連載
#15 コミチ漫画コラボ
笑顔を誓った。それなのに…バレンタイン「非モテの俺」に起きたこと
マンガのSNSを運営するコルクBooksとwithnewsがコラボし、「#バレンタインの黒歴史」をテーマに作品を募集した企画で、ひびのしさんのマンガ「非モテの俺が、チョコをもらうためにやっていた、たった1つの事」が大賞に決まりました。
今年もこの日がやってきました。ご褒美チョコや友チョコが定番になってきたので、最近はチョコをもらえなくてもなんとも思わないかもしれませんね。でも、学生時代を思い出してみると、くだらないと思っていても気にしてしまうチョコの数……。ひびのしさんのマンガは、そんな多感な学生時代の気持ちを思い出させてくれるかもしれません。(withnews編集部・河原夏季)
主人公の男の子は、今年のバレンタインもチョコレートをもらえないと嘆き、姉や友達の反応を気にします。
「憎みたい…… 俺はバレンタインを憎みたいっ……!!」
でも、「それは……しないっ!」と決意します。
そんな負のオーラをまとうと、「さらにモテなくなるから」。笑顔でいることを誓います。
すると、家の前に女の子が。これはまさか、笑って過ごすと誓ったそばから神様は見ていたのか……!? 「本命チョコ」をもらえる雰囲気なのか……!?
ストーリーのベースにあるのは、若き日の「恥ずかしい」経験です。ひびのしさんは振り返ります。
「10代の頃の僕は、『モテるために、さわやかな笑顔を作りながら生活する』という、半端なく気持ち悪いことをやっていたことがあるので、それを元に発想しました」
大人になるまでは、「女性にモテない男はダメ」という価値観を持っていたといいます。モテたい気持ちは原動力になりますが、冷静に考えると「気持ち悪い」と思えてくるようです。
「今も、本当に気持ち悪いなって思います」
苦い思い出も、マンガにして供養してもらおうというのが「#バレンタインの黒歴史」です。ひびのしさんは、ラストで笑ってもらうことを考えてマンガを仕上げました。描きながら、「ラストと同じ顔をしていた」と話します。
ひびのしさんにとってのバレンタインデーは、「あまりうれしくない日」でした。「無用にドキドキさせられる」ことが好きではなく、「『特別な日』だけでなく、毎日を少しずつ幸せにした方がいいと考えるタイプ」だからです。
幼い頃は、チョコレートをもらった思い出もあります。これがまたマンガになりそうなお話です。
「小学生のころ、相思相愛っぽい雰囲気の女の子がいたのですが、3、4、5年と続けてチョコレートをくれたんです。だから、6年になってもくれるだろう…と予想してたんですけど、くれなかったんですよ」
「なんでだろうって、すごく気になりますよね。でも、小学生だから、恥ずかしくって、そもそも女子と会話できない。友達からその理由を伝え聞いたのですが、彼女は僕のことを『サッカーをやっているときに、いちいち指示を出しまくる感じがキモい』と言っていたそうです。だからチョコレートもくれなかった」
「いい思い出になりました。ありがとう、さゆりちゃん……笑」
現在36歳のひびのしさんは、20代のころ引きこもり生活をしていました。しかし、東日本大震災のあとから「人生の無駄遣いはだめだ」と感じ、個人や小規模で開発する「インディーゲーム」の世界に進んだそうです。
「引きこもり中から、原因不明の耳鳴り、難聴、めまい、立ちくらみがあり、医者からは『ストレスを抱え込まないように』と言われました。ですが、僕にはその自覚がないのであまり対処しませんでしたし、どうすればいいのかよくわかりませんでした」
ゲームの道へ進むと決めたものの、開発計画はうまくいかなかったといいます。
「あらゆる技術を身に付けようと、ビジネスやマーケティング、3DCG、プログラミング、サーバー運用など、片っ端から覚えようとしました。時間はどんどん過ぎていきましたが、ほぼ収入はありませんでした」
それでもやりたいことのイメージは膨らむばかりで、手が届かないことへの不安が募りました。満足に食事もとれず、さらに体調が悪化して仕事が手につかなくなりました。
「いつも、何をしていても、怖いという気持ちが抜けませんでした。立っていることも、思考することもできない。起床して、イスに座ることしかできないという日もありました」
いま、体調は回復してきています。「自分らしく、人を楽しませる」ことをしたいという気持ちを持っているひびのしさん。いろんなことに挑戦したいと、マンガ家をめざしています。
「僕はゲームを諦めた時、一度、人生を諦めました。僕は敗者で、生きる価値がないと、本当に思いました。生きているということ自体が、恥ずかしく、申し訳ない気持ちでした」
「しかし、ある程度活動ができるところまで回復した今は、そういう経験があるからこそ、できることもあるんじゃないか、と思っています。『体が弱いというハンデを持っていても豊かで幸せに生活が出来るライフスタイル』を実現して広めたいです。誰かを支えたり、励ましたり、社会に貢献するというビジョンや将来への希望を持てるようになりました」
「もし、同じような境遇の方や共感してくれる方がいたら、一緒に頑張ろう! と言いたいです」
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