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お金と仕事

「好きなこと、仕事にできる?」 学生も若手社員も本音で語ったら…

自分の関心や価値観を紙に書いて意見を交わす会社員と学生
自分の関心や価値観を紙に書いて意見を交わす会社員と学生

目次

「この時間をつかって、年収とか会社の情報を聞こうとするのはもったいない。それは調べればわかることですので」。そんな言葉で始まるちょっと変わった就活を前にしたイベントが11月、開かれました。インターン・業界研究・自己分析……そんなセオリーに「ちょっと待った」をかける内容。学生と議論をしたのは大企業の若手・中堅社員です。価値観が多様化する中、社会に出る学生は何を大事にするべきか。参加者は「好きなこと、仕事にできる?」について考えました。

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ますは言語化すること

イベントを企画したのは、パナソニック、NTTグループ、トヨタ自動車など50企業の有志団体、1200人でつくる「ONE JAPAN」。今年3月に続き、11月23日、都内にあるホンダ本社の会議室を借りて2回目を開催しました。

「この時間をつかって、年収とか会社の情報を聞こうとするのはもったいない。それは調べればわかることですので」

メンバーの一人、電通で10〜20代の若者を対象にしたプロジェクト「電通若者研究部」などを手がける吉田将英さんは学生に向けて、そう呼びかけました。

働くことの意味について話す吉田将英さん(右端)
働くことの意味について話す吉田将英さん(右端)

「会社のことを調べてOB訪問し、何社もエントリーし、会社の求める人物像に合わせて、学生時代のエピソードを探して自分をこねくり回そうとしてしまう。そんな気持ち、私も分かります。でも、相手の好きなタイプに合わせようとすると、後で破綻が出てしまいます」

むしろ大切なことは「社会とどう関わりたいか、周りと関わることの意味を言語化すること」だと言います。 

「必勝法はありません。自分の言葉で頭で考えて関わることの意味を探ってください。自分なりの社会に出ることの意味の仮説をいっぱい持って帰ってください」

好きなこと、仕事にできる?

では、みんなは何のために働くのか。

吉田さんは社員と学生が交わす言葉のなかから、

1、誰かの幸せのために働くのか、自分のために働くのか
2、目標に向けて自分の力で達成しようとするのか、みんなの力を合わせて達成しようとするのか

この二つの軸で整理してみました。

すると、自分の力を使って社会に貢献するために働きたいという考えの人たち、会社のリソースを使って自分の目標を実現したい人たちなど、働くことは同じでも様々な目的や手段を持つ人たちがいることが見えてきました。

吉田さんがまとめた類型パターン
吉田さんがまとめた類型パターン

次第に共通の価値観を持つ者同士が集まり、話し合いが続きます。「身近な人たちを幸せにできる仕事とは?」「やりたい仕事はどうやって見つけるの?」「ビジネスを通じてどうやって社会貢献につなげるの?」……。

あるテーブルの議題は「好きなことを仕事にするべきかどうか」でした。

学習院大1年の上原楓さん(18)は自分の好きなことを将来の仕事に生かしたいと考えました。上原さんは平均で週2回は東京ディズニーランドなどに通う大ファンだそうです。

好きの理由を自分のなかで分析すると「みんながディズニーの世界観に入り込めるような徹底したこだわり」でした。

シンデレラ城が実物より大きく見えるよう、石垣などが上に行くほどだんだん小さく作っていたり、いろんなところに丸が3つ並んだ「隠れミッキー」を配置していたりと、来園者を楽しませようとする工夫が随所にあります。そして、何よりキャスト(従業員)だけでなく来園者も一緒になって、ごみの落ちていない、楽しい場を作ろうとする雰囲気がとくに好きなのだと言います。

「今は趣味の『好き』ですが、仕事の『好き』に広げていくことで、みんながわくわくする仕事につなげられるかもしれません」

参加者の話を聞く上原さん(左から2番目)
参加者の話を聞く上原さん(左から2番目)

まずは突き進んでみては?という助言も

一方で、法政大3年の畑谷和毅さん(21)には迷いがありました。

スポーツが好きで「現地観戦の代替でない、新しいスポーツ中継を目指したい」と、メディア業界への就職を希望していますが、「好きなものを仕事にしても本当にいつまでも好きでいられるのか、社会に役立つ『やるべきこと』につなげられるのか」とも考えていました。

この悩みに、ONE JAPANのメンバーで日揮ホールディングスの人事を担当している寺田唯さん(29)は「まずは好きなことに向けて突き進んでみては?」と話しました。

寺田さんは、エンジニアとして入社し、現在は人事を担当しています。エンジニアとして悩んだこともありましたが、人事担当に異動し、改めてこれまでの仕事を見つめ直すと「こんなに面白い仕事だったのか」と再発見があったそうです。

「好きなことを仕事にして途中で行き詰まると、好きではなくなったかも……と感じることがあるかもしれません。そんなときは、少し環境を変えてみてはどうでしょう。環境が変わればまた新たな好きな側面が見えてきて、やっぱりこの仕事が好きだったんだな、って実感できるかもしれません」

いろんな人と意見を交わした畑谷さんは記者に対し、メールで次のように答えました。

「仕事を通じて好きでいられ続けるかは、わからないという結論でした。しかし、どうなるか予測不能の未来を憂うよりも、今の自分に正直に、今の自分を大切に生きようと思います」

集まった参加者たち
集まった参加者たち

企業を選ぶ理由は「仕事内容」「労働時間」「給与水準」……

一方、学生たちが就職先を選ぶときに何を重視しているのでしょうか。ウェブのアンケートの回答を調べてみました。

人材派遣業のパソナグループの「パソナ総合研究所」(所長:竹中平蔵)が9~10月、これから就活に臨む大学生と大学院生にウェブでアンケートを実施したところ、407人から回答が寄せられました。

就職する企業を選ぶときのポイントについて、10個の選択肢から、2つを選んでもらったところ、まず「仕事の内容」と答えた学生が半数を占めました。次いで多かった回答は「労働時間・休暇」で、女性の回答率が約4割、男性が約2割が選びました。その次に給与水準、企業の成長性、安定性と続きました。

ワークライフバランスが大切にされるなか、就職先を決める上で待遇についてきちんと調べ、確認することは重要です。ただし、それと同じくらい「そもそも私は何のために働くのか」について考える機会をつくることは今後ますます必要になりそうです。

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