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2019年02月09日

老化する日本「能力低い自治体は切り捨てる」20代の危機感とは?

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老いる日本で生まれた20代の若者が感じる本当の危機感とは?

老いる日本で生まれた20代の若者が感じる本当の危機感とは?

 みなさんの実家の最寄りの停留所に止まるバスの本数は、数年前から減っていませんか? それって実は、「人口減少」と大きく関係している可能性があります。ひとが減るって、いったいどんなことなのでしょう。そして、このままだと日本はどうなるのか。新年号の時代を担う大学生と語り合ったら「自治体が消滅するのは仕方ない」「電車も通っていないようなところに住めません」本音トークが次々と……。これって合理的? 冷たい? 専門家と一緒に考えてみました。

 

老化を防ぐというアンチエイジング商品はありますが、老いる国家に効く対策は簡単ではありません。朝日新聞では、日本の将来を案じ、現状にあらがう人々を取り上げるシリーズ「エイジング・ニッポン」をはじめました。この国のすべての人が直面する未来。平成の終わりに見えた私たちの持続可能性とは……?
死んでゆく島・脱出する頭脳・AIがはじき出した2万通りの未来
【記事はこちら】

学生たちと語り合ってみた

 座談会には、この問題に詳しい法政大経済学部の小黒一正教授と、そのゼミ生に参加してもらいました。

【参加した人】
・阿部里歩さん(3年=21歳)
・鈴木圭さん(3年=21歳)
・戸波隼さん(2年=20歳)
・日暮直人さん(2年=20歳)
・篠田侑利さん(4年=22歳)
・古川諒さん(4年=24歳)
・小黒一正さん(大学教授=44歳)
・藤原学思(新聞記者=32歳)

人口減少について話す法政大の小黒一正教授のゼミ生ら

人口減少について話す法政大の小黒一正教授のゼミ生ら

マクドナルドで過ごすおじいちゃん、おばあちゃん

藤原記者「きょうはよろしくお願いします。さっそくですが、日本では2008年に人口減少が本格化し、それからもう10年がたちます。みなさん、実感はありますか?」

阿部さん「私は横須賀市出身なのですが、バイト先のファミレスは常に人手不足です」

鈴木さん「実家が千葉県銚子市です。商店街はシャッター街になっています」

藤原記者が取材に行った高齢化率全国一の群馬県南牧村色で、民家の壁に貼られていた店舗案内図。書かれている多くの店が、いまは営業をやめた=2018年12月5日、藤原学思撮影

藤原記者が取材に行った高齢化率全国一の群馬県南牧村色で、民家の壁に貼られていた店舗案内図。書かれている多くの店が、いまは営業をやめた=2018年12月5日、藤原学思撮影

戸波さん「東京では正直、感じないです。千葉県木更津市の実家近くのお祭りはなくなりましたけど」

日暮さん「東京都町田市にある大学の多摩キャンパスはバスで行くのですが、乗っているのは多くがお年寄りのように感じます」

篠田さん「僕の出身地、埼玉県三郷市は農業が盛んな土地ですが、畑や田んぼが放置され、荒れています。耕す担い手が減ってきていると実感します」

古川さん「東京うまれ、東京育ちです。マクドナルドで過ごすおじいちゃん、おばあちゃんが目に見えて増えたような気がします」

 

藤原記者のつぶやき

(確かにこの前渋谷のマクドナルドで昼飯を食べたとき、おばあちゃんたちが延々とヘルパーさんの文句を言い合っている場面を見たなあ。人手不足、増えるシャッター街、荒れる畑……。学生たちも人口減を肌で感じているんだ)

自衛隊の採用年齢、定年の引き上げ、大丈夫かな

藤原記者「人口減は今後、日本にどのようなメリット、デメリットをもたらすと思いますか?」

阿部さん「おとなになったときの年金や医療の面が心配です。いま現在、危機感を感じているかというとそうではないのですが」

鈴木さん「地方の生活関連サービスがどうなるか。暮らしもままならなくなるのではないでしょうか。ただ、高齢者向けのサービスの需要は増えるので、そこにビジネスチャンスはありそうです」

