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連休、家に閉じこもる自分を責めてしまう……「寝ていたっていい」
令和となって3日です。デパートでは「改元セール」が開かれ、メディアも「令和」「レイワ」「れいわ」と報じています。一方で、家に閉じこもり、連休の盛り上がりに距離を置いてしまう人もいます。自身も過去に衝動的な行動をしたことがあり、これまで600人以上の悩みに向き合ってきたトランスジェンダーのモカさんは「うまく付き合っていく、という考え方もあります」とアドバイスします。(朝日新聞記者・高野真吾)
〈令和に浮かれられない、専業主婦 山田明菜さん(28、仮名)〉(モカさんに寄せられた複数の相談者の事例を組み合わせています。記事の最後に相談窓口があります)
山田さんは、関西方面のとある街に暮らして2年目になります。独身時代は東京の金融機関でバリバリ働いていました。結婚後、配偶者が大阪に転勤になったため、「別居婚」を避けたい彼の意向で、一緒に引っ越しました。
「妊活」を優先したため、仕事には就きませんでした。時間があるため、通信教育で簿記の勉強を始めました。
しかし、関西方面には知り合いもほとんどなく、図書館で勉強していても寂しさが募るばかり。彼の帰宅も平日は深夜で、土日はぐったりしています。愚痴を言いたくても、話しかけにくい状態でした。
今年に入ってからふさぎ込むことが増えました。料理をすることが面倒になりました。掃除をしないので、部屋が散らかります。簿記の勉強も続けられなくなりました。
電話で話した実母の勧めに従い、精神科を受診すると鬱状態と指摘されました。
「旦那に迷惑をかけている」「簿記も勉強しなきゃ」と焦りが募ります。「早く鬱状態を脱したい」と願っていますが、定期的に精神科に通っても、良くなっている自覚を持てません。
まずは、私自身の経験から話しましょう。私は20代の頃、長く躁鬱病を患ってきました。
一時期は、東京近郊のある大学病院に通っていました。落ち込み気味だった時は、母に付き添ってもらい2人で電車に乗って行き来しました。
お医者さんと話し、複数の薬を処方されました。あくまで私の場合ですが、薬が効果を発揮していると思える時と、そうでない時が両方ありました。
鬱状態を脱するとは、心の平静を取り戻すという、目に見えない、心の問題に対処することになります。
明確ではない分、治療が難しい面があります。私も病院に通いながらも、良くなっているのか悪くなっているのか、疑心暗鬼になった時もありました。
今の私も完全に躁鬱病から離れたとは、言い切れません。心に波があり、沈む時期を迎えることもあるからです。
それでも、以前ほど、振り回されなくなっています。
それは、自分のそうした特徴を嫌悪するのでなく、受け入れているからです。治すことだけにとらわれず、うまく付き合っていくようにしています。
過去に私が一番しんどい時は、ベッドで寝ているだけになりました。しかし、気力が湧いてくると、料理をしてご飯を食べ、部屋の掃除もできるようになりました。
すぐに外で活動する気にはならなかったのですが、室内にいる時間を好きな漫画を書くことに使いました。時間はたくさんあるので、色々な表現方法を模索できます。
また、経営のことを考える時間にあてました。どこに何の需要があるのか。単なる消費者マーケティングに頼らない、目に見えない需要を捉えようとしました。
活発に外に出て活動することだけが、重要なわけではありません。
のんびり、マイペースに過ごしていく人生もありと考えてみるのはどうでしょうか。
◇
モカ、1986年3月、東京生まれの元男性。トランスジェンダーとして、東京・新宿2丁目を中心に複数の飲食店などを経営する。29歳の時、自殺しようとマンション屋上から飛び降りたものの、奇跡的に生還。現在は、電話や対面で生きづらい人やLGBT当事者の人生相談に乗る活動を続けている。自身の半生を題材に、描き下ろし漫画を含む書籍『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社新書)を4月に発売。
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