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都庁ピアノで超絶演奏 挫折からの反響、人生が変わったハラミちゃん

人気YouTuberとして活躍するポップスピアニストの「ハラミちゃん」=提供
人気YouTuberとして活躍するポップスピアニストの「ハラミちゃん」=提供

目次

1年3カ月前、動画投稿サイト「YouTube」にアップした東京都庁でのピアノ演奏が、人生を変えた女性がいます。ポップスピアニスト「ハラミちゃん」。その時に演奏した「前前前世」の再生回数は200万回、当時千人だった彼女のチャンネルの登録者は現在60万人を突破、メジャーレーベルからソロピアノアルバムも発売しました。26日にはフジテレビ系の『芸能界特技王決定戦 TEPPEN』にも出演します。動画サイトの人気ジャンルであるストリートピアノ、その中で一躍人気を集める彼女の演奏、そして転機となった動画をアップしたきっかけなどについて伺いました。

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即興の演奏に称賛のコメント

サザンオールスターズ、B'z、中島みゆきといった人気アーティストの聞き覚えのあるポップスや、ディズニーや鬼滅の刃など人気のアニメソングを楽譜なしに、ときには鍵盤も見ずに弾きこなす。ハラミちゃんが知らない曲も、一度スマホなどから聴くだけで聴衆のリクエストに応じて即興で演奏する。

YouTubeの彼女のチャンネルにアップされたそんな動画に、世界中から驚きや称賛のコメントが寄せられています。

4歳からピアノ 1回聴くだけで耳コピで演奏

ハラミちゃんがピアノを習い始めたのは4歳。レッスンは週1回8時間。音大のピアノ科に入るまでずっと習っていて、小学生時代からクラシックのコンクールにも出場していました。

絶対音感を持ち、「楽器の音、歌声、さらに、話し声も音階とリズムが分かります。楽譜が浮かぶわけではなく、無意識に歌えるのと同じような感覚で、メロディーを聴くと指が勝手に動く感じです」とハラミちゃんは話します。

手元を見ずに演奏するのは、オンラインで演奏を生配信する際、タブレット端末に表示される視聴者のコメントやリクエストを見ながら演奏するうち、自然にできるようになったそうです。

親しみのある笑顔も人気。ハラミちゃんという名前は、肉の「ハラミ」が好きなことから名付けたという=東京都渋谷区
親しみのある笑顔も人気。ハラミちゃんという名前は、肉の「ハラミ」が好きなことから名付けたという=東京都渋谷区

人気者が原体験、音大で壁に

人前でポップスを弾く原体験は小学生の時。音楽の授業の前にたまたまスタジオジブリのアニメ作品の曲を弾いたら、同級生が集まってきて、すごいとほめてくれたそうです。

「これで友達が増えたらいいな」。そんな思いからハラミちゃんはその後も、音楽の授業の前後にピアノでポップスを演奏するように。同級生に囲まれ、当時流行したポップスを次々と頼まれる。「リクエストに応えたい一心でした。楽譜は値段が高くて、そろえられないので、聴いた曲を記憶して家で練習するうちに、次第に耳コピで弾けるようになりました」。レッスンの先生にクラシックの基礎が崩れる、と怒られないよう、家でこっそり練習したそうです。

ピアニストを目指して音大に入ったものの壁にぶつかります。「上には上がいることを思い知らされました」。ピアノで生きる道を断念し、卒業後、一般企業に就職しました。

ですが、「仕事量の多さ、加減を知らずとことんまで取り組む自身の性格もあって、心身ともに疲れてしまった」。やがて、他人に会うことも、話すこともできず、半年ほど自宅から出られなくなったそうです。会社も辞めました。

気分転換で弾いた都庁のピアノ

そんな時期に、ずっと連絡をくれたのが当時同じ会社の先輩で、現在もハラミちゃんの活動を支えるスタッフでした。彼女の演奏は会社の忘年会で聴いたことがあるくらいでしたが、「自信のあることをやってみよう」と気分転換を兼ねて、だれでも弾けるストリートピアノが設置されている都庁に連れて行ったそうです。

そこで1曲目に演奏したのがアニメ映画「君の名は。」の挿入歌でもあるRADWIMPSの「前前前世」でした。

偶然居合わせた数人の女性が演奏中に拍手してくれ、終わると「いいわね。元気が出るわ」と声をかけてくれました。「久しぶりに他人との会話だったし、ピアノが好きだと改めて思えました」

