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サカナクション山口一郎「音源とライブ以外の場を」 業界への違和感
サカナクション・山口一郎さんが発起人のプロジェクト「NF」が手がけるサウンド・インスタレーション「ROOF TOP ORCHESTRA -音を奏でる庭園-」が東京・銀座の「GINZA SIX」屋上庭園で10月31日まで開催されています。バンド活動で多くの支持を集めながら、空間芸術の分野も積極的に手がける山口さん。「音源とライブ以外の表現の場を拡張していきたい」と語る裏側には、ミュージシャンとして抱える音楽業界への「違和感」がありました。
地上約56メートル、銀座最大の面積という屋上庭園。水盤エリアと芝生エリアに分かれ、六面体のモニュメントとそれを小編成オーケストラが囲うように光の柱が置かれています。
この銀座の空中オーケストラは、日没とともに始まります。六つあるモニュメントを打楽器のようにたたくと、連動して音と光が発生。複数の来場者がたたくことで、共鳴し合い、空間全体で音楽を奏でる体験ができます。モニュメントの面によっても音が異なり、計36種類の音色と光を「演奏」できます。
また、30分に1回、特別演出を実施。オーケストラが演奏前に一斉に調律をするように、音と光が会場全体を包みます。
「音楽のみならずファッションやアート、テクノロジーなどさまざまな分野を取り上げ、音楽に関わる音楽以外の新しいかたち」を掲げるNF。同名のイベントはライブハウスなどで4年前から始まり、ライブ・DJだけではなくワークショップやインスタレーション、トークセッションなどを行ってきました。
山口さんによると、作品やイベントに取り組むときには、大きなコンセプトを山口さんが立て、そこからチームで案を練るようにしています。「今回も、銀座の歴史やGINZA SIXの屋上庭園のリサーチから始めて、コンセプトや具体的なアウトプット、現場での調整まで、細かくディスカッションを重ねていきました」と山口さん。
来場者が「演奏者」になれるインタラクティブな設計については、「サカナクションとしてライブをしたり、NFでDJプレイをしたりしているときの、『音で他人の気分に影響を与えるという感覚』を味わってもらいたいと思い、こういった形での作品になりました」とコメントしました。
NFでは、音楽を土台にしたライブイベントだけではなく、今回のように空間をベースにした作品も数多く手がけています。その両者とも「音楽の表現」と語る山口さん。サカナクション以外にも「NF」を立ち上げ、曲作りやライブとは別のフィールドに挑戦する理由をこう語ります。
「ミュージシャンは、ライブをすることと音源を作ることしか表現の場がありません。時代はどんどんアップデートされているのに、表現する場所が増えていないことに違和感を感じています。僕は職業がミュージシャンで、このインスタレーションも一つの作品として考えています。こういった取り組みをすることで、ミュージシャンが色々なかたちで表現をする場所を増やしていきたい。そんな大義のもとに活動しています」
長く身を置く業界への危機感から、新たな表現の模索を続ける山口さん。しかし、ベースにあるのは、これまでのキャリアで培ってきた音楽への思いです。
「ライブの演出と、空間をつくるということでは一緒。音楽は匂いと一緒で目で見えない、手で触れられない。その分、人の心に触れるものです。そこにはまだまだ、表現する場所があると思う」
「機会をいただけるのであれば、インタラクティブなものに限らず、やってみたいことはたくさんあります。NFでの活動を通じて、 ミュージシャンにとって、 CD発売とライブ以外の表現の場を拡張していきたいと思っています」
最後に、山口さんが語った、インスタレーションを楽しむポイントを紹介します。
「時間帯によって見え方、感じ方が違う空間になっているので、その感覚を皆さんに体験していただけたら。僕らとしてもLEDの光り方や音については、細かいディテールを詰めてGINZA SIXの屋上庭園の中でしっかりと演出できるよう作り込んできました。10月31日まで開催しているので、これからもアップデートしていけたらと思っています」
<ROOF TOP ORCHESTRA>
GINZA SIX屋上の「GINZA SIX ガーデン」で日没から午後11時まで開かれています。入場無料で10月31日まで。詳細はホームページに掲載されています。
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