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埼玉の印象は「さ」のせい? フォントをイケメン化、衝撃の結果に…

「翔んで埼玉」(イラストはいずれも懸谷直弓)
「翔んで埼玉」(イラストはいずれも懸谷直弓)

目次

映画「翔んで埼玉」が人気です。ネットでは賛否両論、渦巻いていますが、人生の多くを埼玉で過ごし、今も埼玉県川口市にアトリエがある私にとって、これまで「埼玉ネタ」は自慢できることがほぼありませんでした。「さいたまの『さ』がアホっぽいのでは??」「コバトンのデザインって……」。1人のアーティストとしてこの映画を見ながら、埼玉のネガティブさの原因を考えてみました。 (懸谷直弓)

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「翔んで埼玉」観てきました
「翔んで埼玉」観てきました

ディスってほしい、ディスってほしい・・・

私は、さいたま市内の公立中学校、日本一小さい蕨市の県立蕨高校を卒業。その後、1年次は入間市にキャンパスがある大妻女子大へと進学しました。生粋の埼玉県人ですが、映画を観る前から「どうか面白いものであってくれ」と願っていました。自分の中では、埼玉で過ごした日々が暗黒期だったからです。海が近かったら叫んだり、花火していたりしたかもしれない。でも、そんなこともせず、ぬるま湯につかり続けていた時期で、さいたまという土地がまるで闇のフィールドとしか思えませんでした。。。26歳で再入学した東京芸大の先端芸術表現科を昨年卒業しましたが、芸大に入るまでは丸の内の銀行に勤めて、ひたすら東京民を装っていました。

懸谷直弓のこれまでの歩み
懸谷直弓のこれまでの歩み

映画の冒頭での印象は、埼玉県人がとことん迫害されすぎてかわいそうってことでした。砂漠のように荒れた土地、ボロボロの衣服、家・・・かわいそうすぎる。そんなに埼玉って嫌われ者なのかなぁ。(笑)ただ、ディスられても深刻さが薄くて、笑いの表現として受け取れるのは「埼玉」だからかな、と。そうか、受容力高いってことか!埼玉のちょっと良いところを見つけました。

ところが、観ていくうちに印象が変わっていきました。

強烈にディスられる土地ほど、なんだか誇らしくなってくるんです。映画でディス対象に選ばれたい、ディスってほしいというような謎の逆転現象が脳内で起きました。ちなみに私は所沢生まれなので、GACKTが演じる麗が「所沢に行く」と言い、二階堂ふみさんが演じる百美がうろたえるシーンなんか、なぜか嬉しかった。もちろん、だからといって実際の所沢について自慢できるところが増えたわけではないのですが……

激しくディスってほしいと思う私
激しくディスってほしいと思う私

「さ」がアホっぽい?? 格好良くしてみると…

ご存じの通り、この映画では埼玉が随所でネタにされます。中でも気になったのは、東京都内で埼玉県出身者を取り締まるSAT(埼玉急襲部隊)が装置で埼玉県人を見つけた時に浮かび上がる「さ」、サイタマラリアにかかると肌にあらわれる「さ」、エンディングでも街中に広がっていく「さ」・・・・・・

そして、思い出したんです。

「『さ』の字、とにかくあほっぽくない?」ということを。

「さ」の字って、なんだかダサくないですか・・・?
「さ」の字って、なんだかダサくないですか・・・?

私、実は中学生時代から思っていたんです。「さいたま市」がなぜ平仮名なんだろう、と。年賀状を書く時、住所の字面のあほっぽさを毎回感じてたし、いくら達筆で書いても若干のかっこ悪さが残る。誰が得するんだろう、っていまでも思うんです。

「さ」の字がなぜあほっぽいのか、私なりに分析してみました。すると、「シミュラクラ現象」が原因なのでは、ということにたどり着きました。

ニヤーっとする「さ」とポケーっとする「さ」
ニヤーっとする「さ」とポケーっとする「さ」

シミュラクラ現象とは「三つの点が集まった図形を見ると人の顔に見える」という錯覚です。この影響で、さの字はあほっぽい人の顔に見えてしまうからではないか、と考えたのです。

「さ」の字を麗のようにイケメンに変換してみると・・・
「さ」の字を麗のようにイケメンに変換してみると・・・

ならば、「さ」を一旦イケメン化させてから平仮名に戻していけば、カッコいい「さ」が出来上がるのではないか。つくってみることにしました。すると・・・

「さ」をイケメンにしようとした結果・・・
「さ」をイケメンにしようとした結果・・・


「さ」は「き」になってしまいました。

実験してわかった「コバトン優秀説」

麗が埼玉各地から召集をかけたシーンで浦和と大宮の言い争うシーンも期待通りでした。知らない人から見たら似た者同士のバトルのように思われるかもしれないけれど、実際浦和と大宮の特性は全然違うんだよなぁと。浦和は年齢層高めで、リッチな雰囲気のおじさまおばさまが多く、伊勢丹が人気。一方、大宮は若者が多く、飲み屋も多いから昼夜賑わって活気がある。擬人化したらまあ、浦和が落ち着いたお姉さまで、大宮はエネルギッシュな少女と言ったイメージ。こんな感じで埼玉を擬人化したら面白いねーと思ったら、既に描いてる人いっぱいいました。

浦和と大宮を擬人化してみた
浦和と大宮を擬人化してみた

そもそも、幼少期に岡山に住んでいた私は、岡山生まれだとずっと思っていました。小学4年生の時、学校の課題で、自分の母子手帳を見て生い立ちを調べるというものがありました。そこで初めて埼玉の所沢生まれだということが分かった時、心の底からショックを受けたことは忘れられません。所沢ってどこだよって。所沢ってどんなところ?と母に聞いたけれど、何て答えてくれたか1ミリも思い出せないから、所沢について説明できる適切なネタがなかったのだと思います。学校で母子手帳を友人と見せ合った時、なんか負け感があったあの心境はいまも忘れられない。岡山生まれの弟が羨ましい。

母子手帳をドローしたときの私
母子手帳をドローしたときの私

と、ここまで映画に乗って埼玉自虐に走っていった私ですが、最後に、あいつのことに触れておきます。コバトンです。

正直、最初はコバトンのキャラデザインの、ワードの図形ツールで作ったような、ちょいダサ感を受けていました。なので、もっとシュッとさせられないかと実験してみたのです。くまモンのようにアウトラインをなくしてみたり、靴を脱がせてより鳥に近づけてみたり。でも、なんかうまくいかない。思った以上に優秀なデザインなんだなあ、と感心しました。

コバトンって、実は優秀なキャラデザインなんです
コバトンって、実は優秀なキャラデザインなんです

埼玉愛があるかというと、そうでもない。でも、ずっと愛していきたい。考えてみたら故郷って、それくらいの距離感がいいのかもしれません。そんな思いをあらためて感じさせてくれる映画でした。

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