連載
#50 夜廻り猫
推薦のため、いじめ見て見ぬふり…「私は嫌だ」夜廻り猫が描く決意
付属高校への合格が決まり、これで大学へも進める!と喜んでいたのに、進んだ高校ではいじめがあって……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「決意」を描きました。
付属高校に受かった女の子。このままいけば大学にも進めそうだと母と喜びます。
しかし、進んだ高校ではいじめがありました。水をかけられた子がいても、先生たちまで見て見ぬふり。担任に話しても「もめ事起こすといいことないよ 大学推薦もらいたいでしょ?」と言われるだけでした。
女の子が「校長に直訴しようと思う」と思いつめるのに対し、夜周り中の猫の遠藤平蔵は「大事なことだ 親御さんには言いなされ」と励まします。
「推薦ほしいならいじめを黙認しろってことだよね 私はいやだ…ママどう思う?」
意を決して母親に伝えると、母は「人を見殺しにしたら あんたも元気に生きてはいけないでしょ」と伝えます。
校長に訴えても結局いじめは続き、女の子は担任から攻撃されるようになって転校します。
「でも 今はそこそこ元気だよ あの子も そうだといい」。大人になった彼女はそう言ってほほえみます。遠藤と重郎も力強くうなずくのでした。
作者の深谷さんは「今、元気がない人は少なくないと思います。コロナの影響は大きく、みんなが真綿で首をしめられるような苦しさに耐えているのでしょう」と話します。
特に心配しているのは若い人のことだといいます。
「社会に元気や希望が足りなさ過ぎるのではないでしょうか。若い人の生命力を削がずに、元気を出せるように、大人は理解や考えを塗り替えていかねばならないと思います」
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本7巻(講談社)が2020年12月に発売予定。
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