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お金と仕事

DeNA南場会長の就活「たまたま内定…一番ダメな例」本当に欲しい人材

静かでも、アグレッシブでもいい「良質な非常識」を

インタビューで就活について語る南場智子さん
インタビューで就活について語る南場智子さん

目次

2021年卒の学生の就職活動は佳境を迎えています。就職活動に関する取材をしていると「企業が新卒採用に求めるものは何だろう?」と改めて気になってきました。そこで、記者が取材を申し込んだのがDeNAの南場智子代表取締役会長。誰もが知るIT企業のトップに自身の学生時代や採用に対する思いを聞きました。

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「格好良さにひかれ、たまたま内定」

ーーご自身はどのような就活生だったのですか

「コンサルタント会社(マッキンゼー・アンド・カンパニー)に勤める先輩に誘われて行った説明会で格好良さにひかれ、たまたまその会社に内定しました。一番ダメな例です。自分の将来についてちゃんと考えなかったし、他の選択肢も考えていなかった。だから、入社してから苦労しました。先輩の指示の意味もわからず、焦って夜遅くまで働いて寝不足になる。周りの評価を気にして、自信がなくなる悪循環に陥っていました」


ーー昨年の内定式を取材したときに「自分をうんと好きになってほしい」と語っていたのが印象的でした

「期待に応えられない悔しさなどから自信がなくなってしまう中で、自分の個性を大切にしてほしいという願いからでした。会社は多様的な方が発展します。性格や強み、弱み、どういうときに頑張るエネルギーが湧くかというのは、バラバラな方が異なる強みが発揮されてチームがうまくまわっていきます。だから、この人と比べて劣っているとか、一人前になっているのかを心配するんじゃなくて、『ここが好きなんだ』ということを思いっきり出して働いた方が良いのです」

「これは、就活生にも言えると思います。就活では、『足りないところをどう見せるか』ばかりを考えるのではなく、『自分の大好きなところはどんなところか』を考えてきてほしいと思います。DeNAでは自分らしさを出せるように、面接や内定式でも思い思いの服装で参加してもらっています。企業は色んな個性を集めた方が強いチームが作れるというのはわかっており、その中でも各企業ごとに譲れない色があります。それを見抜こうとしているわけで、ちゃんと見抜いてもらうためにも大好きなところを表現できることが大切なのではないでしょうか」

昨年10月1日に行われたDeNAの内定式の様子。内定者はスーツではなく自由な服装で出席した
昨年10月1日に行われたDeNAの内定式の様子。内定者はスーツではなく自由な服装で出席した

「芯は『真面目で頑張り屋』な人を求めたい」

ーー新卒採用で重視していることはなんですか?

「会社は多様な人材がいる方が発展します。ただ、あえて言えば表面的には静かな人でも、アグレッシブな人でも良いのですが、芯は『真面目で頑張り屋』な人を求めたい。事業は良いときもあれば悪いときもあります。自分の力はちゃんとあったのに、運がなくてプロジェクトがストップしちゃうことだってある。毎日壁が出てくることに対して、表だってアグレッシブでなくて良いけれど、打ち破る芯のエネルギーレベルが高い方がいいと思います」

「DeNAは2019年4~12月期決算で、2005年の上場以来初めて赤字を出しました。会社には課題があり、上手くいっていれば、そんな決算を出さなくていいわけです。ただ、状況が悪いときでも、組織が強ければ必ず乗り越えられる。仕事に真摯(しんし)に取り組む社員の存在はすごく頼もしく感じます。だから、私は採用を大事にしています」

インタビューにこたえるDeNA・南場智子会長
インタビューにこたえるDeNA・南場智子会長

新卒一括採用「日本の色んな課題の根源」

ーー新卒一括採用についてどのように考えていますか?

「教育制度から始まっていることかもしれないのですが、日本の色んな課題の根源にあると思っています。日本の教育には、一つの答えを正しいとする価値観があります。そして『間違えない達人』をつくるんです」

「就職活動でも、企業や会社に偏差値や序列があるかのような情報が出回り、大企業に向かっていく。でも、職業選択に偏差値なんてあるわけないじゃないですか。色んな職業があって自分で選択するんですよ、偏差値じゃなくてあなたの人生のビジョンとか個性に合ったモノを選んでいくんですよ、だから自分で積極的に見つけなさいよというものです」

前例がない時代「ユニークさが必要に」

ーー南場さんにとって「働く」とは?

「幸せ、かな。自分の幸せって何かって思った時に『役に立っている』『貢献している』という時だと思います。それは社会だったり、チームだったり、世の中だったり、家族だったり、誰か一人でもいい。人の役に立っているというのは幸せの源泉ですよね」

「学生から社会人になる時ってのは、大きなジャンプなんです。先輩は輝いて見えるし、色々とできていないことばかりでショックも受けるし、横との比較も気になるし。自信がなくなる状況だと思うのですが、金型にはめられないようにしてほしい」

「日本は少子高齢化など様々な問題に直面しています。前例がないわけだから、その対処方法にはユニークさが必要になる。『こうであらねばならない』ではなく、自分の個性を解き放って成長してほしいです」

DeNA南場智子会長
DeNA南場智子会長

 

南場智子(なんば・ともこ)
1962年生まれ。1986年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。1999年に同社を退社してディー・エヌ・エーを設立し、代表取締役社長に就任する。2011年に社長退任、2015年から会長として復帰し、2017年から代表取締役会長を務める。
 

記者の気づき
「良質な非常識」という視点

「(野球の話になり)あなた、黄色と黒のチーム(阪神タイガース)のファンなのね」
「これまでどこの地方で記者してきたの?」
「(広報担当に)私その服とそっくりな柄の服持ってる。見たことない?」

取材中、印象的だったのは、記者や広報担当の社員に自分から話しかける姿でした。
コンサルタント会社からITベンチャーを起業、こんな経歴からワンマンさが前面に出てくるかと思っていましたが、いい意味で裏切られました。

ささいなやり取りではありますが、日頃から、コミュニケーションを通して人を見つめることを大切にしているんだな、とひしひし伝わってきました。

一方で、人事に話が及んだ時、顔を出したのが経営者としての力強さです。

「常識に支配されることを嫌ってほしい」
「上司であっても思ったことを伝える『良質な非常識』を求めたい」

創業20年を超えるベンチャーにとっても、固定観念に縛られることがいかに危険なのか。その言葉からは、にじみ出ているようでした。

新型コロナウイルスの影響で採用選考が中断されるなど、就活生にとって不安な要素が少なくありません。

赤字転落をはじめ、経営を揺るがす問題にも向き合ってきた南場さんですが、求める人材像としてあげたのが「真面目で頑張り屋」。そして、「多様性」です。

様々なトラブルを柔軟に受け止めながら、困難な状況には粘り強く対応する。従来の採用、働き方が大きく揺れ動いている時期だからこそ、本当に自分が目指したい職業・社会人像を見失わず前に進むことが大事なのだと、あらためて思いました。

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【出演予定者】
吉田貴司・朝日新聞経済部記者(「働く」取材班)
藤えりか・朝日新聞経済部記者(アンカー)
〈専門家ゲスト〉
松本あゆみさん(株式会社ディスコ キャリタスリサーチ研究員)
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