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ボランティアは満喫できる サウナにライブ、キャンプ場で考えた

見逃されがちな「なりわい支援」。相模原市津久井のキャンプ場「野呂ロッジ」の近くにある滝を視察するメンバー
見逃されがちな「なりわい支援」。相模原市津久井のキャンプ場「野呂ロッジ」の近くにある滝を視察するメンバー

目次

災害が起きるたび全国から集まるボランティアの貴重な力を、もっと「楽しく」いかすことができないか。アイドルのマネジャー、アウトドアの専門家でもある広告クリエーターらが、2019年の台風19号で被害を受けたキャンプ場で考えた。「散乱した石を使った手作りサウナ」「電気を使わないアイドルのライブ」。プロフェッショナルたちのアイデアが動きはじめている。(FUKKO DESIGN・木村充慶)

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ブレストに参加した「プロフェッショナル」たち

〈山田昌治〉YU-Mエンターテインメントの社長として、アップアップガールズ (2)=アプガ=などタレントのマネジメントに携わる。著者が東日本大震災後に宮城で行った音楽フェス「SENSEKI TRAIN FES」にも協力。台風19号ではタレントとともにボランティア活動をしたり、タレントの発信力を生かした復旧・復興支援に取り組んだりしている。

〈木原龍太郎〉日大探検部出身の広告クリエーター。ケービング(洞窟探検)のレスキュー資格保有者。沢登り、カヌー、野営など様々なアウトドアの専門家で、週末は山にこもる生活を送る。災害支援については未経験。

〈浦澤智布美〉イベント会社のプロデューサー。挑戦的なアイデアを具体的に進める際に必要なアドバイザーとして協力。

プロが集まり考えた「新しい支援の形」

災害が起きると、全国から一般のボランティアが集まることは珍しくなくなった。そこでは、被害のあった民家の復旧など、いわゆる「生活支援」が行われることが多いが、キャンプ場など商業地の復旧、いわゆる「生業(なりわい)支援」は後回しにされ、そもそも支援されないことも少なくない。

相模原市津久井のキャンプ場「野呂ロッジ」も、支援の枠組みから取り残され、いまだ復旧が進んでおらず、厳しい状況が続いている。

今回、「なりわい支援」につながる取り組みができないか考えるため、今までにない”新しい支援の形”を目指す「FUKKO NEW CHALLENGE」を、様々なジャンルのプロフェッショナルたちが立ち上げた。

相模原市津久井のキャンプ場「野呂ロッジ」
相模原市津久井のキャンプ場「野呂ロッジ」

楽しく満喫するには?

現場を見た上で生まれたポイントは三つ。

【楽しく片付ける】
いたるところに散乱した石を楽しく片付けることができないか。直火を生かしたサウナや石焼き料理にチャレンジできないか。

【秘境感を満喫する】
道志川流域のキャンプ場は奥まった谷底にあり、秘境感がある。被災して地盤などがむき出しになったことでさらにワイルド感が増した状況を逆に活用できないか。

【アイドルの生かし方】
アイドルの個性を生かした取り組みの可能性を考える。アートのようなモニュメントを一緒に作り、継続的な支援につなげることはできないか。

それぞれのポイントを踏まえて具体的な取り組みを考えた。

打ち合わせで生まれたアイデア
打ち合わせで生まれたアイデア

サウナを使った「新汗覚キャンプ」

<まず、提案されたのが「新汗覚キャンプ」>

 

木原

「こんな取り組みはどうでしょうか。名付けて『汗と笑いでフキ飛ばせ!!青野原新汗覚キャンプ』です」

 

木原

「最近、テントでサウナを行うのがキャンプ地ではやっていますが、そのようなサウナをみんなで自作するんです。サウナは熱した石に水をかけて水蒸気をつくるシンプルな原理です。河原にたくさん転がる石からみんなで適したものを拾ってサウナに利用します」

 

山田

「みんなで石をあつめるというのは楽しいですね。自作ということはテントもつくるのですか?」


 

木原

「はい、自作でつくるクラフトサウナです。ホームセンターで買ってきたもので組み立てます。熱を逃がさないように密閉した空間を作りますが、2カ所、頭を出せるような機構にします。テントを緑にし、頭が2カ所出ることで、外から見るとアリゲーターに見えるようにしました」

 

山田

「キャンプ場近くにある滝はすぐに行けるのに秘境感があって、とても面白かったです。参加者にはぜひ見てもらいたいので、サウナ用の水くみに行ってもらうのはいいですね」


 

木原

「ボランティアなので、しっかり労働してもらおうと思います。働いて、サウナに入って、しっかり汗をかく。寒いと思う人がいるかもしれませんが、逆に野呂ロッジの冬の新たな体験になるはずです」

石焼き使った焼き肉

<次に出てきたのが料理のアイデア>

 

木原

「まずは石焼きの焼き肉です。野呂ロッジは、全国でも珍しい直火ができるキャンプ場です。直火で石を焼き、その上で焼き肉をしたいと思います」

 

山田

「随分シンプルですね」


 

木原

「それだけで絶品です。私はキャンプの際、いつもそのように料理しています」

 

浦澤

「楽しそうですね。ちゃんと石を洗って消毒すれば、衛生面の心配もないでしょう」


 

木原

「あと、石焼き鍋も盛り上がります。できた鍋に、焼いた石をぶっ込みます。めちゃくちゃおいしいですよ」

 

山田

「たしかに、おいしそう」


 

木原

「野呂ロッジスタッフがつけているキムチがあるんですが、それを使った辛い鍋『青野原マグマ鍋』をつくりたいと思っています。サウナで外から発汗して、さらに体の中からも発汗しちゃおうという狙いです」

炎のアンプラグドLIVE

<アイドルのアップアップガールズが電気を使わない「炎のアンプラグドLIVE」をするという提案も話し合われた>
 

 

木原

「せっかくの秘境感がある場所なので、スピーカーではなく、生歌のアンプラグド形式がいいかなと思いました。あと、たくさん石があるので、石でステージも作りたいですね」

 

山田

「みんなで石のステージをつくるというのはいいですね」

 

浦澤

「石を積み重ねたステージだと不安定だから、砂地がいいですね。観客との間のところに石を並べるくらいが良さそうです」

イベントだけで終わらないアートプロジェクト

<さらに、イベントだけで終わらない取り組み「アドリブ!ワイルドアート」というアイデアも
 

 

木原

「野呂ロッジのオーナーの野呂正人さんがモニュメントを作りたいと言っていたので、みんなでアートを作るのはどうかなと思いました。周りには石や流木がたくさんあるので、それをみんなでつくれたらいいですね。あとは、落ちていた竹を使って、アプガのライブ用に竹とうろうを作るのはどうでしょうか」

 

山田

「これをライブで使えたらいいですね。1回のライブで終わるのではなく、その後の野呂ロッジの名物にもなったら、うれしいです」

イベントをマッチングサービスで募集

現在、それぞれのアイデアを形にしていくためのイベントも進行中だ。2月22日のイベントは支援してほしい人と支援したい人を直接つなぐマッチングサービス「スケット」で参加者を募った。

応募者からは「面白そう」「こんな視点のボランティアははじめて」などの反響が生まれている。

本来、ボランティアの人たちには、それぞれのバックグラウンドがあり、専門的な知識や技術を持っている人も少なくない。今回のような、現場の課題に根ざした具体的な企画があることで、様々なスキルを”なりわい支援”につなげられると考えている。

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