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経済再始動の中国で「異業界経営」幼稚園が肉まん、高級ホテルが屋台
一足先に経済が再始動した中国で、新型コロナウイルス後の新しいビジネスモデルが生まれています。幼稚園が肉まんを売り、カラオケ店が出前をし、五つ星高級ホテルが屋台に――。葛藤を抱えながらも、新たな活路を見いだそうとする姿は「異業界経営」と呼ばれ注目されています。
新型コロナウイルスは、世界中の経済に大きな打撃を与えています。経済活動が少しずつ再開している中国でも、1カ所に人が集まる映画館やカラオケ店などは、敬遠されたままです。
そんな中、中国で話題になっているのは、「異業界経営」と呼ばれる、ビジネスモデルの変化です。
山東省済南市にある閉園中の私立幼稚園は、5月、バーベキューレストランに「変身」しました。幼稚園には、もともとキッチンがあり、調理資格を持つスタッフがいて、テーブルや椅子などはやや小さめですが大人でも座れるため、レストランとしてリニューアルしたのです。
雲南省麗江市の幼稚園で販売している肉まんは、味も好評だと伝えられています。
客足が途絶えたKTV(カラオケ店)では、従業員の給料を払うために、料理の出前業務をスタートするところが少なくありません。
4カ月間の休業を余儀なくされたハルビン市にあるカラオケ店は、元々、カラオケ客に提供していた軽食に力を入れ、中国版LINEのWeChatに登録した1万人近くのお客さんに「出前開始」の情報を公開。ネット経由の注文でなんとか経営を続けています。
「異業界経営」の中でも特に注目されているのが、武漢市にある五つ星ホテル、「シェラトングランド武漢漢口ホテル (武漢漢口氾海喜来登大酒店=氾海シェラトン)」です。
高級ホテルですが、今は、屋台料理を提供しています。中国版ツイッターの微博では、「武漢五星級酒店転型自救開大排档」(五つ星ホテルが屋台料理を提供し自己救済)とハッシュタグつきで話題になり、1億近くのビューを集めました。
中国のニュースアプリ「頭条新聞」では、「料理も美味しいし、値段も手頃だ」という利用者の声を動画とともに紹介し、3600を超えるコメントと7万を超える「いいね」がついています。
高級ホテルの決断には、「まだ無症状の人もいるので、気を付けたほうがいいかも…」
「こんな時にまだ人々が集まって食事をすることは、本当に大丈夫かな」などのコメントもつきましたが、好意的な声も投稿されています。
「料理の種類も多いし、価格も手ごろ」
「屋外で露天ですので、安心して食事ができます」
「武漢、ガンバレ!」
「五つ星の屋台料理、星なしの(手頃な)値段で!」
「世界には救世主がいないので、自分で自分を救わないと」
氾海シェラトン広報によると、武漢が都市封鎖の期間中に、中国各地が武漢を支援するための医療チームを派遣した際、ホテルは医療チームの隊員たちに部屋を提供しました。
「3月末頃になると、医療チームが任務を終え、ホテルを使わなくなったので、都市封鎖が終わった後の経営と従業員の雇用問題を考えなければなりませんでした」
屋台料理を始めたのは、武漢の都市封鎖が解除された4月8日。現在、屋台料理の提供時間は、毎日午後の5時半から10時半です。毎日、250人近くの利用者がいるそうです。
提供している料理は武漢市民が好きな屋台料理のザリガニや串焼きなどですが、五つ星ホテルのシェフが調理しています。
とはいえ、シェフたちは広東料理や地元料理を「専門」にしていたため、屋台料理はあらためて勉強しなおしたそうです。
「屋台料理の提供は、ホテルの従業員として最初に確かにちゅうちょもありましたが、ホテルの事業と雇用の継続が最も大事で、力を合わせて困難をまず乗り越えなければなりません。今は希望をもって働いています」
ホテルやカラオケをはじめ、様々なビジネスが苦境に陥っているのは日本も同じです。
外出自粛などがやわらいでも、飲食業界などへの長引くことが予想されます。
中国には、昔から食事を大事にしてきたことわざとして「民以食為天=民は食をもって天となす」という言葉があります。
和食などが世界で注目される日本にとっても、一足先に経済活動が再開した中国の「異業界経営」は参考になるかもしれません。
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