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#37 ○○の世論

「安倍4選」たった4カ月で賛否逆転 自民支持層の急な「心変わり」

世論調査が示す…石破氏とは言い切れない「ポスト安倍」の行方

自民党役員会に臨む安倍晋三首相=2020年6月23日、東京・永田町の党本部、岩下毅撮影
自民党役員会に臨む安倍晋三首相=2020年6月23日、東京・永田町の党本部、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

目次

安倍晋三首相の自民党総裁としての任期は、2021年9月までです。新型コロナウイルスへの対応が焦点になった通常国会が閉会し、政界の関心は安倍首相の後継争い「ポスト安倍」レースに移りつつあります。朝日新聞の全国電話世論調査を分析すると、自民支持層の心変わりが見えてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)

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自民支持層、「安倍4選」賛否拮抗→反対が過半数に

自民党総裁の任期は党則で連続3期までと決まっています。ただ自民内には、この党則を変えて、安倍首相に4期目も続けることを支持する声もあります。朝日新聞の世論調査では、この「安倍4選」について、次のように定期的に聞いています。

■自民党総裁の任期は、自民党の決まりで、連続3期までになっています。あなたは、この決まりを変えて、安倍首相が4期目も続けることに賛成ですか。反対ですか。
【全体】
2019年12月 賛成(23%)/反対(63%)
2020年2月 賛成(25%)/反対(60%)
2020年6月 賛成(19%)/反対(69%)

【自民支持層】
2019年12月 賛成(43%)/反対(46%)
2020年2月 賛成(46%)/反対(43%)
2020年6月 賛成(36%)/反対(54%)
*その他・答えないは省略
*調査方法=コンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調査員が電話をかけるRDD方式。2019年12月21・22日、2020年2月15・16日、同年6月20・21日に、全国の有権者を対象に調査した。有効回答数と回答率は以下の通り。2019年12月固定1001人49%/携帯979人44%、2020年2月固定1118人51%/携帯1038人45%、同年6月固定1035人52%/携帯1030人47%。

「安倍4選」について、全体では反対がつねに賛成を大きく上回っています。これに対し、自民支持層は2019年12月と2020年2月の調査で賛否が割れていたのが、4カ月後の2020年6月の調査では反対54%が賛成36%を上回りました。

自民支持層で「安倍首相離れ」がじわりと進んだ背景には、今年2月以降に深刻化した新型コロナへの政府対応がありそうです。

新型コロナウイルス感染症への対策として、首相官邸の会見場では座席の間隔が広げられた=2020年3月17日午前9時58分、岩下毅撮影
新型コロナウイルス感染症への対策として、首相官邸の会見場では座席の間隔が広げられた=2020年3月17日午前9時58分、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

コロナ禍の政府対応「評価しない」一時高まる

朝日新聞の調査では今年2月以降、以下のように聞いています。

■あなたは、新型コロナウイルスをめぐる、これまでの政府の対応を評価しますか。評価しませんか。
【全体】
2月 評価する(34%) 評価しない(50%)
3月 評価する(41%) 評価しない(41%)
4月 評価する(33%) 評価しない(53%)
5月 評価する(30%) 評価しない(57%)
6月 評価する(38%) 評価しない(51%)

【自民支持層】
2月 評価する(47%) 評価しない(39%)
3月 評価する(61%) 評価しない(23%)
4月 評価する(56%) 評価しない(34%)
5月 評価する(51%) 評価しない(37%)
6月 評価する(59%) 評価しない(31%)
*その他・答えないは省略
*調査方法=RDD方式。2020年2月と6月以外は、3月14・15日、4月18・19日、5月23・24日に実施した。2020年2月と同年6月以外の有効回答数と回答率は以下の通り。3月固定1170人53%/携帯1190人50%、4月固定1111人56%/携帯1106人52%、5月固定1187人57%/携帯1186人52%。

