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フィギュア選手「あるある」リンクの穴でわかる技量、埋めるのは誰?

関係者なら知っている「ザンボ」の正体

リンクの隅にはたくさんの穴ができます。なぜでしょうか=イラスト:橋本佳奈
リンクの隅にはたくさんの穴ができます。なぜでしょうか=イラスト:橋本佳奈

目次

新型コロナウイルスが流行し、真っ先に中止になった世界大会は3月に予定されていたフィギュアスケートの世界選手権でした。
一年に一度、各国のスター選手が集合する大舞台。ファンは、今か、今かと楽しみにしていただけにショックは大きかったと思います。
再開したときに観戦をより楽しめるようお届けする「フィギュアのあるある」。競技の後、必ずできるリンクの穴は、その大きさで選手の技量が測れてしまいます。空いた穴は、誰が埋めるのか? 14年間の競技歴がある記者が伝えます。

リンクにぼこぼこ空いた穴の秘密は

リンクの隅に集中してたくさん穴がぼこぼこ空いています。なぜできるのでしょうか。

これは、選手たちが練習した証拠。トゥジャンプ、というトゥ(刃の先端の尖っている部分)を突いて跳ぶジャンプでできたものです。これらの穴や溝に引っかかると、膝を強打したりと骨折につながり、非常に危険です。堅い氷の上で転倒すると、本当に痛いのです。

膝はみなあざだらけ。ジャンプで転ぶときは、受け身をとる余裕があるのですが、一番痛いのは不意打ちで穴や溝にひっかかってつまずくときです。

なので、スケートリンクに遊びに行くときは、みなさんくれぐれも穴に注意。そして、遊びで穴を空けたりする人がいたら止めてくださいね。

穴の大きさと選手の技量

羽生結弦の4回転ルッツの合成写真(17枚を合成)=2017年10月21日、モスクワ、遠藤啓生撮影
羽生結弦の4回転ルッツの合成写真(17枚を合成)=2017年10月21日、モスクワ、
遠藤啓生撮影 出典: 朝日新聞デジタル

トゥジャンプは、全ジャンプ6種類のうち、半分の3種類。左足のつま先を突くトゥループ、右を突くのは、フリップとルッツの2種類です。つま先を突いた力を利用するので、氷に穴が空きます。

ちなみに、失敗ジャンプの場合の方が穴が大きくなることがあります。これは、トゥに重心を持っていきすぎたせいで大きな力が氷に吸収されてしまうことが理由の一つです。このようなときはきちんと跳び上がれません。また、前屈みになってしまいトゥがぶれたときも穴が大きく空いてしまいます。

トップ選手はとても静か

トゥジャンプ以外の3種類はアクセル、サルコウ、ループ。
唯一前向きから跳ぶのは、みなさんおなじみ、紀平梨花選手が得意のアクセルジャンプ。

そして、エッジジャンプ(刃で跳ぶジャンプ)はサルコウジャンプとループジャンプです。しっかり刃でカーブを作って飛び上がります。エッジジャンプに関しても、体をうまく使えていないと重心が前にいってしまい、氷をたくさん削ってしまうので、大きな溝ができてしまいます。

トップ選手は、体の重心が低く、身のこなしが滑らかです。そして、滑っているときの音がとても静かです。それは、エッジ(刃)の中で滑りやすい部分に重心を乗せるのがうまいためです。ジャンプだけでなく、ステップやスケーティングでも「ガリガリ」という音が少ないのです。

滑りの滑らかな選手も見てみると面白いですよ。
私が滑りが美しいなと思う選手と言えば、ソチ五輪女子シングル銅メダルのカロリナ・コストナー(イタリア)さん。スピードも速く、表現力も豊かです。男子ですと、ジェイソン・ブラウン(米)選手は4回転を成功していなくても滑りの美しさで今年の四大陸選手権で2位となりました。日本の選手は、アイスダンスに転向した高橋大輔選手をはじめ、滑りの美しい選手ばかりだと思います。

ジャンプで空けた穴は自分で補修する

トゥジャンプで空けた穴は、男性のゲンコツくらい大きいことも。穴は空けたままだと危険です。つまずいて転ぶだけではありません。
ジャンプで転んだときに手を氷についた瞬間、空いた穴に指をひっかけて指を骨折した選手もいました。

また、スケートリンクはフィギュアだけで使うわけではありません。アイスホッケーやスピードスケートのショートトラックの選手も使います。ショートトラックの靴は、特にエッジが薄いため、メンテナンスも気を遣っていて、スケートリンクの状態も気をつけています。

そのため、多くのフィギュアスケートの選手は練習後、製氷が入る前に穴を自分たちで埋めます。

整氷車が製氷の際に削った氷のかすが、雪山のようになってリンクの裏にあります。その雪をバケツに入れ、穴をしっかり手で押しながら埋めていきます。製氷車が通る前の短い時間で急いで埋めます。

「ザンボ」の正体は

スケート場には、氷の状態を保つため、一日に何度も製氷が入ります。整氷車は、アメリカでスケートリンクを経営していたフランク・ザンボニー氏が1949年に発明しました。

ザンボニー氏の設立したザンボニー社の整氷車は世界的に普及し、日本の多くのリンクでも使用しています。整氷車の代名詞が「ザンボニー」というほどです。選手はみな「ザンボ」と呼んでいます。


スケートリンクの表面を薄く削ったあと、お湯をまいてとかし、ならす、という作業が1台でできるため、鏡のようにつるつるの表面になるのです。

フィギュアスケート選手にとって、氷は命です。大会が再開したら、選手たちの足元や、製氷の様子なども注目してみると、違った発見があるかもしれません。

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