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「廃棄せず〝目〟をつけたら?」「採用!」お菓子屋さんの見事な発想
「着眼点が素晴らしい!」
「失敗した」と思っても、視点を変えれば新たな価値が生まれるーー。それを証明してみせた「お饅頭」が、ツイッターで話題です。山形県の和菓子屋さんに話を聞きました。
「当店のかぼちゃまんじゅうは中の甘さ控えめかぼちゃ餡のカスタードのような柔らかさが売りなのですが、その柔らかさが災いして時々皮が破裂してしまうのです…」との文章を添えて投稿した1枚の写真。
見ると、薄黄色の饅頭の皮が、横や縦にやぶれてしまっています。でも、それぞれに二つずつ、黒い点々が。
続く文章では、「失敗作」の運命を決めたやり取りを再現しています。
「私『廃棄せず目をつけて売ってみては?』
専務『採用!!できました!!』
私『かわい〜(なんか一部ミーティみたいなのいる…)』」
意外な発想でリメイクされた、饅頭たち。無事に店頭で売られたことも報告されました。
このツイートには、「着眼点が素晴らしい!」「目のつけどころを変えた好例」と、目に引っかけた賞賛のほか、「製品の不均一を『損失』ではなく『価値』に変えるアイデア」「受け入れる上司も素敵」と共感するリプライが寄せられました。
当店のかぼちゃまんじゅうは中の甘さ控えめかぼちゃ餡のカスタードのような柔らかさが売りなのですが、その柔らかさが災いして時々皮が破裂してしまうのです…
— 菓子処六味庵 (@mutsumian63) October 26, 2020
私「廃棄せず目をつけて売ってみては?」
専務「採用!!できました!!」
私「かわい〜(なんか一部ミーティみたいなのいる…)」 pic.twitter.com/CX2eAgsoYC
話題になった「六味庵」に問い合わせると、専務の菅野幹大(みきお)さん(33歳)が対応してくれました。
商品が生まれたのは、イレギュラーなことだったといいます。
「六味庵」は家族経営の菓子店です。ここ数年、かぼちゃが旬の時期に作っている「かぼちゃまんじゅう」を作っていたときにハプニングは起こりました。
「いつも餡の塩梅を見るのは父でしたが、この日は私が仕上げを任されたんです」
ほかの菓子店で修行をして、実家に戻った幹大さん。父であり社長の、3代目・菅野秀昭さんが、徐々に仕事を任せているところでした。
柔らかい蒸し饅頭。本来ならば10個やれば10個きれいに仕上がるはずですが、この時は蒸し上がった饅頭約40個の皮がやぶれてしまっていました。「餡がやわらかすぎたんだ」
社長の秀昭さんは「こういうこともあるだろう」と目をつぶってくれましたが、大量の「失敗作」を前に、「これどうしたらいいもんか」と途方にくれた幹大さん。
家族で食べるか、おすそ分けするか。そう考えていた時に、広報や通販を担当する幹大さんの妻が、「目をつけてみたら?」と提案してくれたそうです。
実は、東北芸術工科大学卒業という経歴の幹大さんの妻。頭に浮かんだのは、口がぱかっとあいた、ハロウィンのかぼちゃのランタンでした。
これまでも「訳アリ品」を売り出すことはありましたが、失敗したものをさらに見せ方を変えて売るという経験はありませんでした。
蒸し上がったばかりの皮の表面に、手近にあった黒ゴマを乗せたところ、個性的なかわいい表情が浮かんできました。
ツイッターでの反響を知ると、秀昭さんも、「こういう見せ方があるのか」「すごいもんだなぁ」と感心しました。
リメイクされたまんじゅうは、本来のまんじゅうと同じ1個120円で売り出され、ほぼすべて売れたそうです。
今日のかぼちゃまんじゅう達はみんなお客様のもとへ行くことが出来ました😭ありがとうございました! pic.twitter.com/KQRf4QaiJl
— 菓子処六味庵 (@mutsumian63) October 26, 2020
ツイッターで店を知り、宮城県の人も立ち寄ってくれました。
「もともとが失敗作なんで、こうやって話すこともお恥ずかしいんですが」と恐縮する幹大さん。
一方で、「割と、私自身は『失敗しちゃった』と匙を投げやすいタイプでした。でも今回、少し手を加えたことで、フードロスのことも含めてこんなに興味を持ってもらうことができました。付加価値のつけ方、見せ方について、私自身、学び、財産になりました」と話します。
アイデアをくれた妻には「私にはない引き出しがいっぱいあるので、今後も末永くよろしくお願いしますと伝えたいです」。
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