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2019年04月19日

「和室から、ふすまの独立を」生き残りかけた“絶滅危惧”のふすま店


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絶滅危惧動作図鑑より「障子を破る」=藪本晶子さん提供

絶滅危惧動作図鑑より「障子を破る」=藪本晶子さん提供

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昨年末に記事で紹介した「絶滅危惧動作図鑑」では、「障子を破る」というものがありました。

絶滅危惧動作図鑑より「障子を破る」=藪本晶子さん提供

絶滅危惧動作図鑑より「障子を破る」=藪本晶子さん提供

このエピソードについてブログでこのように語っていたお店がありました。

「和室が減りほとんど見られなくなった」

これ、ふすま屋としては大変なこと…

出典:黒羽表具店の黒羽尚子さんのブログより

神奈川県相模原市の「黒羽表具店」。地元でふすまや障子の貼り替えをする店です。社長の黒羽雄二さん(49)に話を聞くと、ふすまや障子業界のいまや生き残りのための新たな取り組みなどが見えてきました。

黒羽表具店を経営する黒羽雄二さん

黒羽表具店を経営する黒羽雄二さん

数の減少だけじゃない 表具店の厳しい現状

黒羽表具店は1968年(昭和43年)、相模原で黒羽さんの父・伸行さん(故人)がはじめました。もともとは東京で仕事をしていた伸行さんは、師匠に「相模原に行け」とアドバイスを受けたそう。

当時は高度経済成長期。相模原はベットタウンとなり、たくさんの住宅建築が見込めました。いざ、店を開くと、地元の工具店や県営団地などの仕事がどんどん入り、忙しくなっていきました。

1977年の神奈川県相模原市の県住宅供給公社「相武台団地」=1977年12月

1977年の神奈川県相模原市の県住宅供給公社「相武台団地」=1977年12月

出典: 朝日新聞

当初は新しいふすまを納める仕事が多かったのですが、ハウスメーカーの家が増え、工場でつくられたふすまが台頭するとともに、徐々に張り替えの仕事がメインになっていきます。障子の貼り替えも昔は12月になると、朝取りに行って夕方納める仕事をやっても、お断りするくらいたくさんの注文数だったそう。

しかし、特にここ5~6年でふすまや障子の仕事はどんどん減ってきたそうです。以前は断るほどだった年末の障⼦の貼り替えは、昨年10件ほどだったといいます。

ふすまの仕事も、団地や集合住宅でふすまが残っているところがメインで、それ以外は月数件程度。和室があっても、ふすまがないような家もあり、廃業する知り合いもいるそうです。

黒羽さんがふすまの貼り替えなどに使う道具。先代からずっと使い続け、形が変わってしまったものもある

黒羽さんがふすまの貼り替えなどに使う道具。先代からずっと使い続け、形が変わってしまったものもある

黒羽さんによると、ふすまの厳しい現状は数が減っただけではないと言います。

それは和紙の高騰です。ふすまは大きな紙が必要となります。その大きな紙をすけるため、よく使われるのが福井県でつくられる越前和紙。しかし、生産量が減り、価格が上がっているといいます。

福井県和紙工業協同組合によると、2017年の和紙の生産量は、1996年の4分の1以下。ふすま用の紙の需要が大幅に減り生産コストが上昇、和紙職人の高齢化などもあいまって、値上げせざるを得なくなっています。ふすまの貼り替えは経費が上がっており、利益率が下がっている状況だといいます。

原点は「和室で生活して」 ふすまを使用したテレビ台制作

そんな危機的な状況を打開しようと、黒羽さんが考えついたアイデアが、ふすまを家具に取り入れるという新たな発想でした。

「fuscoma.」のテレビ台=黒羽表具店提供

「fuscoma.」のテレビ台=黒羽表具店提供

これは、「fuscoma.(ふすこま)」と名付けられた収納家具。収納の戸にふすまをつけることで和のテイストが楽しめます。テレビ台としてだけでなく、盆栽の飾り棚としても活用できるということです。黒羽さんは「和紙のテイストなのに、洋間にもあうんですよ。和がふわっと感じられる空間になります」と語ります。

