多数の名曲を生み出してきた感性は、ランニングをどう描き出すのか。川嶋さんが走った「場所」への想いをエッセイで綴ります。今回は「東京の下町」の風情が強く残る東京都墨田区の東白髭公園が舞台です。(寄稿:川嶋あい/撮影:栃久保誠)
『こち亀』通して見た「東京の下町」

ここ、東白髭公園は、中心部には江戸時代の火消しの纏(まとい)を模したオブジェを置くなど、「東京の下町」の風情を強く残す場所。道を挟んだ向かいには古くから地域に親しまれる隅田川神社があります。


私自身は福岡の出身なので、こち亀を通して勝手に解釈しているところはありますが、このあたりはいわゆる江戸っ子といわれるような、生粋の東京人が生きている舞台だと思うのです。
全国津々浦々ライブ公演を重ねてきて、その土地土地で人柄やキャラクターに違いがあることを実感しています。そこに流れている風景や人の温度、時間の流れ方などから、もっと東京人の素顔を感じ取ってみたいです。
南北に延びた形と高低差がユニーク



ランニングは音楽と共に 「今月の3曲」

イントロのエッジが深く効いたエレキギターから、走る鼓動は否応なく高まります。Bメロのフックの効いたリフレインメロディーとサビの郷愁感漂う世界観との落差が素晴らしいです。走るギアを上げるにも充分な1曲。
周りの景色を全身で感じながら、次に選んだのはC&Kさんの『終わりなき輪舞曲』。
シンプルなアレンジの中に際立つストリングスの音色の鋭さと壮大さ。普遍的なメッセージ性のあるサビの歌詞に聴き入ってしまい、ボーカルの2人の緩急ある歌声により、体にパワーがみなぎってきます。
速度をだいぶ落として、最後に選んだのはケアリィレイシェル『Hawaii』。
打って変わって、海の潮風が吹き抜けてくるような清々しさに満たされます。徐々に高まってゆく楽曲の高揚感が、歌声と相まって美しい。疲れも邪念も何もかも洗い流してくれる優しさに包まれながら走りを終えることができます。
「全力疾走」タイプだからこそ考える生き方

ちゃんと深呼吸をして、息を吸うことよりも吐くことを意識する、ゆるやかな感覚。それを自然と持てる、こち亀のような日常の過ごし方はとても理想的です。あらためて、生活にそれを取り入れていこうと思うことができました。