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お金と仕事

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万城目学さん1回コケた就活 2回目に立てた新たな戦略とは

自身の就職活動の経験を語る万城目学さん
自身の就職活動の経験を語る万城目学さん

目次

今、様々な分野で活躍している人たちにも就職活動をしていた人は少なくありません。作家の万城目学さんは、1回目の就活で失敗。2回目で目指したのは「あまり働かない会社」でした。3月1日、来春卒業予定の大学3年生らを対象にした就職・採用活動の説明会が解禁されました。就活にまつわる悩み、たまには「斜め上」から考えてみませんか? 2019年秋に出版したエッセー集「べらぼうくん」(文芸春秋)の中で自身の就活経験をつづった万城目さんに聞きました。

万城目さんが2019年秋に出版したエッセー集「べらぼうくん」(文芸春秋)

ネットない時代、就活に苦戦

ーー就職活動を2回されたそうですね

4回生(4年生)の時には、小説家になりたいという漠然とした気持ちがあるような段階で就職活動をしました。何をやりたいかもわからず、とりあえずネームバリューのある企業に応募しましたが、一次面接で落ちてばかり。途中で「もうええか」と自発的に就活をやめてしまいました。当時は就職氷河期でしたし、周りの人は理系がいっぱいで大学院に行く人や同じ法学部でも司法試験を受けていました。就職活動を何かというものを手探りで、触る人もあまりいないみたいな。ネットの情報があまりない時代であおられなかったんです。


ーーその頃から小説を書かれていたのですか

最初の小説もまだ書いていなかったです。小説家になりたいという漠然とした気持ちがある段階でした。4回生の秋ぐらいから小説を書きはじめたのですが、書きながら「すぐには小説家にはなれない」と感じ、翌年に再び就職活動をしました。1回目の就活があったので本気でやらないと受からない、ばーっと行ったら自動ドアが開くという世界ではないと感じていました。やるなら本気でやらないと、って思いましたね。

昨年の就職活動の様子
昨年の就職活動の様子

ーー2回目の就職で「あまり働かない会社」を方針に掲げたとエッセーに書いてありました

いまいち働いていたところに失礼だから言えなかったのですが。「モーレツはいやだ」とね。当時は説明会で、モーレツに働くことを社員が武勇伝のように語る会社がたくさんありました。小説を書くためには仕事以外の時間がほしいし、家族とも過ごしたいし、土日は家にいたい。だから、そういった会社は選択肢から外しました。今思えば、ずいぶん上から目線かもしれませんね。


ーーどのように会社を選び出したのですか

例えば、あるビール会社の社員の方がモーレツな働き方を説いていました。それで、どうしてそうなるかと考えた時に熾烈(しれつ)な競争があるからだと思いました。そうではないところに就職したいと考え、製造過程を川の流れで考えた時の「川上」産業が良いのではないかと。あくまで勘ですけどね。川上に行けばそこまで熾烈ではないのではないかと考えて、化学繊維の会社を目指しました。

「面接でウケが悪かった」

ーー面接はあまり得意ではなかったのですか

本当に面接での受けが悪かったですね。僕は、具体的な作業を一緒にしたら、だれよりもできるという自信はあるんです。でも、面接では自由闊達(かったつ)にしゃべれない。わずかな時間でフィーリングが合うというタイプではないんですね。僕の場合は、採用課長が最終面接でうまく声をかけてくれて、なんとか内定をもらいました。


ーーエッセーにあった写真フィルムメーカーの面接の話が面白かったです

あれは、集団面接の時の話です。1対5人くらいで。面接担当者が早く終わりたい感じをムンムン出しながら「質問ある?」と聞いてきたので、「デジカメが売り上げを伸ばしたらフィルムの売り上げが落ちていくんではないでしょうか?」と質問しました。そうしたら、「フィルムは1千万画素あるんだよ、今(当時)のデジカメとかは200万画素、携帯のカメラは20万画素。どんだけ頑張ってもまだまだですよ」みたいな感じで言われて。そのときは「そうですよね」っていっていたのですが、いまやどうでしょうかと(笑)。当事者が危機感を抱くことはまずなくて、素人の勘の方が正しいこともあるということなのかもしれません。

万城目さんが2019年秋に出版したエッセー集「べらぼうくん」(文芸春秋)
万城目さんが2019年秋に出版したエッセー集「べらぼうくん」(文芸春秋)

――新卒一括採用についてはどのように考えていますか

ベストではないだろうけれど、1年間人事がずっと動いてほしい人を採っていくのはしんどくて出来ないだろうと。でも就職活動でどんだけ頑張ってみても3年で3割辞めるんです。実際働いたら違うことを考え出して、現状に不満が出てくるのです。人間は批判精神の塊ですから。会社に入るためにこんなにみんなが軋轢(あつれき)を生むのは変だなって思います。


――就活では「自分はダメだ」というマイナスの感情が生まれます

就職活動って苦しいですよね、良いことないですもん。私も落ち込んではノートにぽつんと黒電話の落書きを描き、「鳴らない電話」と名付けていました。就職活動のような苦行には、メンタルの持ち方が大事かもしれません。すごく結果の悪かった日でも、明日のためには気持ちの切り替えが大切です。引きずるともっと自信がなくなるので、忘れることがいいんじゃないでしょうか。

インタビューに応じる万城目学さん
インタビューに応じる万城目学さん

「やりがい」という言葉は使いたくない

――万城目さんにとって「働く」とは

日々やっていることへの満足感を抱いて過ごせたら幸せですよね。今、小説家となって幸せな状態です。やったことを評価してもらえて。一人で働いていても楽しんでくれたり、喜んでくれたりする人がおらへんと続かないですよ。一人じゃなくて支えてくれたり、評価してくれたりする人がいてこそ成り立つ気はします。「やりがい」という言葉は使いたくないです。やりがいとか考えだすとしんどくなりますよね、つらいことも入ってしまう。対価をあたえずにやっててもあかんから。


――学生たちに伝えたいことは

本当は1秒でも早く内定を取って就活を終えてほしいですけれど、そうもいかない。就活生は本当につらいですよね。今は売り手市場だからって、自分の時より楽だとか言いたくもないし、いつかは決まると言うのも無責任だし。ただ、働き出したら、もっと多くの悩みに出合います。たいしたことないんですよ、その会社に行けるか、行けないかは。あまり大きなことと捉えすぎないでほしいです。

万城目学(まきめ・まなぶ)1976年生まれ。京都大学法学部卒業後、化学繊維会社に約2年勤務。主な著書に「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」など。2019年に就活時の心境など小説家になるまでを綴ったエッセー「べらぼうくん」(文芸春秋)を出版した。

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