連載
#30 ○○の世論
次の首相、誰にする? 自民支持層のジレンマ 影の薄い「後継者」
「この中にいない」に透ける本音
安倍晋三首相は来年9月、自民党総裁としての任期満了を迎えます。政権を握る党の総裁選は、事実上の「次の首相」選びの場となります。自民支持層は「次の首相」について、どう考えているのでしょうか。朝日新聞の全国世論調査(郵送)を分析すると、自民支持層のジレンマも見えてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
総裁選は基本的に総裁任期の満了にともなって行われます。前回2018年9月の総裁選では、安倍首相と石破茂・元幹事長が立候補し、国会議員票(405票)と自民党員・党友による地方票(405票)の計810票を争いました。
結果は、安倍首相が553票を獲得し、石破氏の254票を上回りました。ただ、地方票を比べると、安倍首相の224票に対し、石破氏は45%にあたる181票を集めました。このため、自民党内では安倍首相の圧勝という声の一方で、石破氏の善戦との見方も広がりました。
過去の総裁選でも地方票がカギを握ったことがあります。小泉純一郎氏が3度目の挑戦で勝利した2001年の総裁選です。このときは、小泉氏が地方票で圧勝。「選挙の顔」でもある総裁選びは国会議員票に影響を与え、小泉氏当選の流れを作りました。
では、世論調査で自民支持層は「次の首相」について、どう考えているのでしょうか。
朝日新聞の全国世論調査(郵送)は3月上旬~4月中旬、憲法や政治意識について尋ねました。
有権者全体では、安倍首相の「次の首相」は、安倍政権の路線を「引き継がないほうがよい」57%が「引き継ぐほうがよい」34%を上回りましたが、自民支持層では「引き継ぐほうがよい」60%が「引き継がないほうがよい」33%を上回りました。
自民支持層は、安倍政権の路線継承を支持しているようです。
そんな自民支持層が推す「次の首相」は、だれでしょうか。6人の名前を挙げて選んでもらいました。
全体と同様に、自民支持層でも石破氏がトップでした。ただ石破氏は、一昨年の総裁選で安倍首相と争い、「桜を見る会」問題などで安倍首相や政権に苦言を呈し、距離を取っています。
安倍政権の路線継承を優先するのであれば、安倍首相が「後継者」と目するとされる岸田文雄・政調会長のほか、政権を支える菅義偉・官房長官や河野太郎・防衛相に支持が集まりそうですが、石破氏の半分以下にとどまっています。
一方、自民支持層では「この中にはいない」が22%を占めており、石破氏の支持率とほぼ並んでいます。
それでは、自民支持層は安倍首相の続投を望んでいるのでしょうか。
全体では安倍首相4選に「反対」が66%を占めるなか、自民支持層では賛否が割れていることがわかります。
「次の首相」には安倍政権の路線を継承して欲しいものの、安倍首相と対峙する石破氏がその一番手になっている―。一連の結果からは、そんな自民支持層のジレンマが垣間見えます。
「次の首相」の質問で、石破氏とともに「この中にはいない」が自民支持層の支持を集めているのも、安倍首相の「次」が自民支持層のなかではっきりしていないという迷いの現れなのかもしれません。
1/20枚