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マンガ

見逃したLINE「母に本気でごめんと思った日」まねできない優しさ

「今日もいい日やったわ」母の口癖に隠された優しさ

漫画「母に本気でごめんと思ったし、尊敬した日の思い出」
漫画「母に本気でごめんと思ったし、尊敬した日の思い出」 出典: 秋野ひろさんのツイート

目次

「母に本気でごめんと思ったし、尊敬した日の思い出」。そんなコメントとともに、母の日にツイッターに投稿された漫画。自身の経験をもとに、「母の口癖」を通して描かれたストーリーには、明るい気持ちで1日を終えるヒントと、母の深い優しさが伝わってきます。「母の真似はなかなかできない」と話す、作者の秋野ひろさん(@16_akino)に聞きました。
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「今日もいい日やったわ」母の口癖に落ち着いた

「はぁ~ 今日もいい日やったわ」

保育園から母の車で家路につく、幼い頃の秋野さん。母は運転席から、今日あった出来事を秋野さんに話し、決まって「今日もいい日やったわ」でしめくくります。秋野さんは母の言葉を聞くと落ち着き、車に乗るのが楽しみになっていました。
出典:秋野ひろさんのツイート
秋野さんが高校生になったある日のこと。部活の記録会から友だちと帰る途中、携帯に母からの連絡が来ていることに気付きます。実はこの日、母が車で迎えに来ることになっていたのです。

もう引き返せない距離。「ごめん」と連絡しますが、片道40分の道のりを、母は一人で帰ることになりました。

「連絡さえ見とけば」と後悔する秋野さん。「多分今日も『いい日』って言ってくれたのに」
出典:秋野ひろさんのツイート
気まずい思いを抱えたまま家のドアを開けると、母が一足先に帰って来ていました。「ごめ…」と謝りかけると、家の奥に入ってしまう母。再び、後悔の念に駆られようとしていたその時……。

「会場の近くでお祭り見つけてな ちょっと楽しんでから帰ってきてん」

屋台で買ったであろうベビーカステラを手に、母は秋野さんに語りかけます。

「まあ行き違いになってもたけど 今日もいい日やったわ」
出典:秋野ひろさんのツイート
今日は聞けないと思っていた母の口癖。「お腹すいたやろ? おいしいで」とベビーカステラをすすめる母に、「ありがとう」と答えるのでした。

毎日「いいこと」が起こる訳じゃないからこそ

秋野さんのツイートには5千件以上の「いいね」が集まり、「とても素敵な口癖」「こんな人になりたい」というコメントが寄せられています。
「思い返せば、保育園の頃から記憶にある母の言葉です」

作者の秋野さんは、母の口癖をそう振り返ります。1日をしめくくるいい言葉だと何げなく感じていたそうですが、秋野さんが中学生のころ、特に印象に残る出来事がありました。

「母が買い物に行って、財布を忘れてきたことがあったんです。それだけだとあまりいい日とは言えないと思うんですが、取りに行って帰ってきた母は『今日もいい日やった』と言ったんです。財布を届けてくれた人や店員さんが親切だったから、と」
出典:秋野ひろさんのツイート
その時から、母がただ単に「いい日」を過ごしていた訳ではなく、悪いことがあっても「よかったこと」をすくい上げ、前向きな言葉にしているのだと感じるようになったといいます。

母のLINEを見た瞬間、思いがぐるぐる

そして高校の時、作品に描かれたすれ違いが起こってしまいました。母からの「向かっています」「もうすぐ着くよ」のLINEを見た瞬間、取り返しのつかないことをしたことに気づき、頭の中でさまざまな思いが駆け巡りました。

「これは自分のよくない癖なのですが、まず『これは自分が悪いのか』と考えてしまった」という秋野さん。

「母はもともと迎えに行くと言っていたので、確実に自分が悪いんです。でも、咄嗟に『スマホを見ていると顧問の先生が機嫌が悪くなる』という断片的な情報から、原因を人に押しつけようと考えてしまって、自分でも情けない気持ちになりました」

LINEで謝ると、母からは「わかりました」という返信。もともとLINEでは敬語を使う母ですが、自分の非を痛いほどわかっているからこそ、その日の母の返信が素っ気なく感じました。
出典:秋野ひろさんのツイート
恐る恐る帰った家で、母は「今日もいい日やったわ」と言ってくれました。秋野さんを気遣い、あたたかく迎え入れてくれたことに「本当にありがたかった」と話します。

成人式のために描いた漫画、母の日に再投稿

秋野さんは教育学部に通う大学3年生。受講していた「コルクラボ専科マンガ家コース(コルクラボマンガ専科)」のワークショップの中で、この作品を描こうと思ったそうです。成人式で兵庫県に帰省したときに、母に見せようと昨年末に描き上げました。

ところが、作品をTwitterに漫画を投稿すると父が発見。母に直接読んでもらう予定でしたが、初めて読んだときのリアクションは見られなかったそうです。

「喜んでくれていたらしいので良かったのですが、意図していた展開とは違いました……」
出典:秋野ひろさんのツイート
しかもこの作品を再度ツイッターに投稿したのは、当日の夜に母の日であることに気づいたから。たくさんの「いいね」が集まったうれしさとともに、「母に感謝の気持ちを伝えるのがその後になってしまった」と罪悪感が一緒になってやってきたと明かします。

「母にはいつもありがとうということと、漫画が話題になったことを含めて、感謝の気持ちを伝えました」

魅力感じるのは、母のような「愚直な人」

秋野さんにとって、母は「人の悪口を言うのがどうしても嫌でためこんで、体調を崩してしまうほどの愚直な人」。大学の授業の中でも、親の精神が安定していることが子どもにとって大切であると聞く度に、1日を「いい日やった」としめくくる母のありがたみを感じているといいます。

以前、秋野さんも母の真似をして1日を振り返ろうとしたことがあったそうですが、「1週間くらいで無理でした」。

「間違いなく『悪い日』もあって、『いい日』だと思えないことに自己嫌悪に陥っちゃうんです。『いい日』にならないのは環境のせいでもあるので、ほどほどに考えるのがいいのかもしれないです」
出典:秋野ひろさんのツイート
それでも、漫画に触れる中で魅力を感じるのは、不器用ながらも目標に向かって愚直に生きる人たち。そんな人たちを自身でも漫画でも描いていきたいと話しています。

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