連載
#53 ○○の世論
支持率が減った菅内閣「他よりよさそう…」じわり存在感
世論調査に潜む…安倍内閣との「共通点」
安倍晋三内閣の「継承」を掲げる菅義偉内閣が9月16日に発足して1カ月が過ぎました。内閣発足から1カ月で、支持率が65%から、53%に減少した菅内閣。朝日新聞が10月に行った全国電話世論調査を分析すると、菅内閣と安倍内閣の「共通点」が見えてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
朝日新聞が菅内閣発足直後に行った9月の全国電話世論調査の支持率と、10月に実施した調査の支持率を比べると、次のような結果となりました。
内閣発足から1カ月で菅内閣の支持率は65%から、53%に下がりました。内閣発足直後の支持率は、新首相や新政権への期待などもあって「ご祝儀相場」と呼ばれ、高い数字になりがちです。このため、支持率が下がることは珍しいことではありません。53%は歴代内閣と比べても依然として高い支持率です。
ただ、菅内閣の支持層を男女別と年代別でみると、10月の調査で「ある兆し」がみえてきました。
「支持する」を男女別にみると、9月調査では女性68%が男性62%を上回っていたのが、10月調査では男性55%が女性51%を上回ったことがわかります。年代別では、40代以上の支持率が大きく下がったのに比べると、30代以下の支持率はそれほど下がりませんでした。特に、60代と70歳以上の支持率は過半数を割ったのに対し、18~29歳と30代の支持率は6割前後にのぼっています。
男性より女性の支持率が低く、若年層の支持率が特に高い、という菅内閣支持層の特徴は、安倍内閣支持層とよく似ています。7年8カ月続いた安倍内閣では、18~29歳と30代は支持が一時的に離れても戻る「岩盤支持層」でした。
さらに、菅内閣の「支持する」理由を分析すると、安倍内閣と似た特徴をみせています。
「他よりよさそう」がトップである点は9月と10月の調査で変わりませんが、「首相が菅さん」が9月調査の23%から10月調査の15%に下がりました。4つの選択肢のうちで唯一、9月調査から低下しました。
安倍内閣でも「他よりよさそう」がつねに最多で、その割合は5割を超えることが多く、今年の平均は56%でした。「首相が安倍さん」は今年の平均で10%でした。
内閣発足から1カ月経って支持層の「菅推し」が弱まり、安倍内閣の時と同じように「他よりよさそう」という消極的な理由が支持層の大勢を占めています。「安倍政権の継承」を打ち出す菅内閣は、安倍内閣の支持層も「継承」するのでしょうか。今後の調査でも引きつづき分析が必要です。
菅内閣の支持率が下がった要因の一つとして、「日本学術会議」問題がありそうです。「日本学術会議」問題とは、日本学術会議が新たな会員候補として学者105人を推薦したのに対し、菅首相が105人のうち、6人を任命しなかった、というものです。
会員の任命について、日本学術会議法は「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(第7条2項)、「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」(第17条)と定めています。中曽根康弘首相(当時)は1983年の国会答弁で「政府が行うのは形式的任命にすぎない。学問の自由、独立はあくまで保障される」と述べ、学術会議の推薦を尊重する考えを示していました。
これまでの歴代内閣の対応や政府答弁と異なるため、菅首相の任命拒否が日本学術会議法違反に当たるのではないか、菅首相は6人の任命拒否について理由を説明すべきではないか、といった点が焦点となっています。
この問題をめぐって、菅首相はこれまで「法に基づいて適切に対応した結果だ」などと強調するばかりで、任命拒否の理由などを具体的に説明していません。
10月の調査では、この問題について、次のように聞きました。
菅首相の任命拒否について、「妥当だ」31%、「妥当ではない」36%との結果でした。ただ、内閣支持層で「妥当だ」が47%と過半数にとどかず、内閣不支持層の「妥当ではない」が78%と多数でした。「その他・答えない」が全体の33%にのぼっており、この問題の分かりにくさを現しているようです。
一方、菅首相の説明は「十分ではない」と答えた人は全体で63%に達し、内閣支持層では57%でした。菅首相の任命拒否を「妥当ではない」と答えた人のうち、「十分ではない」と答えた人は94%を占めました。菅首相には、支持層をも納得させられる説明が求められています。
「日本学術会議」問題とともに、菅内閣の支持率を左右しそうなのが新型コロナウイルスへの対応です。安倍内閣では、「岩盤支持層」だった30代が安倍内閣の新型コロナ対応に不満を募らせた結果、支持率の低下につながり、政権運営の「致命傷」となりました。
10月の調査で、新型コロナへの政府の対応について聞いたところ、「評価する」49%、「評価しない」37%でした。安倍内閣の時に同じ質問を聞いた今年2月以降、「評価する」は2月34%→3月41%→4月33%→5月30%→6月38%→7月32%と推移してきたのと比べると、菅内閣発足後に初めて聞いた10月の49%はもっとも高い結果です。年代別では、30代がもっとも高く、59%でした。「新型コロナ対策と経済の両立」をめざす菅首相の取り組みを、ひとまず評価しているようです。
ただ、同じ調査で、新型コロナの感染拡大で生活が苦しくなる不安を感じるかを尋ねると、「感じる」は52%でした。同じ質問をした今年7月調査の56%から下がったものの、過半数でした。30代は48%が「感じる」と答えています。新型コロナ対策で菅首相が指導力を発揮しているかという質問には、「発揮している」26%が「発揮していない」45%を下回りました。内閣が発足して間もないとはいえ、菅首相に物足りなさを感じているのかも知れません。
臨時国会は今月26日に召集される予定です。菅内閣が支持率を維持できるのかどうか。初めての国会論戦の場で、菅首相の力量が問われることになりそうです。
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