連載
2世信者だった私が直面した息子の「下ネタ」 性の正しい伝え方
親なら誰もが通る道を歩く方法とは?

漫画家・たもさんは、親のすすめで宗教団体に入信した元「2世信者」です。幼い頃から性知識に触れることを禁じられてきました。しかし母親となった今、9歳の息子に、「下ネタブーム」が来てしまいました。たもさんに限らず、「性」について子どもにどう教えるべきか、悩む人は少なくありません。はたして、たもさんはどのように対処したのか? 自身の経験を描いたエッセー漫画から考えます。
わが子が性器の名を叫び始めた
「ちんこ!」「まんこ!」。男女の性器の名を無邪気に叫ぶ、小学4年の男の子「ちはる」。母親であるたもさんは、それを聞いて強い衝撃を受けます。
でも、頭ごなしには否定したくない……。悩むたもさん。なぜなら、過去に入信していたキリスト教系の宗教団体で、性に関わる話題を話さないよう言われてきたから。「知る」ことを許されない苦しみを、わが子に味わわせたくない、という思いが募ります。
そんなときに知ったのが、中高生の性的な疑問に対する、専門家のこんな答えでした。
「本人に悪気がなくても、性的な言動を受けた人が嫌だと思ったら、セクハラになります」
「『デブ』ってからかうのも、セクハラになるんだ」。サイトの解説文を読み、たもさんは自らの振る舞いを反省します。ちはるの体形について、小馬鹿にするような言葉をかけた経験があったのです。
そして、「聞いた人が嫌な思いをする」とちはるを諭しつつ、こう語るのでした。「もうおデブって言わないようにする。今までごめんね」


「親こそ学び直さないと」という気付き
たもさんは小学生の頃、母親の薦めで、宗教団体に入信。25年間所属しました。「清くあれ」という教団の方針によって、性にまつわる物事を禁じられてきたといいます。
今は信仰から距離を置いている、たもさん。大人になった今こそ、性知識について学び直せないか。息子が下ネタを口にしたことによって、そんな気持ちを強めたそうです。
「最初は、わが子の下ネタを止めさせることばかり考えていて、まさか大切な我が子にセクハラをしていたなんて思いもしませんでした。昔は誰もが当たり前にやっていた『容姿イジり』が、現在は受け入れられなくなっています」
「そのことについて『つまらない』『息苦しい』などと言っていると、いつか子どもも、悪気なく誰かを傷付けてしまうかもしれない。だから、まず親が意識をアップデートしていかなければならないと思いました」

知っておくべきこと、問いかけたい
親として知っておくべきについて、読者に問いかけたい。たもさんは今回の漫画に、そのような思いを込めたといいます。
「私はまともな性教育を受けていないので、誰かを教えるなんてことはできません。むしろ、教わりたい。誰よりも知識のない状態で、学んで得たことについて、みんなに『これで合ってますか?』と聞きたいです」
「それなら、私の特殊な人生経験も、無駄にはならないと思うんです」

【執筆協力・NPO法人「ピルコン」からのアドバイス】
成長するにつれ、放っておいても、大抵はこうした振る舞いはなくなっていきます。しかしここをチャンスと捉えて親子間できちんと会話すれば、自分の体や健康への興味に引き寄せたり、性を学ぶ対象とする意識へと導いたりすることもできます。
「水着を着たときに隠れる場所と口は『プライベートゾーン』と言って、命に関わるとても大切な場所だよ」
「性器についてちゃんと知ることは、自分の体を大切にする一歩。知りたいことはある?」
そのようにして、お子さんに話しかけてみてはいかがでしょうか。
また、下ネタや触れ合いについて「相手が嫌だと思うことをするのはいけない」「もしあなたが嫌だと感じることがあれば『やめて』と相手に伝えよう」と教えることも重要です。
すると子どもたちは、性にまつわる疑問を抱いたとき、信頼できる大人に尋ねるようになるはずです。大人が性について学び、きちんと語る力を身につけることは、とても大事であると言えるでしょう。

・NPO法人ピルコン:正しい性の知識と判断力を育む支援により、これからの世代が自分らしく生き、豊かな人間関係を築ける社会の実現を目指す非営利団体(公式サイトはこちら)。
宗教団体の元「2世信者」で漫画家の「たもさん」は、幼い頃から性的な話題を禁じられてきました。最近、思春期に差し掛かった息子の言動と向き合っています。下ネタブーム、好きな人との交わり方…どう正しい情報を伝えればいいの? 親なら誰もが抱えるであろう悩みについて、一緒に考えてみませんか? 隔週水曜日配信。(連載記事一覧はこちら)
※配信当初の記事中、特定の宗教団体に対する不適切な表現があったため、表現を一部修正しています。