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「人の顔と名前が覚えられない」社会人の悩みをマンガに 共感が殺到

読者と学んだ「欠点」との向き合い方

トケイさん(@tokeikamone)のマンガ「人の顔と名前が覚えられない社会人の話」
トケイさん(@tokeikamone)のマンガ「人の顔と名前が覚えられない社会人の話」 出典: トケイさんのツイート

目次

「人の顔と名前が覚えられない」そんな自分の短所を、工夫してもどうしても直せず「社会人として欠陥があるのでは」と思い詰める女性。でも、仕事を続けるうちにあることに気付いていきます。人それぞれが持つ「苦手」とどう向き合っていくかを、前向きに考える漫画がツイッターで話題になっています。作者のトケイさん(@tokeikamone)に聞きました。
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マンガ「人の顔と名前が覚えられない社会人の話」

漫画家のトケイさんがツイッターに投稿したのは、「人の顔と名前が覚えられない社会人の話」というタイトルの漫画です。ストーリーは、自身の経験がもとになっています。
出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート
社会人になったトケイさんの悩みは、「人の顔と名前が覚えられない」ということ。上司に「○○さんに連絡して」と言われても、どこの誰のことなのか思い出せません。もらった名刺に似顔絵を描くなどの工夫で、視覚的に覚えることはできるのですが、どうしても字や音だけでは記憶につながりません。
出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート

「名前を言われても思い出せない」というシチュエーションを繰り返す中で、「…私もしかして、社会人として欠陥があるのでは?」と思い詰めていくトケイさん。先輩に相談しても解決の糸口は見えず、忘れたことを責められた記憶、名前が覚えられていないことに気付いた相手の表情が頭の中をぐるぐる……。

「それでも忘れてしまう自分の 無能感に涙が出る」

出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート

「よくないところ」ばかり見えていたけど……

しかし、仕事をする中で気付いたことがあります。同僚の「愚痴」や「文句」の対象は、トケイさんに「なんで忘れるんだ」と責めた上司。自分の欠点ばかり気にしていたトケイさんにとって、「他の人にも欠点がある」ということはまさに目からウロコでした。それも、自分より長く社会人をやっている上司ならなおさら。

「もしかして――… 完全な社会人って少ないのでは?」

出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート

何かしらどこか苦手なものがあって、それが自分にとっては「相手に対する記憶力」だったんじゃないか。そう思うと、徐々に道がひらかれていきました。試しに、先輩にトケイさんの「良いところ」を恐る恐る尋ねてみると、「明るい」「意見がきっちり言える」「盛り上げ上手」「気配りができる」など、自分には見えていない「良いところ」を持っていたことを知ります。

トケイさんの様子を察した先輩は、「失敗をしないように気をつけるより、失敗をどうフォローするか、がずっと重要だから」。

出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート

それ以降、トケイさんの「忘れグセ」は直すものではなく「付き合っていくもの」に。名前を思い出せなくても、メモなどを充実させれば、他の人に迷惑をかけることはなくなっていきました。

形や大きさ、種類が違うものの、みんなそれぞれに「苦手」があることを知ったことで、心にゆとりが生まれたトケイさん。漫画の最後は、「少しずつ 少しずつ 自分を許していこう」という言葉でしめくくられています。

出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート

「なんて私はダメなんだろう」落ち込んだ

漫画には「人の顔と名前が覚えられない」という悩みに、「私も同じです」「仲間がいて安心しました」と共感の声が殺到し、ツイートは1.7万回以上リツイートされ、4.8万件以上の「いいね」が寄せられています。前向きな考え方にも「気持ちが楽になりました」というコメントが集まっています。

作者のトケイさんが、人よりも「人の顔を覚えるのが苦手だ」と感じるようになったのは、会社に入社してしばらくしてからでした。

「営業職という職業柄もあるのですが、他の先輩は1回会っただけで顔と名前が記憶できるのに、私は圧倒的に覚えられないことに気付きました。初めてではないのに『初めまして』と言ってしまうこともあって、いつも『なんで私はダメなんだろう』と落ち込んでいました」
出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート
もともと「人に指摘するには、自分が正しくあらねばならない」という気持ちが強いトケイさん。その反面、己に厳しくするあまり、「できない自分」を許しがたく感じるように。自分の「欠点」ばかり際立ち、情けなく、「私はこの仕事に向いていない」とまで思い詰めてしまったといいます。

しかし会社にも慣れ、視界が広がっていくにつれ、他人のミスや苦手とする部分も見えるようになりました。「ミスをする前提で、どう動くかを考える方が大事」という先輩の言葉が、トケイさんの心に大きく響きました。

「今の自分から脱却することより、認めることが大切」

今では、こまめにふせんにメモをとり、常に見える位置に貼っていくことで記憶を補完しているそう。以前は電話中に咄嗟に自社の名前が出てこないこともあったそうで、電話にも社名を貼っているといいます。

「さすがに社名は忘れないようになりましたし、先輩からも『何これ?』と言われます。でも、やみくもに『できるようにならなきゃ』と思うより、こうしたメモががあればできることが増えて、安心感も持てるんです」
出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート
自分だけができないわけじゃない。人と同じようにできなくても、ステップを増やせばいい。自分の「欠点」を否定するのをやめることで、思い詰めていたトケイさんの気持ちは随分楽になりました。

実は、当初の漫画のラフでは、「少しずつ 少しずつ 頑張っていこう」だった最後のセリフ。しかし、「今の自分から脱却することより、認めることが大切」という思いから、トケイさんは「少しずつ 少しずつ 許していこう」に変更したといいます。
 

「苦しみを共有することって、孤独を解消すること」

この作品を描いたきっかけは、受講している「コルクラボ専科マンガ家コース(コルクラボマンガ専科)」で、「毎日漫画を描く」という課題をもらったことでした。題材を試行錯誤する中で、仕事での気づきを「日記的に」描いたといいます。

当初投稿した漫画は、ラフ画の状態だったにもかかわらず、「わかります」「私もそうです」という共感の声が集まりました。そこでトケイさんは初めて「私だけの悩みじゃなかったんだ」と驚いたそう。たまたま「顔と名前を覚えるのが得意」な人たちが多い環境にいたために、「一体みんなどこに隠れていたの?という気持ちです」。ラフ画をもとに、改めて構成し直して完成させたのが今回の投稿でした。
出典:トケイさん(@tokeikamone)のツイート
漫画にはトケイさんと同じように「私だけじゃなかった」というコメントもあり、頭ごなしに「人に興味がないのでは」と言われつらい経験をした人も。「苦しみを共有することって、孤独を解消することなんだと思う」とトケイさんは話します。

中には、作中の様子から具体的な障害や疾患に結び付けるコメントもありますが、「実は自分もその可能性を考えたことがあります」と語ります。「でも」とトケイさんは続けます。

「それらのどれであってもどれでなくとも、抱えている苦しみそのものは共有できるんじゃないかと、いただいた多くの共感コメントを見ていて感じました。もちろん名前がつくことで得られる安心はあるけれども、名前がついてなくてもその苦しみを共有して肯定できる漫画になっていればいいなと思います」

自分の悩みをはき出し、「前向きな気持ちになれた」というコメントが集まったことに、トケイさんは「私こそ、作品を多くの方に読んでもらって、同意してくれたことで、ありがたい気持ちでいっぱいです」。悩みを受け入れ、肯定する流れが、やさしい循環を生んでいました。

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