連載
#37 ○○の世論
「安倍4選」たった4カ月で賛否逆転 自民支持層の急な「心変わり」
世論調査が示す…石破氏とは言い切れない「ポスト安倍」の行方
安倍晋三首相の自民党総裁としての任期は、2021年9月までです。新型コロナウイルスへの対応が焦点になった通常国会が閉会し、政界の関心は安倍首相の後継争い「ポスト安倍」レースに移りつつあります。朝日新聞の全国電話世論調査を分析すると、自民支持層の心変わりが見えてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
自民党総裁の任期は党則で連続3期までと決まっています。ただ自民内には、この党則を変えて、安倍首相に4期目も続けることを支持する声もあります。朝日新聞の世論調査では、この「安倍4選」について、次のように定期的に聞いています。
「安倍4選」について、全体では反対がつねに賛成を大きく上回っています。これに対し、自民支持層は2019年12月と2020年2月の調査で賛否が割れていたのが、4カ月後の2020年6月の調査では反対54%が賛成36%を上回りました。
自民支持層で「安倍首相離れ」がじわりと進んだ背景には、今年2月以降に深刻化した新型コロナへの政府対応がありそうです。
朝日新聞の調査では今年2月以降、以下のように聞いています。
新型コロナへの政府対応をめぐっては、全体と異なり、自民支持層では「評価する」が「評価しない」をつねに上回っていました。とはいえ、横浜港に停泊していて感染が拡大した大型クルーズ船への対応が批判された2月と、コロナ禍にもかかわらず検察庁法改正案の成立を急いだ政権に対してツイッターなどで批判が広がった5月の調査では、自民支持層でも「評価しない」が4割近くに高まりました。
6月調査では、自民支持層の「評価する」は6割近くに盛り返しました。ただ自民支持層の内閣支持率は2月調査の78%から見ると、6月調査では69%に下がっています。コロナ禍での政府対応に対する自民支持層の一定の不満が、「安倍首相離れ」の背景の一つにあるのかもしれません。
安倍首相は「4選」について、6月18日の記者会見で「全く考えておりません」と述べています。では、安倍首相の次の首相である「ポスト安倍」について、自民支持層はどう考えているのでしょうか。
同じ選択肢で行った2019年9月から今年6月の計4回の調査では、自民支持層の「ポスト安倍」トップは19年12月以降、全体と同じように、つねに石破茂氏でした。石破氏の支持率は19年9月の14%から今年6月の29%に上がりました。ほかの候補の支持率が軒並み伸び悩んでいるのとは対照的に、石破氏の人気ぶりがうかがえます。
とはいえ、「ポスト安倍」レースは、「石破1強」とも言いきれません。自民支持層の「この中にはいない」がつねに2割台で推移しているためです。「安倍首相離れ」が進みながらも、安倍首相の「次」が絞り切れていないという自民支持層の心の内を現しているようにも見えます。
「ポスト安倍」には、どんな人がふさわしいか―。同じ記者会見で問われた安倍首相は、2019年12月のBSテレ東の番組収録で岸田、茂木、菅、加藤4氏の名前を列挙した時とは異なり、こう答えるだけでした。
「(自民党総裁の)任期が1年3カ月残っており、全力を尽くす。後継者は育てるものではなくて育ってくるものだ。自民党は人材の宝庫。地味に成果を出していく人もいれば、うまく発信をされている方もいるのだろう。その立場立場で頑張って頂きたい」
後継をめぐる安倍首相の心の内はどうなのでしょうか。今後も「ポスト安倍」レースの行方に目が離せません。
1/6枚