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#44 #withyouインタビュー

「もっと、だらしなくていい」大森靖子さんが向き合う「生きづらさ」

大森靖子さん=瀬戸口翼撮影
大森靖子さん=瀬戸口翼撮影

目次

生きづらさについて歌詞にすることも多く、ファンから切実な悩みが綴られたメッセージが届くこともあるというシンガーソングライターの大森靖子さん。若者の生きづらさについて9月1日がピックアップされることが増えましたが、「悩みはグラデーション。急に生まれるものではなく、ずっとそこにあるもの」と話します。大森さんが考える「生きづらさ」と一緒に生きていく方法とは。

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いつもある気持ちがさばききれなくなる

――長期休み明け生きづらさに悩む子どもが増える「9月1日問題」が報じられるようになり数年が経ちました。
 9月1日は、新しい環境が始まるという意味で、プレッシャーですよね。
 でも、突然その日に悩みが生まれるのではなく、いつもある気持ちが、その日はさばききれなくなるという感じがあります。

 「生きづらい」という気持ちにはグラデーションがあって、日々感じる「これでいいのかな」「やりずらいな」「自分はこの社会に向いていないんだ」みたいな、切羽詰まっているだけじゃない感じのものもあります。
 だから、「生きづらい」って気持ちも、急にその日に生まれるものではなくて、「ごはん美味しい」と同じくらいベーシックなものだと思います。ずっとそこにあるものです。

〈おおもり・せいこ〉2014年、シングル曲「きゅるきゅる」でメジャーデビュー。戦慄かなのさんらがメンバーのアイドルユニット「ZOC」には、メンバー・プロデューサーとして「共犯者」の肩書で参加。2018年にはエッセイ集「超歌手」を刊行。
〈おおもり・せいこ〉
2014年、シングル曲「きゅるきゅる」でメジャーデビュー。戦慄かなのさんらがメンバーのアイドルユニット「ZOC」には、メンバー・プロデューサーとして「共犯者」の肩書で参加。2018年にはエッセイ集「超歌手」を刊行。

生きづらさの道のりを書いてみるといい

――常にある「生きづらさ」との付き合い方とは。
 「生きづらい」が生まれる道のりには、「元凶になる人」とか、原因がたくさんたくさんあるじゃないですか。でも「生きづらい」という結果だけみると、過程を見ずに爆発している感じがします。
 なるべく冷静なときに、生きづらさの道のりを書いてみるといいと思います。そこで見えてきた原因と離れるとか、一つずつ解決していけばいいんだと思います。

 「社会のせいで自分は生きづらい」ではなく、「こういう家族にうまれて、こういう地域性の中で育ったから」とか、そういうことを考えてみてほしいです。

 生きづらさの原因は社会にも絶対にあると思うけど、そこは「折り合い」です。どの居場所に行っても、生きづらさは絶対にあるので、折り合いのつけやすい場所をみつけてほしいです。
 そうすると、得意なこともわかってくるんですよね。

社会の方が絶対に正義というわけじゃない

――大森さん自身にも生きづらさはあるんですか。
 私自身、生きづらいですが、「生きづらさ」という単語は、こっちがつらくて負けみたいなイメージがあります。私自身はそういう気持ちで生きてきたことはないです。
 生きづらい性質だけど、できることは人より出来ると思って生きてきた。
「生きづらい=負け」ではなくて、社会の方が絶対に正義というわけでもないと強めに思えているから、生きてこられたんだと思います。

――たくましく生きているように見えます。
 私は希望と絶望をあまり分けていないんです。絶望できるということは、「生きて、絶望できる感性が自分にちゃんとあるんだ」ということだと思います。だから、「絶望、全然楽しいじゃん」という気持ちです。
 「生きる」の反対が「死」ではなくて、「死」は「生きる」の続きです。
 行く先が「死」なんだから、生きるという動作をいっこいっこ積んで、いい死を迎えるのが私の理想です。
 生きている限り、人はおいしいものを食べるとか、踊るとか、スケボーするとか何でもいいんだけど、「生きる」というしぐさを一個でも多く積み重ねているから良くなって行くに決まっていると思うんです。

大森靖子さん=瀬戸口翼撮影
大森靖子さん=瀬戸口翼撮影

あなたと私は違う。だから尊い

――生きづらさを抱える人に「寄り添う」ためには。
 私の場合は、音楽という媒介を作ればそれが働いてくれます。
聞いてくれる人と同じ時間に同じ気持ちにならなくても、聴く人の感情を詩なり曲なりにしていれば、タイムスリップしてそこにいけるのが音楽だと思っています。

――必ずしも同じタイミングに集い語る必要はないと
 「8月31日に集まろう」とかっていうのは結構きついと思うんですよ。
 気持ちを人と共有することも、話し合うことも大事です。
 でも「いいね」「わかる」「同じだ」となるのではなく、「わたしはこうですよ」と提示したときに、「あなたはそうなんだ、私とは違いますね。だから尊いですね」となることが美しいことだと思っています。

大森靖子さん=瀬戸口翼撮影
大森靖子さん=瀬戸口翼撮影

だらしない「生きよう」でいい

――「共感」だけの感情共有は違うのでしょうか。
 「自分の気持ちは自分の気持ちであって、誰にも譲らないもの」というのが、私的には平和だと思っています。
 そこをわかり合えたらラッキーだし、素晴らしいことだけど、まったく同じではないということを大前提に、いろんなことを話すのが大事だと思う。

 特性のある人が生きるのには合わない社会だと思います。発信するという意味では、「こういう特性のある人はこういう風に生きているよ」というようなデータをたくさん出す方が大事かな。
 「こういう気持ちになることはおかしくない」という意味での気持ちの共有はいいと思う。

――いままさに生きるのがしんどいとか、生きづらいとか思っている子たちにメッセージをお願いします。
 もっと、だらしない『生きよう」でもいいと思います。
 遮光カーテンを引くとか、夜に起きるのを直すとか、運動するとか、生きるための小さなコツはあるけど、「明るく、素晴らしく、健康的に生きて行こう」とは私は思っていない。
 もっと「ボーッとしている希望」とか、「つらいけれど普通の日々」とかで別にいいじゃんっていう考えです。
人間って、ダメな感情を持っている。それでも理性を持ってやり過ごしている。でもほんとうにだめな感情がひどい感情が魅力だしおもしろいと思う。

大森靖子さん=瀬戸口翼撮影
大森靖子さん=瀬戸口翼撮影

いろんな相談先があります

・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト
 

withnewsでは、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou ~きみとともに~」を続けています。
 


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