連載
「夢なんて無いのが普通じゃない?」キラキラしてない男子を漫画に
同級生に一歩踏み込めない中で考えたのは――。
美術科クラス唯一の男子生徒「男子くん」。自席の近くの女子生徒たちと楽しそうにおしゃべりをしながら、心の中で気持ちを語り始めます。
「このクラスに不満があるのかって、もちろんそんなんじゃない」
「最初はそりゃ戸惑ったけど、1年一緒に過ごしてきた訳で」
「男子だからって特別扱いしてくるようなやつはいないし」――。
ここで、前回、副担任の新米先生にも攻撃してきた「おすず」が教室にやってきました。さっそく攻撃を受けますが、男子くんは「このよく分からないノリにだってもう慣れた」。
美術科の授業に真剣に取り組む同級生に対しても、不満は一切出てきません。
「普段アホな奴だけど専門の授業になると急にかっこよくなる」。男子くんは、真剣な眼差しでデッサンする同級生を「かっこいい」と感じています。
同級生が「進学して力つけてデザイナーやりたいんだ」「私は声優になる!!」と夢を語る同級生の話を聞きながら、男子くんは「すげーなー」と返しますが、「将来の夢とか目標をしっかり持っちゃってたりするもんだから、自分は何がやりたいんだろうとか、何でここに来たんだろうとか考えてしまうんだ」。
不満があるわけではない高校生活だけど、先立つものを見つけられないでいる男子くんの胸中が淡々と描かれています。
体育祭も文化祭も、「振り返れば楽しかったよ、でも――」という気持ちを感じます。
そもそも高校生で将来の夢が明確になっている人は多くはないし、高校生活は輝く瞬間はあれど毎日がキラキラしているわけではない、淡々とした日常のはずです。
高校生のモヤモヤにフォーカスした、等身大の心を表現しているように思える今回。
作者のしろやぎさんに、なぜ男子くんのようなキャラクターが生まれたのかを聞きました。
不安を感じることが沢山あるいまの時代、子どもがどんなことに希望を持つのだろうと、悩みながら描きました。
男子くんはクラスで浮いているような存在ではありませんが、性別が違うとかそんな些細な理由で、友達の輪の中にもう一歩踏み込めません。だからか、男子くんはみんなのことも自分のことも俯瞰して見てしまいます。
「美術なんて勉強して何か意味があるんだろうか。みんなが頑張って絵を描いている姿は素敵だけど、上手くなってだからどうなるの?そんな具体的な夢なんて無いのが普通じゃない?なんかカッコ悪いから言わないけど」 ――。
好きで入った高校だけど、モヤモヤした気持ちが募っていく男子くんです。
【次回予告】
部活動の仲間と話す男子くん。より、自分を見つめていきます。
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withnewsでは、しろやぎさんの「あなたそれでも教師ですか」を毎週日曜日に配信予定です。新米くんを軸とした教育現場を描いていく予定です。
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