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大阪名物ミックスジュース、50年かけて進化を続ける「レシピの中身」

缶詰めのミカンにも高齢化の波

阪神梅田駅構内にあるジューススタンド「梅田ミックスジュース」ミックスジュース=橋本佳奈撮影
阪神梅田駅構内にあるジューススタンド「梅田ミックスジュース」ミックスジュース=橋本佳奈撮影

目次

大阪名物として、たこ焼きに匹敵する存在なのがミックスジュースです。牛乳も入っていて、甘くて懐かしい味。梅田駅構内にある老舗は、新型コロナウイルスの中でも常連客でにぎわっていました。味を守るため、時代によって扱うフルーツも改良しているという大阪のソウルフードの歴史をたどりました。

コロナ禍でも絶えない客足

阪神梅田駅東口の改札近くの旧店舗のところには、移転の案内ポスターがあった
阪神梅田駅東口の改札近くの旧店舗のところには、移転の案内ポスターがあった

阪神梅田駅東口改札のすぐ目の前に貼り出されていたのは、昨年の構内の工事に伴う「移転」のお知らせ。「すぐそこ 徒歩10秒!」の案内通り、数十メートル移動したところにお店が現れました。

コロナ禍で平日のお昼前という時間ながらも、客足が途絶えません。赤ちゃん連れのお母さんから、ビジネスマン、高齢の男性まで老若男女が次々と購入していきます。

ほかのメニューもあるのですが、みなさんが口々に注文していくのは「ミックスジュース」です。170円とお手頃な値段。日曜日の午後は大行列になるといいます。

お店で働いて40年の元店長・谷信介さんは「多いときは3分に1つのミキサーの分が売れるね。やっぱりうれしいのはお客さんが美味しいと言ってくれてまた来てくれることかな」と話します。

ジュースを注ぐ前店長の谷さん
ジュースを注ぐ前店長の谷さん
1976年ごろの店舗の様子。右が前店長の谷さん=サカイ提供
1976年ごろの店舗の様子。右が前店長の谷さん=サカイ提供

一気に飲める、さわやかさ

並々と注いがれたミックスジュース
並々と注いがれたミックスジュース
取材に訪れた際、ミックスジュースを駅構内の店頭で作る音を録音しました。缶詰のフルーツや細かい氷を入れ、ミキサーでかくはんしている様子です
【店頭でミックスジュースを作る音】

 

早速、購入してみました。コップからこぼれてしまうほど、なみなみと注いでくれます。表面がすこし泡だっています。

一口飲んでみると、意外にさっぱり。ミカンのさわやかな甘さを感じます。のどが渇いたときや、朝に飲みたいなという味。砕いた氷が一緒にミキサーにかけられているので、冷たさが均等で一気に飲みほすことができました。量が多すぎないのが良いのかもしれません。周りの人たちも購入するとすぐにその場でぐいっと飲んでいました。

3代目社長の井戸辺弘樹社長によると、通勤途中にさっと飲めることを考え、今のサイズになったそうです。

口当たりを重視するためストローはつけていません。さわやかさを追求するため缶詰の温州ミカンの割合を多くして工夫されているそうです。

50年を超える歴史

1969年に創業した当時の店舗の様子=サカイ提供
1969年に創業した当時の店舗の様子=サカイ提供

「梅田ミックスジュース」は、昨年2019年に創業50年を迎えました。阪神駅構内にそば屋を展開していた飲食業「サカイ」の2代目社長が始めました。

阪神梅田駅でミックスジュースを販売するきっかけは、噴水型ジュース自動販売機を置いてい際によく売れたことからでした。そして、ミキサーが一般家庭にも販売されるとジューススタンドのお店が周囲に立ち出し、もともと牛乳の配達も手がけていた会社だったため「ミックスジュースに牛乳は使うしちょうど良い」と決断したそうです。

やがて「梅田ミックスジュース」は、通勤途中のサラリーマンや、プロ野球のタイガース戦や高校野球を見に行くお客さんの憩いの場となりました。

3代目社長の井戸辺弘樹さんが初めて飲んだのは7歳の頃。開発した2代目・父親に連れられ、タイガース戦を見に行くときに立ち寄ったそう。「うちで作ってるジュース飲んでみな、と言われて、なんてさっぱりしていて美味しいんだ!と衝撃を受けたのを覚えています」。

旧店舗=サカイ提供
旧店舗=サカイ提供

遠方のファンも

地元の人たちだけでなく、遠方からのファンも多いといいます。

「もう一杯ちょうだい」とおかわりしていた男性に話を聞きました。東京都足立区在住の68歳の男性は、退職後関西に旅行するのが趣味。長いときは1カ月に2週間も滞在するほど。今回は1週間滞在しているといいます。「去年テレビで知ったんですけど、それからファンで。梅田での用事は、ここでミックスジュースを飲むだけなんですよ」と教えてくれました。

さらに香川県高松市在住の派遣社員の男性(43)は、月2回高松から仕事のためフェリーで大阪に来る際必ず立ち寄ると言います。20代前半の学生時代に大阪に住んでいたときから20年以上のファン。「僕にとっては生活の一部みたいなもんです」

井戸辺社長は「みんなが、これを飲んでほっとした、と思ってくれる、オアシスみたいなお店にしたいなと思ってるんですよ」と熱く語ってくれました。

ミカンの味前面に

缶詰の温州ミカン、黄桃の順番に多く入っている
缶詰の温州ミカン、黄桃の順番に多く入っている
店頭でもモニターでレシピを紹介している
店頭でもモニターでレシピを紹介している

ミックスジュースのレシピは、店舗でも大々的にモニターで写して紹介していました。
ポイントは缶詰のミカンです。

メインの材料の温州ミカンは缶詰を使っていますが、国産のミカンが、農家の高齢化などで手に入れるのが難しくなっているといいます。さらに、缶詰のミカンの味も時代の流れで微妙に変化しているといいます。

社長は「舌の敏感なお客さんは、すぐに変化に気づいてしまう。昔の味と変わってしまった、と指摘をもらったり。すぐに改良しています。お客さんと生産者さん、みんなに助けられているから、この味を守ることができているのです」。

<材料>
・缶詰めのみかんと黄桃...合わせて100g(シロップも含む)
・バナナ...10g
・ミルク(牛乳でも低脂肪乳等の加工乳・乳飲料でも可)...50cc
・上白糖...8g
・氷...50g

<つくり方>
①缶詰のみかんと黄桃を合わせて100gをミキサーに入れます
※みかんと黄桃は6:4から8:2位の割合です ※缶詰は事前に冷蔵庫でよく冷やしてください
②バナナ・ミルク・上白糖・氷をミキサーに入れます
③ミキサーを回し、見た目も均一になり、ミキサーが食材を砕く音が消えたら出来上がりです
※「梅田ミックスジュース」の特設ページから引用(一部編集)

ちょっと疲れたときに「飲みたい」そんな生活の一場面となる味。お味噌汁のような安心感のある味なのかもしれません。

その伝統の味は、常にお客さんの声を取り入れながら、守られていました。

阪急に新店舗

サカイは、昨年50周年を迎えたことをきっかけに、阪急梅田駅構内に、昨年新店舗「果汁屋」をオープンしました。

こちらは「高級」志向で、おなじみのミックスジュースのほかに、季節限定のフルーツを使用したミックスジュースがあります。11月からは、さつまいもミックスジュースを販売予定です。

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