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在宅続く中国で100倍売れた調理器具 起きた変化、日本にもヒント
新型コロナウイルスの影響で、中国・武漢が都市封鎖をしたのは1月23日のことでした。以降、中国各地で「在宅隔離」生活が始まり、「ストップ」ボタンが押されたかように、工場だけでなく、レストランや商業施設からも人が消えました。そして、2カ月近くの隔離期間は人々の生活にも変化を与えています。中華料理からは少し縁遠い調理器具に注目が集まり、料理を研鑽してシェフの資格まで取った人が現れたほか、オンラインを活用した色々な「先生」が登場。これまで「できなかった」ことができ、まるで「万能選手」に変身した人もいます。中国の経験は、緊急事態宣言が出された日本のヒントになるかもしれません。
中国の自宅隔離は、かなり厳しいものです。隔離期間中の外出は基本は禁止。住む「団地」=(「小区」)ごとに管理され、団地の玄関には管理会社の警備員がいて、1家族に2日間で1枚の「通行証」が配られ、厳しくチェックされました。
隔離の効果に関しては、新型コロナウイルスの対応により中国で著名になった医者の張文宏(チャン・ウェンホン)さんが、全国民が「隔離」して、ウイルスを「悶死」させることが有効だと力説しました。(中国語の「悶」には(1)退屈(2)密閉するという二つの意味があります。隔離生活はもちろん「退屈」するが、しかしウイルスを「悶死」(気絶させる)ことに有効だそうです)
隔離後の中国では、在宅生活をいかに有意義に過ごすかが大事となりました。
まず、特定のムーブメントに不特定多数の人が自然と参加する「インターネットミーム」とも言える現象が起きました。たとえば、みんなで一緒に武漢の「火神山病院」「雷神山病院」の建設中継を見たり、「NASAのホウキ実験」をやったりしました。
中国には「民以食為天(民にとって大事なのは食べること)」という言葉があります。料理することは、最も人気な「時間つぶし」になりました。
特にパンやケーキなど、これまでスーパーや専門店で買うものと言う認識が根強かったものに脚光が集まりました。隔離期間中はオーブンが多く売られ、人気キッチン用品の「トップ5」に(中国のAI財経社調べ)。そのほか、サンドイッチメーカーは100倍の売り上げを記録したそうです。
そして普段全く料理をしない人も、レシピなどを参照しながら、料理を作るようになりました。そのなかに、料理の腕があがり、調理師(シェフ)の資格まで取る人も現れました。
中国のSNSではネタとして広がった言葉もあります。「レストランの経営が難しくなったのは、ウイルスのせいで、お客さんがみんなシェフになったからです」
家に閉じこもる人が増えれば、同じ閉じこもっている状態でも、何かを教える人も増えています。オンライン・レッスンの増加です。
たとえば、中国版TikTok「抖音」では、料理のレシピを提供する人だけでなく、英語のレッスンをする人、運動やダイエットのコツを教える人、化粧の仕方を教える人など、様々な「先生」が登場しています。アカウントの中には、数百万~数千万のフォロワーを獲得したものもあり、ある意味では「win-win」の構図になります。
隔離は「退屈」でつまらない一面がありますが、その「時間」と「空間」の使い方次第で、料理の天才が現れるかもしれませんし、ほかの技能が一つや二つ増えるかもしれません。イタリアの人々がベランダでオペラを歌うシーンが印象的ですし、アメリカ・ニューヨークでは玄関前の道路上に励ましの言葉や絵を描くことが流行っているそうです。
普段読みたい本を読んだり、見たいテレビを見たり、あるいはゲームをやったりすることも悪くありません。人々の知恵が含まれた隔離生活の過ごし方は、困難を乗り切る重要な要素だとも思われます。
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