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連載

#33 夜廻り猫

「あなたの押しつけ、もう耐えられない」夜廻り猫が描く新生活

目次

 上京して入った大学バレー部の寮は2人部屋。朝ごはんも外出する時も、いつもルームメートと行動をともにして、自分は「楽しかったつもり」だったけれど……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「新生活」を描きました。

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寮のルームメート「悪いけど部屋変えてもらう」

ひとりでベンチに座り込む女の子。きょうも街を夜廻り中の猫の遠藤平蔵が声をかけます。

「もし そこなおまいさん泣いておるな?心で 話してみないか」

上京して大学のバレー部に入った女の子。寮は2人部屋でした。

「どこ行くの?」「コーヒー飲みにいってくる」「私も行っていい?」
「朝ごはん行こう」「行ってて」「待ってるよ」

ルームメートと行動をともにする日々。自分は楽しくやっているつもりでしたが、ある日、
「あなたってさ、全て押しつけなんだよね 耐えられない 悪いけど部屋変えてもらうから」と告げられました。

女の子は3日間、大学に行かずに考えました。

「ぼっちより一緒がいいとか、私の思い込みだったよね」

話を聴いた遠藤は「大学や寮に戻れそうか?」と尋ねます。

女の子は「うん。でも、もしつらくなったらここに来る。猫さんたちに会いに」と答えました。

しばらく経っても、女の子はベンチに来ません。「あの子、来ないな」。遠藤と重郎はにっこり笑い合うのでした。

「世の中の許容度は 思うより大きい」

新しい学校、職場……そろそろ環境に慣れてきたり、新たな壁にぶつかったりする時期かもしれません。

作者の深谷かほるさんは、新生活を始めた人へ、
「慣れるまでは大変だと思いますが、無駄なことは何もないです。

世の中の許容度は、思うより大きいです」とエールを送ります。

「何度失敗しても、本人が諦めない限り、チャンスはあります」

【マンガ「夜廻り猫」】
 猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
 泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
 そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
 遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
 ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本5巻(講談社)が4月23日に発売された。

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