それだけではありません。スタッフが撮影、編集した動画を彼女のチャンネルにアップすると、コメントの通知が鳴りやみません。200件、300件――。「ピアノに自信を失って辞めていたので、たまたま動画を見つけてくれて、次も聴きたいと求めてくれることが本当にうれしかった。聴いてくれた人のおかげで復活できた気がします」。ハラミちゃんはそう話します。

各地のピアノを演奏し反響

都庁、銀座、渋谷、川崎市、さらに浜松市、京都市など各地にあるストリートピアノで演奏した様子をアップするたび大反響。依頼を受けて岡山や香川県の商店街や広島空港、山梨県のホテルなどで演奏を披露する機会も生まれました。

チャンネル登録者数も昨年9月12万人、今年2月に30万人、そして今月、60万人を突破しました。YouTubeの統計情報サイト「yutura」によると、昨年デビューしたユーチューバーの再生回数ランキングで18位でした。

また、今年7月にはエイベックストラックスからファーストアルバム「ハラミ定食~Streetpiano Collection~」を発売、ビルボードジャパンの週間アルバムセールスチャートでは1位に輝きました。

伝えたい「曲の良さ」

ストリートピアノでの演奏をアップするユーチューバーは多くいますが魅力はどこにあるのでしょうか。ハラミちゃんの演奏には原曲やアーティストのファンからも「本人が歌っているよう」といった反応が多く寄せられています。

たとえばB'zの「LOVE PHANTOM」(再生回数230万回、9月24日時点)の演奏には「ライブで聞いた時全身に鳥肌立ったんだけど、その時と同じ感覚で鳥肌モン」。XJAPANの「紅」(再生回数471万回)にも「爆発力あり、体全体に響く演奏」など1300件以上のコメントが寄せられています。Mr.Childrenの「HANABI」(再生回数122万回)には「まるで歌ってるみたい。凄いです!」といった感想が並んでいます。

ピアノで演奏して「映える」曲を選ぶことが多いそうですが、技術や演出だけでなく、意識していることを尋ねると、ハラミちゃんはこう答えました。

「曲の良さを伝えることを一番大切にしています。曲というコンテンツが好きで、なぜこの曲が生まれたのか、このアーティストはなぜこの時期にこの曲を作ったのだろうか、といった考察が好きなんです。自分が主役でなく、メロディーラインを崩しすぎず、その良さを伝えられるようなアレンジを心がけています」

「ギター、ドラム、ボーカルの歌声をどうやってピアノに落とし込めるか。歌い方も個性があるので、物まねのような感じで再現したくて、演奏で意識しています」とも語ります。

「目標を作らない」

ユーチューバーは若者らに人気の半面、面白いコンテンツを発信し続けることや再生回数を稼ぐことが重圧となり、ストレスを抱えたり、辞めたりする人も少なくありません。

ハラミちゃんは、「目標を作らない、自分が楽しくやれるのを大切にしています。楽しくなくなったら辞めると思います」と話します。大きな影響を与えたのは会社を辞めて家にこもっていた時期にかけてくれたスタッフの「1回でも笑う数が多い人が勝ち」という言葉でした。

ハラミちゃん自身は、コンクールや会社の業績など目標を設定されると、達成に向けて逆算してレッスンや仕事にのめり込むタイプで、結果がすべてだと思い込みがちだったそうです。「笑うとか楽しくやるという感覚は目から鱗が落ちるというか。疲れ切った自分にすごく響きました」

だからこそ、街中にあって、音楽を身近に感じてもらうことができるストリートピアノにこだわり、ピアノの楽しさを多くの人に知ってもらいたい。楽しいという思いが周りの人たちに伝わり、広がっていく活動にしたい。そんな思いで活動を続けているそうです。

今年に入り、ポップスピアニストという肩書を名乗るようになりました。「響きが少しかわいい、キャッチーな肩書を背負うことで、お堅いイメージがあるピアノを身近に感じてもらえればと思っています」

最後に1年後の自分に聞きたい一言を尋ねると、こんな答えが返ってきました。

ピアノの魅力を知ってくれている人は増えていますか?

「ピアノの楽しさを多くの人に知ってもらいたい」と語ったハラミちゃん
「ピアノの楽しさを多くの人に知ってもらいたい」と語ったハラミちゃん

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