一場さんは、「戦争だから仕方ない」として、多くの子どもたちの命を奪った反省が、この条約の設立背景にはあったと強調します。


今の日本を、当時の戦争の状況に重ねるのは無理があると思う人がいるかもしれません。でも、「大変なときだから仕方ない」といって、未曾有の事態に無意識に子どもの権利をないがしろにしてしまう構造が、まだ社会には残っているのも事実です。

背景を知り、そんな事実を突きつけられたような気がして、恐ろしくなりました。

「大切にすべきこと」を見つめる

「子どもの権利」がないがしろにされる問題は、けっして過去の話ではありません。

児童精神科医の井上祐紀さんは今、現実に「子どもの権利」が侵害されはじめていると指摘します。

「子どもたちは本当にいろいろな問題で苦しんでいます。大人は『感染を止めるか、経済か』を見ていました。そして一番、軽視されていることの一つだった子どもたちから問題は出始めています」

「子どもにどんなニーズがあるかを耳を傾け、SOSを受け止めること。大切にすべきことは何か、そこに気づいて、対処しなければいけません。もう、医師や弁護士や教師、一つの職種では対応できないほど、子どもたちは追い込まれています。社会総動員で対処しないといけません」

コロナ禍はまだ続きます。

「子どもの権利について、ここらへんできちんと整理をしておこう」

今だからこそ、多くの人と話し合う時期なのかもしれません。

 

withnewsでは12月19日(土)15時30分から、井上祐紀医師と、一場順子弁護士をスピーカーに招いた緊急トークイベントをオンラインで開催します。
コロナ禍の子どもの声として、現役高校生や、教育現場で親子の悩みを受けてきた西川孝治さん(大阪市立中学校長)にも登壇していただき、リアルなニーズを聞いていきたいと思います。
権利から見たとき、どんな行動をすれば良いのか。
傷ついた子どもたちの心に、どう接すれば良いのか。

みなさんと話し合いたいと思います。ぜひ、ご参加ください。
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