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「普通にボケたい」Aマッソの映像漫才〝反省〟を経て見つけた新境地

実は読書家、動画も手がける意外な展開

ネットでの活動も積極的なAマッソ
ネットでの活動も積極的なAマッソ

目次

2020年12月14日に放送の『女芸人No.1決定戦 THE W 2020』(日本テレビ系)に出演し、斬新な“映像漫才”を披露して話題となったAマッソの加納と村上。昨年2019年は、すべての賞レースに出場せず独自路線を走る中で、ネタ中の“不適切発言”で反省コメントを発表する事態に。波乱の年となったが、今年から追い風が吹き始めた。一体どんな変化があったのか。彼女たちの軌跡を振り返る。(ライター・鈴木旭)

「ふざけて生きていこうぜ」でコンビ結成

加納と村上は小学校からの幼なじみで、当時から何人かで漫才を披露していた。絶妙なコンビネーションを見せられるのは、長年の付き合いのたまものなのだろう。

高校、大学と別々の道を歩んだが、実家が近いことから交流は続いていた。大学生の村上が就職活動を始めた際、加納が「就活なんてしてんじゃないよ。ふざけて生きていこうぜ」と声を掛けコンビを結成。 インディーズライブに出演する中で、最初の事務所である松竹芸能に所属する運びとなり、2010年4月にAマッソとしてデビューすることになった。

2011年に上京するも、事務所の意向とのすれ違いもあり2013年に退所。フリーでの活動を余儀なくされた。昨年、私が直接インタビューした中で加納は「事務所に所属もしてなかったし、やることがなかったので焦燥感でライブに出てました。ネタをやることしかできないから、せめて芸人仲間には認められたいって思いが強くて」と当時の心境について語っている(2019年8月5日に掲載された「bizSPA!フレッシュ」の「Aマッソが振り返る「焦燥感でライブに出ていた」フリー時代」より)。

その思いが届いたのか、同じライブに出演していた芸人の誘いで現在の事務所(ワタナベエンターテインメント)に移籍。退所して程なく新たなスタートを切った。

「単独ライブ行きたいぐらい面白い」

Aマッソのチャンスは、比較的早い段階でやってきた。若手芸人がネタ作り合宿を行って「日本一面白い無名芸人」を決めるドキュメントバラエティー『爆笑ファクトリーハウス 笑けずり』(NHK BSプレミアム・2015年8月~9月終了)に出演し、準優勝を飾ったのだ。

合宿前の最終オーディションの時点で、講師(兼 審査員)として出演した笑い飯の西田幸治から「単独ライブ行きたいぐらい面白い」と称賛されるなど同業者や関係者からの評価も高かった。周囲からは“ネクストブレーク”と期待の声が上がるも、その後バラエティーで頭角を現すには至らなかった。

この件について先述したインタビューで加納は、「めちゃめちゃ転機にはなりましたけど、そこで『売れる!』って気持ちはなかったですね。認知されたことによってライブの動員も増えたし、『ネタがやりやすくなる』『単独ライブできる』とかは思いましたけど」と、その胸中を明かしている。若手としては冷静過ぎるほどの言葉だ。

2016年9月から静岡朝日テレビ制作のインターネットテレビ局「SunSetTV」(現在は配信終了)の映像コンテンツ『Aマッソのゲラニチョビ』(SunSetTV)がスタートし、2017年3月には『オールナイトニッポンR』(ニッポン放送)にも出演したが、ここで飛躍することはなかった。

普通にボケたいし、普通に売れたい

2018年2月、加納1人が『ゴッドタン』(テレビ東京系)に出演。番組の恒例企画である「腐り芸人セラピー」で、女性芸人のやるせない実情を訴えて波紋を呼んだ。

端的に言えば、テレビで求められるのは“見た目が強烈なキャラクター”であり、特徴のない女性芸人がフェアな評価を受けられず悩んでいるという内容だ。番組レギュラーである劇団ひとり、おぎやはぎの2人が自身の経験を踏まえてアドバイスを送っていたが、どれも加納には腑(ふ)に落ちないようだった。