新型コロナへの政府対応をめぐっては、全体と異なり、自民支持層では「評価する」が「評価しない」をつねに上回っていました。とはいえ、横浜港に停泊していて感染が拡大した大型クルーズ船への対応が批判された2月と、コロナ禍にもかかわらず検察庁法改正案の成立を急いだ政権に対してツイッターなどで批判が広がった5月の調査では、自民支持層でも「評価しない」が4割近くに高まりました。

6月調査では、自民支持層の「評価する」は6割近くに盛り返しました。ただ自民支持層の内閣支持率は2月調査の78%から見ると、6月調査では69%に下がっています。コロナ禍での政府対応に対する自民支持層の一定の不満が、「安倍首相離れ」の背景の一つにあるのかもしれません。

徳島市役所内の「とくしま 思いやりマスクポスト」。政府が配布している布マスクが入っていた=2020年6月、徳島市幸町2丁目、伊藤稔撮影
徳島市役所内の「とくしま 思いやりマスクポスト」。政府が配布している布マスクが入っていた=2020年6月、徳島市幸町2丁目、伊藤稔撮影 出典: 朝日新聞

ポスト安倍レースはなお混迷

安倍首相は「4選」について、6月18日の記者会見で「全く考えておりません」と述べています。では、安倍首相の次の首相である「ポスト安倍」について、自民支持層はどう考えているのでしょうか。

■あなたは、次の自民党総裁として、だれがふさわしいと思いますか。
(2019年9月)→(2019年12月)→(2020年2月)→(2020年6月)
【全体】
石破茂=(18%)→(23%)→(25%)→(31%)
小泉進次郎=(22%)→(20%)→(14%)→(15%)
河野太郎=(8%)→(8%)→(8%)→(9%)
菅義偉=(8%)→(6%)→(5%)→(3%)
岸田文雄=(6%)→(5%)→(6%)→(4%)
茂木敏充=(3%)→(1%)→(1%)→(1%)
加藤勝信=(1%)→(1%)→(1%)→(0%)
この中にはいない=(27%)→(29%)→(32%)→(31%)

【自民支持層】
石破茂=(14%)→(22%)→(22%)→(29%)
小泉進次郎=(21%)→(20%)→(17%)→(17%)
河野太郎=(12%)→(12%)→(10%)→(12%)
菅義偉=(12%)→(9%)→(8%)→(5%)
岸田文雄=(8%)→(8%)→(8%)→(7%)
茂木敏充=(3%)→(3%)→(2%)→(1%)
加藤勝信=(1%)→(1%)→(1%)→(0%)
この中にはいない=(20%)→(20%)→(26%)→(23%)
*その他・答えないは省略。敬称略
*調査方法=RDD方式。2019年9月の調査は14・15日に実施し、有効回答数と回答率は固定1010人50%/携帯914人42%。

同じ選択肢で行った2019年9月から今年6月の計4回の調査では、自民支持層の「ポスト安倍」トップは19年12月以降、全体と同じように、つねに石破茂氏でした。石破氏の支持率は19年9月の14%から今年6月の29%に上がりました。ほかの候補の支持率が軒並み伸び悩んでいるのとは対照的に、石破氏の人気ぶりがうかがえます。

とはいえ、「ポスト安倍」レースは、「石破1強」とも言いきれません。自民支持層の「この中にはいない」がつねに2割台で推移しているためです。「安倍首相離れ」が進みながらも、安倍首相の「次」が絞り切れていないという自民支持層の心の内を現しているようにも見えます。

「ポスト安倍」には、どんな人がふさわしいか―。同じ記者会見で問われた安倍首相は、2019年12月のBSテレ東の番組収録で岸田、茂木、菅、加藤4氏の名前を列挙した時とは異なり、こう答えるだけでした。

「(自民党総裁の)任期が1年3カ月残っており、全力を尽くす。後継者は育てるものではなくて育ってくるものだ。自民党は人材の宝庫。地味に成果を出していく人もいれば、うまく発信をされている方もいるのだろう。その立場立場で頑張って頂きたい」

後継をめぐる安倍首相の心の内はどうなのでしょうか。今後も「ポスト安倍」レースの行方に目が離せません。

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