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タニタ社員証=歩数計? データに応じて使えるポイント付与、狙いは
タニタの社員証は「活動量計」と一体型になっています。いったいなぜ?
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タニタの社員証は「活動量計」と一体型になっています。いったいなぜ?
体重計などの大手メーカー・タニタ(東京都)。そんな会社の社員証は、歩数や消費カロリーなどを計測できる「活動量計」と一体になっています。いつから、何のためにそうなったのか? 広報担当者に話を聞きました。
タニタ本社でオフィスや社員食堂に入るためには、ICカード内蔵の社員証を端末にかざす必要があります。
同様の仕組みは他社でも多く採用されていますが、社員証と活動量計が一体となっているのがタニタならではです。
一見すると普通の活動量計のようですが、「TANITA社員証」と書かれており、名前と顔写真もプリントされています。液晶部分を見れば歩数などの確認もできます。
出入りの時だけでなく、複合機を使用する際などにも社員証が必要なため、忘れてしまうと業務にも支障が出てしまいます。
「2018年1月から、活動量計の携帯率を100%にしようと、忘れてしまうと困る社員証と一体型にしました」と話すのは、広報課の須永恵理さんです。
なぜ携帯率を上げる必要があったのか? もちろん「ヘルスケアに携わる企業だから」ということもありますが、もう一つ理由があります。
企業や自治体向けに販売している健康管理プログラムの使い勝手やデータ収集のための「実験」でもあったからです。
2007年に家庭向けとしてスタートした「モニタリング・ユア・ヘルス」というシステム。
歩数計、体組成計、血圧計の計測データを赤外線通信でリレーキーと呼ばれる端末に送信し、それをパソコンに接続してデータ管理する仕組みです。
開発したものの、なかなか普及せず、「実際に社員に使ってもらってフィードバックしてもらおう」となりました。
社員に使ってもらうことで技術的な改良も進み、使い勝手も向上しましたが、一番の発見は社員の医療費が下がったことでした。
加入している健保組合全体では増加傾向にあるなか、このシステムを導入して一時期、タニタ社員全体の医療費が減少したのです。
「家庭向けよりも、企業向けにシステムを提供することでビジネスチャンスが広がるのではないか?」
通信方式を赤外線から非接触ICカード方式に変えたり、リレーキーなしで計測したデータをネットワークに送信できるようにしたり。
そうしたシステム改良のためのデータ集めの一環として、社員証一体化も実施されました。
タニタ社内のあちこちに社員証をかざす端末が設置されており、そこから歩数データなどを送る仕組みになっています。
送信された歩数データはリアルタイムでモニターに表示され、現時点でのランキングなどを見ることが可能。また、パソコンやスマホアプリを使えば自分の過去の体組成などのデータも確認できます。
一方で、1カ月以上データ送信を怠ると社員証の機能が無効に。元に戻すためには始末書を書かなければいけません。
社員はただ実験につき合わされるだけのように思えますが、そうならないように工夫もしてあります。それがポイント制度です。
年度後半などになると、社員を複数のチームに分けてポイントプログラムを実施。獲得したポイントは、ネット通販で使えるポイントなどに交換することができます。
歩数や体組成などのデータを送信したり、昼休みのフィットネスプログラムに参加したりすることでポイントが付与されます。
その一方で、しばらくデータを送らない社員がいるとチーム全体にアラートメールが届き、対応しない場合は減点に。
プログラムには谷田千里社長も参加しており、広報課と同じチームになることが多いそうです。
「実は、海外出張が多いこともあって、社長が計測していないというアラートメールが届くこともあるんです」と須永さん。
この点について、谷田社長はこう話します。
「『日本を健康にする』というミッションのためには社長だって容赦なし!ということです。見かねた同じチームの社員から、手描きの『イエローカード』が届いたこともありました。でも、こうやってメールが届いたら、みんな私のことを思い出してくれるのでは……」
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