もちろん番組を盛り上げるための“プロレス的な構図”をまっとうしただけなのかもしれない。しかし、2018年8月18日に掲載された集英社女性誌のキュレーションサイト『HAPPY PLUS ONE』の中で、加納が「(女性という武器を使わず)やっぱり芸人として普通にボケたいし、ネタの面白さをちゃんと評価されて、普通に売れたい」と口にしていることからも、“男女関係なく面白さで評価されたい”というスタンスは本音のようだ。

「過激な面白さ」を追求した結果なのか、2019年9月、あるイベントのお笑いライブで“差別表現”ともとれるネタを披露して炎上してしまう。ネタ中の「大坂なおみに必要なものは?」「漂白剤。あの人日焼けしすぎやろ!」というやり取りが報道され批判が殺到。所属事務所が「著しく配慮を欠く発言を行った」と謝罪し、当事者であるAマッソの2人も直筆で反省コメントを発表する事態となった。

ワタナベエンターテインメントの公式HP上に掲載された謝罪文
ワタナベエンターテインメントの公式HP上に掲載された謝罪文

受け取り方も変わったし、周りの環境も変わった

2019年はすべての賞レースを欠場。独自路線を突き進むも、大きな結果にはつながらない1年となった。しかし今年は出場しただけでなく、「THE W」で決勝進出を果たしている。新たな追い風が吹いた裏には、周囲の環境と彼女たち自身の変化が関係しているようだ。加納は、こんなことを語っている。

「今までは、わりと悪意込みのダメ出しというか『そんなんやってても売れへんし』みたいな、敵のくせにアドバイスしてくるみたいなイメージやったんです。でも、最近は愛のある人からの『ほんとに、ほんとにもっとこうした方がいい』っていう、『説教』から『アドバイス』に変わったかもしれないですね。同じことをずっと言ってくれてるけど、私らの中でとらえ方が『やかましいこと言ってきてる』から『ほんまにうちらのことを思って言ってくれてる』って変わった。受け取り方も変わったし、周りの環境も変わった」(2020年11月28日に掲載された「文春オンライン」のインタビューより)

昨年の汚名を返上するように、Aマッソは12月14日に行われた「THE W」の決勝戦に姿を現す。映像を使用した斬新な漫才は、審査員のアンガールズ・田中卓志からも「お笑いの時代1個進んだぐらいのネタだった」と称賛された。残念ながら最終決戦には進出できなかったが、初めてネタを見た視聴者には相当なインパクトを残したことだろう。

ちなみに、この映像漫才は、YouTube番組でタッグを組む放送作家・白武ときお氏、映像作家・柿沼キヨシ氏が7年前に考えたアイデアらしい。優秀なスタッフとのチームワークは、パフォーマンスの魅力にも結実している。

人間的な魅力増したAマッソに期待

加納は読書家であり、ここ最近では著書「イルカと泳ぐわい」(筑摩書房)が発売されるなど執筆業でも才能を発揮している。一方で、芸人としてのスタンスもこだわりが強いタイプだ。そのとがった部分が魅力でもあり、あと一歩のところでブレークできずにいた要因でもあったように思う。

しかし、ここ最近で人間的な魅力が増してきている。「YouTubeラジオ局PILOT」のラジオ番組「レイコーラジオ」では、ゆかりの深いヒコロヒーと女性芸人同士ならではの本音トークを展開し、YouTubeチャンネル「Aマッソ公式チャンネル」では、「THE W」出演時の“テレビサイズの対応を磨く動画”を投稿するなど、柔軟な姿勢も見せ始めた。この延長線上で、ぜひバラエティーでの活躍にも期待したい。

村上は先述した「Aマッソ公式チャンネル」の動画編集も手掛け始め、独自のセンスで視聴者を魅了している。自由奔放なキャラだけに少々意外な展開だが、こちらも今後注目したいところだ。これまでの「やんちゃ」「危険」というイメージの殻をかなぐり捨て、新たなAマッソの姿が見られることを切に願う。

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