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ふるさとの浙江省が「入国拒否」に その時、感じたショックと理解
2月11日、日本政府は、浙江省に滞在歴があったり、浙江省発行のパスポートを持っていたりする人を入国拒否の対象にすると発表しました。私は、浙江省出身で今、東京で働いています。異国で自分の故郷が入国拒否を告げられた時、どう思うのか。「浙江人」の気持ちを整理してました。
「入国拒否」の報道を知った時、やはりショックでした。
日本には15年間、住んでいますが、「浙江省」の存在はそれほど大きくなく、ニュースになることも多くはありませんでした。やっとニュースのトップになった時が「入国拒否」になるとは、思いも寄りませんでした。
現在、浙江省では他の中国の地域と同じように人々の移動が厳しく制限され、家族は基本「自宅隔離」の状態です。家族がすぐに来日できるとは思っていませんでしたが、明確に「入国拒否」と言われると、やはり悲しみが沸き上がります。
私のパスポートは浙江省ではなく、在日本の中国大使館が発行したものですが、実家に戻れば「浙江省の滞在歴」になります。帰省したら、日本に戻れなくなる。それは、私にとって二重のショックになりました。
ショックと同時に、日本で深刻さを増す新型コロナウィルスの猛威も感じています。
スーパーやドラッグストアなどからはマスクが消えました。中国に住む友人に頼まれて、薬局を回った時は、どの店も品切れ状態で「入荷未定」の貼り紙という状態でした。
銀座や築地を訪れる観光客の数も減っています。あちこちよく耳にしていた中国語も、少なくなりました。
東京は人口密度が高い都市です。満員電車は世界屈指の混みようですし、通勤時の人と人との距離も近い。感染に対するリスクは決して少なくないと感じています。
中国では、新型コロナウィルスという「敵」に対して「戦闘状態」になっています。1番の被災地、武漢には中国全土から応援が駆けつけています。
浙江省も患者数が4番目に多い「被災地」ですが、医療隊を武漢のある湖北省へ派遣し治療などを支援しています。
浙江大学付属病院の神経内科で医師をしている同級生も、医療隊への参加を志願しました。武漢へ行く準備はいつもできていると言います。地元の浙江省嘉善県にいる同級生たちも、公務員として地元を守る「防御戦」に参加している人が少なくありません。
日本では、中国に対する偏った意見に触れることがあります。
今年1月、駄菓子店に「中国人は入店禁止」の貼り紙が掲示されたニュースには、「差別だ」と一緒に怒ってくれる同僚もいました。
ただ、今回の「入国拒否」に対して意見を求められたら、私は「理解できます」と答えます。新型コロナウィルスの猛威は消えておらず、中国政府も日本を含む海外への団体旅行の禁止を発表しています。感染者数が多い浙江省の「入国拒否」は、日本に暮らす人たちにとって必要だと考えています。
もう一つ、理解できると言える理由は、「入国拒否」が中国人ではなくウイルスへの対策だと思えるからです。
今回、日本政府は早い段階で、中国へ救援物資を送りました。友好都市や関連団体も支援に動いています。物資には「応援する、そばに一緒にいる」という意味の漢詩が書かれ、中国のSNSでは、「日本、感謝」「恩を感じる」などの声が投稿されています。
浙江省の友人は、こう話してくれました。
「今回のことがおさまったら、また、日本に旅行へいきたい。日本の桜が見たいです」
困難を乗り越えた時、両国の結びつきが強まっていることを祈っています。
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