古民家に置かれた「fuscoma.」=黒羽表具店提供

古民家に置かれた「fuscoma.」=黒羽表具店提供

この商品のアイデアは、黒羽さんが結婚し、マンションに住むようになった約15年前にさかのぼります。市販のテレビ台にぴんときたものがなかった黒羽さんは、「ないなら、自分でつくってしまえ」。インテリアの仕事もしていたこともあり、知人の家具店などにも協力してもらって収納部分にふすまを使ったテレビ台を制作。「和紙にはたくさんの色や柄があるので、インテリア的にもおもしろいね」と好評でした。

そこから、デザインなどを洗練させ、2015年からfuscoma.として販売をはじめました。

fuscoma.のコンセプトは「和室からのふすまの独立」。どんどん和室が減っていく時代だからこそ、「このまま和室とともにふすまを無くしてはいけない」と黒羽さんは力を込めます。

テレビ台やその次に制作したキャビネットは、ふすまの上下につく敷居と鴨居とともに家具として独立させました。

キャビネットタイプの「fuscoma.」=黒羽表具店提供

キャビネットタイプの「fuscoma.」=黒羽表具店提供

ふすま職人らしいデザインは、その細部へのこだわりからも感じられました。このfuscoma.の取っ手の部分。取っ手をつけた分の出っ張りを納めるために軀体が少しだけ削られています。しかし、よくみると丸く削られています。

これは「塵落とし」と呼ばれるふすまの取っ手に使われる技法。下を丸めるようにして、ホコリが積もらないようになっているのです。

家具の取っ手の部分には「塵落とし」と呼ばれる細工が施されている

家具の取っ手の部分には「塵落とし」と呼ばれる細工が施されている

ふすま・障子屋さんが語る「お得意様」とは?

ふすまや障子が絶滅危惧といわれることに、黒羽さんは「本当になくなっちゃうなあという風に感じてはいます」と話します。でも、ふすまの良さを人一倍知っているのも黒羽さん。改めてその良さを聞きました。

黒羽雄二さん

黒羽雄二さん

「あまり気づかれない点ですが、まず軽いんですよね。木製の扉だと、重いので戸車という車輪をつけますが、そういったメカ的な部分がふすまや障子にはないので壊れないんですよ。あとは紙なので、貼り替えるだけで新品になる、再利用できる良さがあります。また、面積が大きいので、貼り替えるだけで部屋のイメージがだいぶ変わる。そんなインテリア性が個人的には好きです」

そんな厳しい環境の中で「お得意様がいる」と話していました。それは、冒頭の絶滅危惧動作図鑑に隠れていました。

絶滅危惧動作図鑑より「障子を破る」=藪本晶子さん提供

絶滅危惧動作図鑑より「障子を破る」=藪本晶子さん提供

黒羽さんがふすまの貼り替えを終えて客と話す時、よくこう話すと言います。

「お孫さんや猫ちゃんはうちの最大のお得意さまなので、是非ともご招待してあげてください」

隠れてもいませんでしたね。でも、そんな家族の営みにも触れられるという点がふすま職人の仕事の良いところだそうです。

「ふすま障子を外すと、お客様の押し入れの中まで見れちゃうんです。だから本当に短時間しかお会いしていないのに、打ち解けられる。家族とか家庭の様子が見える商売。そんなお客さんの喜ぶ顔が見られるのは、この仕事の良いところですよね」

黒羽表具店を経営する黒羽雄二さん

黒羽表具店を経営する黒羽雄二さん

そういえば、昔やったよね 「絶滅危惧動作」
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絶滅危惧動作「テレビを叩く」=藪本晶子さん提供
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