MENU CLOSE

ネットの話題

1804

薩長同盟「それほどじゃない」説 きょうは「ライバルが手を結ぶ日」

学校で学ぶ歴史にも、新しい見方が生まれています

(左)木戸孝允/(右)西郷隆盛像
(左)木戸孝允/(右)西郷隆盛像 出典: 朝日新聞

目次

1月21日は「ライバルが手を結ぶ日」です。これは慶応2年1月21日(1866年3月7日)、それまで敵対関係にあった薩摩藩と長州藩が「薩長同盟」を締結したことが由来となっています。いがみ合う者同士が、目的のために協力し合う展開にはいつもドラマがあり、こうした描写はさまざまな作品で人々の心を動かしてきました。ところが、元となった薩長同盟には新たな見方が生まれているのをご存じでしょうか。

「ライバルが手を結ぶ日」

「敵だと思っていたアイツが!?」。1月上旬にはTwitterで「#敵だったけど味方になる系で好きなキャラ」というハッシュタグがトレンド入りし、漫画「ONE PIECE」に登場する「サー・クロコダイル」や「鋼の錬金術師」の「グリード」などが話題となっていました。

2019年11月には、Yahoo!を展開するZホールディングスとLINEが経営統合を発表されるなど、経済界でも競合同士が手を組むというニュースがありました。
写真撮影に応じるZホールディングスの川辺健太郎社長(左)とLINEの出沢剛社長=2019年11月18日午後5時38分、東京都港区、嶋田達也撮影
写真撮影に応じるZホールディングスの川辺健太郎社長(左)とLINEの出沢剛社長=2019年11月18日午後5時38分、東京都港区、嶋田達也撮影 出典: 朝日新聞

ビジネスの世界は別としても、更なる大きな目的を果たすため、互いの敵対心に一度蓋をして力を合わせる展開に、胸を熱くする人たちも多いのではないでしょうか。

そんな姿を思い出させる「ライバルが手を結ぶ日」ですが、由来となったのは150年以上前の「薩長同盟」です。

相いれない薩摩藩と長州藩

幕末、敵対関係にあった、朝廷と幕府が協力する「公武合体」派の薩摩藩と、尊王攘夷派の長州藩。文久3年(1863年)に、薩摩藩は会津藩と手を組んで長州藩を京都から追放し、長州藩は翌年京都に攻め込むも敗退します。これにより長州藩は「朝廷の敵(朝敵)」とされ、藩の存続も危ぶまれる状況になりました。

ライバルどころか溝が深すぎる仲とも言える両藩ですが、坂本龍馬と中岡慎太郎が仲介し、薩摩藩の西郷隆盛と長州藩の木戸孝允が薩長同盟を締結。江戸幕府の倒幕に向けた出発点とされています。

歴史ドラマなどでは、朝敵の汚名を着せられて窮地に陥った長州藩を救うため、坂本が渋る西郷隆盛を説得して会談を実現。二大倒幕勢力がようやく手を結ぶ場面として描かれることが多い。
朝日新聞「薩長同盟、倒幕狙ってなかった? 龍馬の役割にも異説」(2016年9月4日)
「薩長同盟」が結ばれたとみられる地に立つ石碑=2018年、京都市上京区
「薩長同盟」が結ばれたとみられる地に立つ石碑=2018年、京都市上京区 出典: 朝日新聞

薩長同盟は2018年に放送されたNHK大河ドラマ「西郷どん」でも、視聴者の心に強く残るシーンとなりました。

「倒幕」が目的ではなかった?

しかし、現在では薩長同盟は「倒幕に向けた軍事同盟ではなかった」との見方も出ているようです。

この頃、朝敵とされた長州藩では、藩主の毛利敬親(たかちか)親子が官位の停止処分を受けていた。佛教大学の青山忠正教授(明治維新史)は「大名としての人格を否定されたに等しい。『官位回復のため、薩摩が朝廷に働きかけてほしい』というのが会談の主目的」とみる。(中略)「実態は毛利家当主の官位復活をめぐる覚書であり、倒幕を意図した軍事同盟などと言えるものではない『薩長盟約』『薩長の政治的提携』と呼ぶのが適切だと思います」
朝日新聞「薩長同盟、倒幕狙ってなかった? 龍馬の役割にも異説」(2016年9月4日)
事実、「同盟」という言葉は当時の一次史料のどこにもない。内容も薩摩がすべきことのみが列挙されており、長州の要望を薩摩が聞き入れただけのようにも読める。
朝日新聞「薩長同盟、倒幕狙ってなかった? 龍馬の役割にも異説」(2016年9月4日)
桂浜に立つ坂本龍馬像=2013年
桂浜に立つ坂本龍馬像=2013年 出典: 朝日新聞

また、「薩長同盟の仲介者」とされる坂本龍馬の立場も、「薩摩藩の利害を代弁するエージェント」だったというみられるといいます。

ただし、これまでの見方も支持されており、薩長同盟が明治維新に向かう時代の大きなターニングポイントであったことは間違いありません。

受験勉強で学ぶ歴史も…

受験勉強で学ぶ歴史は、暗記が中心になりがちですが、学問の世界では次々と新しい説が生まれています。

大河ドラマをはじめ、司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』などが、歴史の世界の魅力を気づかせてくれているのは事実です。一方、それらはあくまでフィクションの世界。最新の研究を調べてみると、実は、小説よりも手に汗握る事実が隠されていることも少なくありません。

世間では「過去は変わらないのだから、歴史は暗記ものだ」という印象が強い。受験勉強の名残だろうか。しかし歴史学界では新しい研究成果が不断に生み出され、通説は日々塗り替えられていく。作家や評論家がしたり顔で語る史論が、学界ではとっくの昔に否定された説に依拠していることも珍しくない。近代史においては、歴史像が更新されていくスピードが特に速い。司馬遼太郎の『坂の上の雲』や『この国のかたち』で理解が止まっている人が本書を読んだら驚くだろう。
朝日新聞「(書評)『天皇と軍隊の近代史』 加藤陽子〈著〉」(2020年1月11日)

誰もが知っている薩長同盟でさえ、今も、新しい発見が生まれていることは、逆に歴史の面白さなのかもしれません。

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます