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新型コロナウイルスで逃亡犯が次々「御用」中国政府「封鎖」の収穫
世界中で新型コロナウイルスが広がる中、中国政府は、道の遮断、自宅隔離、住民への身分チェックなど厳しい対策を取ってきました。そんな中、ウイルスへの徹底的な姿勢は、思わぬ効果も生んでいます。中国メディアによると、37年間逃亡生活を送っていた逃亡犯が見つかるなど、千人以上が検挙されたと伝えています。新型コロナウイルスは、逃亡犯にとっても大きな脅威になったようです。
3月4日、「江蘇新聞」は、1人の逃亡犯が逮捕された記事を掲載しました。
上海に隣接する蘇州市昆山市。警察がスーパーを巡視していたときに、マスクのつけ方が正しくない男を注意しようとしたところ、緊張した様子を見せました。警察が身分証明書の提示を命じると、「身分証明書を忘れた。番号も覚えていない」と答えたことから、警察が監視カメラの映像をチェック。「小区=団地」のゲートではなく、壁を越えて出るという不審な行動が確認されました。調べた結果、窃盗容疑で逃走中の犯人であることが判明しました。
記事によると、男は隔離期間中はなるべく外出せず、ずっと隠れていましたが、生活用品などがなくなり、やむを得ずスーパーで買い物をしようとした際に、逮捕につながったと伝えています。
新型コロナウイルスの対策が厳しすぎて、警察に自首・出頭した逃走中の犯人もいます。
「アモイ日報」の報道によると、貴州省出身の男は、1995年に銃刀法違反の罪で9年間の実刑判決を受けましたが、2000年に、脱走しました。
20年間、各地で転々として、アルバイトをしながら生計を立てていましたが、新型コロナウイルスが感染拡大によって、人々の出入りが厳しくチェックされるようになります。特に、地元の人間ではない「外来人口」に対する身分や行動経路の確認が必須になり、地元住民も周りの見知らぬ人の情報を積極的に提供するようになりました。
こういう状況の中、男はアルバイトするどころか、部屋を借りることもできず、1カ月、野外で生活をすることになりました。春節の寒い季節に河辺や雑木林で寝泊まりをしていましたが、限界を感じ、警察に出頭しました。
中国メディア「紅星新聞」の統計によると、これまで、中国全土で警察に自首・出頭した人は13人に上ったそうです。
逃亡犯の検挙は、出稼ぎ労働者が多い省で増えているようです。
江蘇省警察庁は2月23日、江蘇省で481人の逃亡犯を検挙したと発表しました。
浙江新聞は2月28日、浙江省警察庁が678人の逃亡犯を検挙し、中には殺人容疑の3人も含まれていると伝えています。
新型コロナ感染防止期間に、これまで全国で殺人犯が30人捕まり、その多くが潜伏20年を超える逃亡犯でした。一番長いのは37年に及びました。
逃亡歴が最も長かったのは、1983年に畑仕事で口論になった隣人を殺したとされ、その後、海外に逃亡した雲南省出身の男です。これだけ長く隠れていたからもう周囲にバレることはないだろうと思って、今年、62歳になり故郷に戻った際、新型コロナウイルスの感染が拡大し、逃げ場を失い、そのまま逮捕につながりました。37年の逃亡生活にピリオドを打ちました。
新型コロナウイルスの感染拡大と逃亡犯の検挙には、徹底した身分チェックが関係しています。中国のSNSでは、思わぬ効果に様々なコメントが投稿されています。
「今回のチェック態勢は本当に厳しい。あらゆる人に対して、『あなたは誰?』『どこから来たの?』『どこへ行くの?』と哲学のテーゼ並みの質問を三つします。逃亡犯たちにとって、命取りになります」
「全国どこでも検問所が設けられ、体温もチェックされるし、身分もチェックされるし、どんな逃亡犯も逃げられませんよ」
「天網恢恢、疎にして漏らさず(天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕らえる)」
「今回は本当に厳しいですね。身分のチェック、各家庭ごとに住民の健康状態のチェック、さらに道路の閉鎖……逃亡犯の内心も:OMG(マジかよ!)」
「逃亡犯も食べ物やマスクを買わないといけない。結局、偽の身分証明書はすぐばれてしまうし、逃げ場を失ってしまう」
ウイルスの感染拡大を遮断するための中国政府が取った「封鎖」という手段は、経済へのダメージが大きく、やり過ぎと心配される声もあります。一方、感染者が急増するイタリアでも「封鎖」が実施されるなど、参考にされる事例も生まれています。
逃亡犯の検挙という「意外な収穫」は、中国以外でも広まるかもしれません。
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