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一斉休校のしわ寄せ、こんな所に 学童保育「茨の道だけど開くしか」

休校期間中、利用時間を拡大して対応している「民間学童」に行ってみました。

YouTubeで折り方を確認しながら折り紙をする子も
YouTubeで折り方を確認しながら折り紙をする子も

目次

新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校により、小中高校生の居場所確保が課題になっています。普段は小学生の放課後の居場所となっている学童保育では、休校期間中、日中の仕事を休むことができない親のため、利用時間を拡大するなどの対応に迫られています。親たちにとってはありがたい対応である一方、経済的な負担ものしかかります。「地域の子どもの受け皿となり、毎日の生活を支えているところがあることを知ってもらいたい」。現場の声を聞きました。

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【関連リンク】「休校の間、どう過ごそう?」子どもが“30分”熱中できる「おうちでたのしーと」

休校が始まってすぐの利用は半数

向かったのは、NPO法人Chance For All(CFA)が運営する学童保育CFAKidsです。

CFAは足立区と墨田区に計8校舎を持っていて、あわせて300人の子どもたちが通っています。今回お邪魔したのは足立区にある亀田校です。

12日午前11時、亀田校では十数人の子どもたちが室内で過ごしていました。
Youtubeの動画を見ながら折り紙をする子、読書をする子、自作のゴジラを見せてくれる子ども、友達と将棋をしている子……。全員マスクをつけていましたが、部屋いっぱいに元気な声を響かせていました。

CFAKidsでの時間の過ごし方は基本的に自由。無料で見ることができるオンライン授業をパソコンで流したりすることもありますが、それも自由参加です。

代表理事の中山勇魚(いさな)さんによると、休校期間に入ってすぐの数日は、8校舎全体の出席率は5割程度になりました。

「最初の数日は親が休めたのですが、週の後半になるにつれ、子どもは『友達と遊びたい』、親は『もう休めない』となってきた」と、2週目に入ると出席率は7割ほどまで戻ったといいます。

読書をする子どもたち
読書をする子どもたち

学童間で遊び情報を共有

気になるのは子どもたちの生活。ストレスがたまったりしている様子はあるのでしょうか。

「休みが始まった高揚感で楽しそうに過ごしていましたが、2週目以降はストレスがたまっているようです」と中山さん。

「足立区の小学校は、『午後3時までは自宅で過ごすように』と伝えているところが多いので、CFAKidsでもそのようにしています。でも、その時間までは外で体を動かせないので、ストレスがたまっていますね」

エネルギーが有り余っている子どもたちにとって、体育の授業や休み時間・放課後の遊びができないのは相当しんどいだろうと容易に想像できます。

CFAKidsでは、室内の遊びも充実させられるように、8校舎それぞれで工夫した遊びの情報を交換しています。

「最近だと、消しゴムはんこ作りとか、ペーパークラフトとかですかね」

タブレットで表示したイラストを見ながら絵の練習をする女の子
タブレットで表示したイラストを見ながら絵の練習をする女の子

赤字は3月だけで100万円

今回、私が一番聞きたかったことの一つに費用負担があります。

CFAKidsでは通常の保育時間は放課後(最長で午後9時まで)ですが、休校期間は最大で午前7時半から午後9時まで預かることになります。

親としては、それだけ学童保育を利用するとなると、子どもの様子も心配ですが、延長料金がどのくらいまでふくれあがるのかが気が気でなりません…。

CFAKidsは「放課後児童クラブ」(公設の学童保育など)としての届け出をしていない、いわゆる「民間学童」です。利用時間など家庭のニーズに応えるため、放課後児童クラブの要件外のことも担っているため、国や基礎自治体から補助金を受けていません。

そのため、利用料は、補助金を受けている学童保育なら月額1万円以下におさまるところ、CFAKidsでは月額2万3千円となっています。

さらに、休校によって保育時間が長くなる分は、1時間あたり500円がかかります。延長料金だけで6万円かかってしまう家庭も出てくる(ひぃっ…)ことから、CFAでは、休校期間中の保護者負担の上限を4万5千円とすることを決めました。

親としては、普段の倍以上の時間を見てもらうのに、月2万円の追加出費で済むのはとってもありがたい…。

ただ、その差額はCFAの持ち出しになります。

「今月だけで100万円ほどの赤字を抱えることになります」

100万円……。

CFAの中山勇魚さん
CFAの中山勇魚さん

国は学童保育の追加経費について補助を出すと表明していますが、平時から補助金の対象になっていないCFAKidsがその対象となるかどうかがわからないことに、中山さんは不安を感じています。

CFAKidsには、ひとり親家庭など家庭や子どもの状況からCFAKids独自ののサービスを頼って利用する家庭も多くあります。
「これを機に、放課後児童クラブとして補助金を受け取っている学童保育以外にも、地域の子どもの受け皿となり、毎日の生活を支えているところがあることを知ってもらいたい」

そしてこう続けます。「子どもを地域で育てるという目的でやってきた。お父さんお母さんも困ってて、子どもたちも混乱していたので、学童保育としては茨の道だけど、開くしかありません」

自作のゴジラを見せてくれました。
自作のゴジラを見せてくれました。

人ごとではない一斉休校の影響

我が家は共働きで3歳児を育てています。一斉休校の影響は直接ありませんが、お互いの両親は遠方に住んでいて、駆けつけてもらうとしたら飛行機を使わないといけないレベルです。

保育園の迎えはいつも一番最後(ごめんよ!)。もし、子どもが小学生だったら、間違いなく学童保育のお世話になっています。雨の日など、子どもが室内でエネルギーを有り余らせている様子を見ると、突然、家で見なければいけなくなった時、どうすればいいのか、途方に暮れてしまいます。

ライフスタイルが多様化する現代、子育ての形も一つではありません。公的な補助が届きにくい環境にある人たちの受け皿になっているのが、中山さんたちのような民間の施設です。

一斉休校は、子どもにとっても親にとっても、なくてはならない学童保育へのケアが十分ではない実態を浮かび上がらせました。

中山さんの言葉からは強い使命感を感じましたが、その使命感に頼り続けていいのでしょうか?

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