4ページの感動作「ずっと友達」
漫画は主人公の男性の回想シーンから始まります。「宮田」とは高校3年間、同じクラスで同じ部活でした。「2人でサボれば恐くないっしょ」という宮田。「よく2人でサボっては…バレて走らされたりしたっけ」と、楽しい時もつらい時も、一緒に過ごす2人が描かれています。大学が東京と大阪で離れてしまっても、連絡を取り合っていました。

「連絡も減っていき やがて ゼロになった」
昔仲が良かった友だちも、年を取るにつれ疎遠になっていくのはよくあること。でも、その後の2人の運命は、あまりにも対照的でした。
「宮田」はいきいきと仕事をこなし、結婚して子どもにも恵まれ、幸せそうに過ごしている一方、男性の行く先には徐々に陰りが見え始めます。仕事に忙殺され、周囲からの叱責の中で、うつむく日々。絶望の果てに、ロープに手をかけ自らの人生を終えようとします。

「あの頃が一番楽しかったな…」「宮田 会いたい…」
一縷の望みをかけて、男性は宮田に電話をかけます。しかし、家族と過ごしている宮田は電話に気づきません。
そして、暗転――。

「どうか気づいて」読者がドキドキした次の瞬間…
次のコマに現れたのは、汗だくの宮田でした。男性の電話は、宮田に届いていたのです。服装から見るに、宮田は家からそのまま飛んできたことがわかります。

「会社は…」「いやサボったって!」
宮田は男性の肩を抱き「お前も明日会社サボれよな!」と声をかけます。それは、高校時代と変わらない言葉でした。
「2人でサボれば恐くないっしょ!」
『キミはともだち』平井堅さんの曲から着想
「ずっと友達」 pic.twitter.com/8oIwtYSTbQ
— 江戸川治@短編集発売中 (@edoosam) August 23, 2020
「平井堅さんの『キミはともだち』という曲から着想を得て、この2人を場面2分割にして全く真逆な成長をさせたらどうかなというところから想像を膨らませて描きました」
つらいときは友だちに頼ること、そして困っている友だちを見たらまっすぐに寄り添うこと、曲でも歌われている映し鏡のような友人関係や、そっと思い合う姿が、作品を通して伝わってきます。
江戸川さんは、今回の作品に多くの反響が集まっていることについて「たくさん感想頂きうれしいです」とコメントしています。
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