話題
サウナフェスが壊した「おじさん」イメージ まだまだ成長過程の理由
日本最大級のサウナイベント「SAUNA FES JAPAN 2019」が9月21日~23日に開催されました。会場は長野県・小海町の松原湖畔にあるフィンランドヴィレッジ。昨年は3月の開催でしたが、今年は夏の終わりに会期が変更され、開催期間も3日間に延長。1日に200人、計600人のサウナー(サウナを愛し、楽しむ人)たちが参加しました。
会場に用意されたサウナはなんと計19個。フィンランドヴィレッジに備え付けのサウナに加え、様々な大きさのテントサウナや、車を改造した移動式サウナもあります。どのサウナも入り放題。心ゆくまでサウナを楽しむことができる3日間。まさに「日本最大級」のサウナイベントと言えます。
昨年から規模も内容も大きく進化したサウナフェス。それを仕掛けたのが「SAUNA FES JAPAN 2019」のプロデューサー、「サウナ師匠」こと秋山大輔さんです。
――どういう経緯でこのイベントに参加されることになったのですか?
サウナ大使のタナカカツキさん(マンガ家。サウナーのバイブル「サ道」の作者)から電話があって、「サウナフェスは今まではFSC(フィンランドサウナクラブ「フィンランドの伝統的サウナ文化を継承しサウナの本質的価値を追求する」ことを目的としたサウナ団体)が運営してきたが、プロに運営をお願いしたい。次の世代を中心に運営をして欲しい」とお話がありました。
もともとイベントのプロデュースが本職なので、今回プロデューサーとして参加することになりました。
――具体的に運営するにあたってどのような話をされたのですか?
まずイベントのテーマやコンセプトを提案させていただきました。その際、裏テーマを「ONE」としました。
タナカカツキさんを始めとする「レジェンドサウナー」たちはいわばサウナ「第一世代」。そう考えると、僕らTTNEなどは「第二世代」だと思うんです。そうした「第二世代」には様々な形でサウナに関わる活動をしている人たちがいますが、一緒にイベントをやる機会は無かった。上と下の世代ならなおさらです。ならば、平成から令和に変わったこのタイミングで一つになれたらいいな、と思いました。
フェスを通して一つになれる、そんなコンセプトのイベントにしたらどうですか、と提案したところ「めっちゃいいじゃん」と言っていただけまして。そこから各団体にアプローチしたんです。
――計25のサウナブランドや関連団体が参加しているとのことですが、どのように企画を進められたのですか?
実行委員会を作り1ヶ月に2回ほど集まって会議をしました。
話の核になる部分はある程度決めつつ、「サウナ飯どうする?」「サウナの数どうする?」「ステージのコンテンツどうする?」といったような話について、各団体の皆さんに意見を聞きながら固めていきました。
――開催時期も変わりましたね
僕が企画に入った時、既に時期の変更だけは決まっていました。ただその時点では2日間での開催予定でした。僕としてはできるだけ長い期間を、と考えていたので3連休での3日間開催に変更しました。
昨年までの会期だと冬景色になってしまうのですが、今年のように緑の中で湖に入ったり、自然と戯れてもらいたかったんです。
――今回、サウナフェスをプロデュースする上で何か気をつけた点はありますか?
「サウナ初心者を大事にしたい」と思っていました。
昨年までは申し込みが先着順だったこともあり、サウナ玄人だけで盛り上がる身内の「オフ会」のような側面もあったと思います。「サウナのことはあまり分からないけど、楽しそうなので来てみました」くらいの気持ちで参加できるようなイベントにしたかったんです。今では参加者の半分くらいが女性ですし。
――このイベントではサウナ「第一世代」と「第二世代」が集合しましたが、さらにその下の世代も出てきそうですよね?
サウナは「おじさんのもの」とか「我慢するもの」と言われてました。そんな閉鎖的なイメージがある中、タナカカツキさんたちFSCは「本当のサウナを知って欲しい」と情報発信を努力されていた。その影響で「第二世代」がボコボコと生まれたのだと思います。さらに今後は孫世代、サウナ「第三世代」が重要です。
僕が今40歳。タナカカツキさんたちの世代が50代。今では30代、20代がサウナを楽しんでいます。この「第三世代」がぐっと育つと、サウナが一瞬のムーブメントで終わらず、カルチャーとして育っていくと思います。サウナを一過性のブームにしない為にも、様々あるサウナ団体が潰しあってしまうのではなく、力を寄せ合って本当に大きなものを作り、サウナの魅力を伝えていく。
今はそんなタイミング、日本におけるサウナの転換期に来ているのだと思います。
――サウナについて日々様々なメディアで取り上げられています。なぜこんなにも盛り上がっているのでしょうか?
予約も道具もいらない、性別も年齢も関係ない。そんな「手軽さ」があるのだと思います。僕は世界中を旅していますが、日本のように温浴施設だらけの国はありません。サウナの数ではフィンランドが一番ですが、ほとんどはプライベートサウナ。日本はちょっと歩けば銭湯がある。パブリックサウナの数は日本がダントツです。
だからサウナには入ったことはあるけれど、ちゃんとした入り方を知らなかったり、フィンランド式サウナに入ったことがない……。そんな土壌があった中で、サウナにも様々なスタイルが出てきました。アウトドアサウナ、テントサウナ、デザイン的に凝ったサウナ。多種多様なニーズに対応できるサウナが出てきた。
「これなら自分も楽しめるかも」というポイントが見つかるようになったのではないでしょうか。ビール好きな人がサウナにハマる、海好きな人がサウナにハマる。サウナはそんな掛け算がしやすいのだと思います。
――来年以降、サウナフェスはどのようになっていくのでしょうか?
来年もこの場所でサウナフェスをやろうとは思っています。でも、それとは別にもっと広い場所、例えばキャンプ場とかで2000人〜3000人規模のスピンアウト企画をやってもいいのかな、とも思います。アーティストのライブなど、さらにフェスの要素を追加してもいい。このイベント自体がまだ成長過程にあるので、いきなりは難しいとは思いますが。
いずれにしろフィンランドサウナに触れる人が増えれば良いなと思います。もしかしたらこのコンテンツが地方創生や観光につながるかもしれません。「サウナフェスを招致したい」と手をあげてくれる所があったら良いですね。
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サウナの楽しみ方を世に広めたサウナ「第一世代」の思いを受け継だ「第二世代」。「SAUNA FES JAPAN 2019」には様々な形でサウナの楽しさを進化させている彼らの思いがたっぷり詰まっていました。
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