企業の合同説明会で、立ち並ぶブースに多くの学生らが集まっていた=2018年3月1日、千葉市美浜区の幕張メッセ、関田航撮影

企業の合同説明会で、立ち並ぶブースに多くの学生らが集まっていた=2018年3月1日、千葉市美浜区の幕張メッセ、関田航撮影

出典: 朝日新聞

戸波さん「地方から都市部への若者の流出はさらに増えるのでは? 日本のマーケットも海外に出ていくのではないかと心配です」

日暮さん「地方の自治体の消滅が心配ですよね。安全保障面でも、自衛隊の採用年齢、定年の引き上げの話を耳にして、大丈夫かなって」

イベントで自衛官の服を着用し、笑顔を浮かべる女性たち=2018年12月2日、茨城県の航空自衛隊百里基地、藤原学思撮影

イベントで自衛官の服を着用し、笑顔を浮かべる女性たち=2018年12月2日、茨城県の航空自衛隊百里基地、藤原学思撮影

出典: 朝日新聞

篠田さん「ただ、機械化が進むことで、ある程度は維持できるんじゃないかという気もするんですよね。あと、母数が減るわけだから、その分、国の支援の手厚さ、質は上がるんじゃないかと」

古川さん「いま、日本の国内総生産(GDP)は世界で3位ですが、ずっと維持するのは難しいような気がします。現実的に、大きくない国のあり方を模索するべきではないでしょうか」

 

藤原記者のつぶやき

(「大きくない国のあり方」か……。そう言われてしまうと、言い返す言葉が見つからないなあ。ハーバード大教授の著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の出版から、まだ40年しかたっていないのに)

 
小黒教授のずばっと解説
【人口が減っていく国の未来とは?】日本の人口は2100年におおむね半減するとされていますから、今後80年間で6500万人減ることになります。単純計算すると、年間平均で約80万人の減少です。いまの成長率のままでは、日本の競争力は低下します。外国人労働者を入れようと思っても、彼らも成長している。たとえばカンボジア。成長率は7%くらいもあるわけです。20年間でGDPは4倍になり、日本を抜き、もはや日本にくる必要はない、となる。こういった話を日本は想定しているのか。人口減少を所与のものとして、国民一人ひとりがそれを認めるべきです。「規模効果」(スケールエフェクト)という観点からもそうです。たとえば頭脳明晰(めいせき)なひとが同じ割合でいても、10倍の人口がいれば、頭脳明晰なひとも10倍いることになる。その人たちが引っ張っていく国は強くなります。あと、安全保障面。世界的に人口が増える2050年には、3億人ぐらいいないと「人口大国」とは言えなくなります。超大国である米中に挟まれ、日本はどう戦略的に対応していくのかも問われるはずです。

能力が低い都市は切り捨てざるをえない

藤原記者「自治体の『消滅可能性』について思うことはありますか?」

日暮さん「ある程度の自治体が消滅するのは、仕方ないのではないかと思います。全部残すのは無理なわけですから。『消しちゃう』という表現は悪いけど、拠点となる都市を選んで、能力が低い都市は切り捨てざるをえないのではないでしょうか」

戸波さん「それはアリだと思いますね。淘汰(とうた)されるべきなら、守らない方が合理的ではないですか」
 



阿部さん「高齢者の方って、何十年も暮らしているわけですよね。その人たちの思い入れは想像以上だと思います。私の出身の小学校は全校児童が少なくなって、廃校になると言われています。友人の出身高校も統廃合でなくなりました。そういうことは、すごいさみしいことだと思う」

続けて阿部さん「ただ、若い世代にとっては、場所がなくなるだけで、過ごした時間はなくならないんじゃないかとも思います。みんなで集まって、思い出話ができればそれでいいのかなあ。難しいですね」

 

藤原記者のつぶやき

(なんと! 「ふるさとの喪失」というのは、越えちゃいけない一線だと思っていたけど、甘すぎるのかな。「仕方ない」で片付けてしまっていいのだろうか……。)

 
小黒教授のずばっと解説
【若者はなぜ都市部に集まるのか?】若い世代は地方の衰退を本能的にわかっている本能的にわかっているんだと思います。だから都市部にいく。地方に残る多数は高齢者です。そこに住んでいる人々がいて、水道料金が2倍とか4倍にならざるをえなくなるときに、どう維持していくのか。選択と集中という言葉がありますが、現実的に「切り捨てる」というのは、政治がもっとも不得意とする領域なんです。

