MENU CLOSE

話題

連休、家に閉じこもる自分を責めてしまう……「寝ていたっていい」

相談者の悩みに答えるトランスジェンダーのモカさん=モカさん提供
相談者の悩みに答えるトランスジェンダーのモカさん=モカさん提供

目次

 令和となって3日です。デパートでは「改元セール」が開かれ、メディアも「令和」「レイワ」「れいわ」と報じています。一方で、家に閉じこもり、連休の盛り上がりに距離を置いてしまう人もいます。自身も過去に衝動的な行動をしたことがあり、これまで600人以上の悩みに向き合ってきたトランスジェンダーのモカさんは「うまく付き合っていく、という考え方もあります」とアドバイスします。(朝日新聞記者・高野真吾)

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格
過去の衝撃的な体験や哲学的思考を重ねた結果の言葉は、相談者たちに受け入れられている=モカさん提供
過去の衝撃的な体験や哲学的思考を重ねた結果の言葉は、相談者たちに受け入れられている=モカさん提供
【関連記事】「10連休」生きづらさを感じるあなたへ……「私のトリセツ」を持とう
【関連記事】連休明けが怖いあなたへ……「割り切って好きなこと」という選択

相談者〈ふさぎ込むこと増え〉

 〈令和に浮かれられない、専業主婦 山田明菜さん(28、仮名)〉(モカさんに寄せられた複数の相談者の事例を組み合わせています。記事の最後に相談窓口があります)

 山田さんは、関西方面のとある街に暮らして2年目になります。独身時代は東京の金融機関でバリバリ働いていました。結婚後、配偶者が大阪に転勤になったため、「別居婚」を避けたい彼の意向で、一緒に引っ越しました。

 「妊活」を優先したため、仕事には就きませんでした。時間があるため、通信教育で簿記の勉強を始めました。

 しかし、関西方面には知り合いもほとんどなく、図書館で勉強していても寂しさが募るばかり。彼の帰宅も平日は深夜で、土日はぐったりしています。愚痴を言いたくても、話しかけにくい状態でした。

 今年に入ってからふさぎ込むことが増えました。料理をすることが面倒になりました。掃除をしないので、部屋が散らかります。簿記の勉強も続けられなくなりました。

 電話で話した実母の勧めに従い、精神科を受診すると鬱状態と指摘されました。

 「旦那に迷惑をかけている」「簿記も勉強しなきゃ」と焦りが募ります。「早く鬱状態を脱したい」と願っていますが、定期的に精神科に通っても、良くなっている自覚を持てません。

モカさんは「お悩み相談カード」をつくり配布している=モカさん提供
モカさんは「お悩み相談カード」をつくり配布している=モカさん提供

モカさんの回答は……

 まずは、私自身の経験から話しましょう。私は20代の頃、長く躁鬱病を患ってきました。

 一時期は、東京近郊のある大学病院に通っていました。落ち込み気味だった時は、母に付き添ってもらい2人で電車に乗って行き来しました。

 お医者さんと話し、複数の薬を処方されました。あくまで私の場合ですが、薬が効果を発揮していると思える時と、そうでない時が両方ありました。

モカさんのメッセージは新聞紙面に掲載されたこともある=モカさん提供
モカさんのメッセージは新聞紙面に掲載されたこともある=モカさん提供

うまく付き合おう

 鬱状態を脱するとは、心の平静を取り戻すという、目に見えない、心の問題に対処することになります。

 明確ではない分、治療が難しい面があります。私も病院に通いながらも、良くなっているのか悪くなっているのか、疑心暗鬼になった時もありました。

 今の私も完全に躁鬱病から離れたとは、言い切れません。心に波があり、沈む時期を迎えることもあるからです。

 それでも、以前ほど、振り回されなくなっています。

 それは、自分のそうした特徴を嫌悪するのでなく、受け入れているからです。治すことだけにとらわれず、うまく付き合っていくようにしています。

モカさんが開く会には、生きづらさを抱える多くの男女が集う=モカさん提供
モカさんが開く会には、生きづらさを抱える多くの男女が集う=モカさん提供

寝ているだけを経て

 過去に私が一番しんどい時は、ベッドで寝ているだけになりました。しかし、気力が湧いてくると、料理をしてご飯を食べ、部屋の掃除もできるようになりました。

 すぐに外で活動する気にはならなかったのですが、室内にいる時間を好きな漫画を書くことに使いました。時間はたくさんあるので、色々な表現方法を模索できます。

 また、経営のことを考える時間にあてました。どこに何の需要があるのか。単なる消費者マーケティングに頼らない、目に見えない需要を捉えようとしました。

モカさんは漫画本を出版し、サイン会をしたこともある=モカさん提供
モカさんは漫画本を出版し、サイン会をしたこともある=モカさん提供

のんびり人生もあり

 活発に外に出て活動することだけが、重要なわけではありません。

 のんびり、マイペースに過ごしていく人生もありと考えてみるのはどうでしょうか。

      ◇

モカ、1986年3月、東京生まれの元男性。トランスジェンダーとして、東京・新宿2丁目を中心に複数の飲食店などを経営する。29歳の時、自殺しようとマンション屋上から飛び降りたものの、奇跡的に生還。現在は、電話や対面で生きづらい人やLGBT当事者の人生相談に乗る活動を続けている。自身の半生を題材に、描き下ろし漫画を含む書籍『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社新書)を4月に発売。

4月に発売された、モカさんの半生を描いた『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社新書)

5月8日、新宿・紀伊国屋書店で出版記念イベント

 モカさんが登壇する出版記念のトーク&サイン会が東京・紀伊国屋書店新宿本店で5月8日(水)午後7時~開かれます。参加するには、同店で『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』を購入し、整理券(先着30人)をもらう必要があります。
 
 詳しくは同店HPまで。
 

相談窓口はこちら

■24時間こどもSOSダイヤル
0120-0-78310

     ◇

■こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm

     ◇

■いのち支える窓口一覧
http://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます