連載
#45 夜廻り猫
「バイトが終わった…大学続けられるか」 夜廻り猫が描く「贈り物」
1年続けたバイトが突然終わってしまい、「大学を続けられるか分からない……」と絶望感をおぼえていた女子大学生。そんな彼女を励ましたのは――。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「わずかな希望」を描きました。
今日も町を夜周り中の猫の遠藤平蔵。「むっ 涙の匂い……!」。心で泣いている人の涙の匂いをキャッチしました。
アパートの一室で膝を抱えていた女子大学生は、「1年続けたベビーシッターのバイトが今日で終わりだった 大学を続けられるか分からない……」と遠藤に打ち明けます。
面倒をみていた3歳のカズ君には、今後もう会えないと伝えてもきっと分からない……。
寂しさを覚えつつ散歩をしていたら、カズ君が道ばたにうずくまり、力いっぱい「ぺんぺん草」を抜いて、プレゼントしてくれました。
「草の実を引っ張ってブラブラさせてから振ると、きれいな音がするんだよ」
1年前にそう教えたのを、覚えていてくれたのです。
カズ君からもらった根っこつきのぺんぺん草を見つめながら、「私も 負けない」。
大学生のつぶやきに、遠藤は「おまいさんなら出来る…!」とエールを送るのでした。
新型コロナウイルスの感染拡大で学校が休みになったり、これまでの職を失ったり……。作者の深谷さんは、社会生活が深刻な影響を受けていることを念頭に作品を描いたといいます。
「収束のあてもなく、どういう希望が持てるのか。コロナ以前にも、ギリギリで生活して来た多くの人にとって、本当に辛い状況です」と話します。
わずかな希望を持ち、瀬戸際で踏ん張って生きてきた人たちの、心が折れずにいられますように。今日一日、元気でいられますように……。「そんな祈りばかりで描きました」
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本6巻(講談社)が2019年11月22日に発売された。
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