本当にいた、お年寄りの票狙い

藤原記者「少し、選挙とか、民主主義について話したいんですが、全有権者に占める高齢者の割合は年々増してきていて、2050年、みなさんが50代前半の頃には、有権者の半分以上が60代以上になるという推計があります。『シルバー民主主義』仮説とも言われますが、政治が高齢者ばかりを見てしまうと。そのあたりどうですか?」

日暮さん「有権者の半分以上が60代以上って、信じられないですね、なんか。いまは周りの友人はほとんど選挙に行ってないですし、そもそも聞いてほしいという意志を持っていない。じぶんは選挙に行ってるし、『とりあえず投票はすべきじゃないか』と思います。権利を持っている以上は使うべきかなって」

衆院選の期日前投票をする高校生ら=2017年10月16日、長崎県雲仙市の小浜高校

衆院選の期日前投票をする高校生ら=2017年10月16日、長崎県雲仙市の小浜高校

出典: 朝日新聞

古川さん「若い世代だと、『行ってもムダ』というひと、政治的無関心のひとが多いと思う。私自身は投票所に一番乗りでいって、箱の中身をみるような人間ですが、圧倒的少数派だと思います(笑)。政治って、じぶんが参加しないとどうにもならないんで。『あがき』のような気持ちですかね。政治が良い方向に進まないのは、国民の責任なんですよ」

戸波さん「ある地方議会の方とお話をさせていただいたんですが、そこで『お年寄りの票が大事なんだ』という言葉を聞きました。選挙に当選することが大切だというのはわかりますが、本当にそういうふうに動いているんだと驚きました」

 

藤原記者のつぶやき

(地方議会は本当に細っているからなあ。群馬県昭和村では、議員のなり手がおらず、定数の関係で再選挙になったし。そこの議長経験者は「議員には魅力がない」って断言してたな。)

 
小黒教授のずばっと解説
【議会を維持できないレベルの人口って?】1万人を切っている自治体が議会を維持するというのは難しいですよね。ほかの自治体と一緒になったりしないと。議員って本来、そんなに簡単なものじゃないんですよ。片手間でできるものじゃない。そこまで人口が減っちゃうと、議会として機能できなくなるというのは必然。生活圏を考えても、人口10万人を切るだけでいろいろと不便が出てくるわけですから。首長のチェックを議会ではなく住民がする、というシンプルな形でもいいのではないかという気がします。

電車も通っていないようなところに住めません

藤原記者「みなさん、就職活動前後ですが、働く場所については、どのように考えていますか?」

阿部さん「東京は、知識も技術もひとも情報も、全てが集まっていると感じます。でも、地価が高いし、競争がしれつだから、起業するなら逆に地方の方が簡単かもしれないですね」

戸波さん「地方で就職したくても、できないのが現状なんじゃないでしょうか。職がありませんよね。子どもの教育も考えちゃいます。僕は2年ぐらい米国で修行して、アジアで起業しようと考えています。日本のマーケットは小さくなるのが目に見えているわけですから。ふつうに考えたら、アジアに目を向ける方がいい。苦しい思いはしたくないし、成功したいですし」

日暮さん「僕は農業に興味があります。でも、仮に自給自足ができたとしても、商売としては成り立たないのではないかと。消費者が減っていくとわかっている地方で、なにか始めようとはなかなか思えません。安定した、無難な仕事をしたいです」

新規採用職員の若者たち=2018年4月2日、下関市役所

新規採用職員の若者たち=2018年4月2日、下関市役所

出典: 朝日新聞

篠田さん「東京はちょっと、ひとが多すぎます。大阪とか名古屋とか、そのあたりに住みたい。さすがに電車も通っていないようなところに、じぶんは住めません

古川さん「東京うまれ、東京育ちの僕としては、東京じゃないときつい。じぶんを高める、力をつけるエキスは東京にこそあると思います」

鈴木さん「実は地方公務員志望です。『安定』が一番。で、1年前までは銚子市役所に勤めたいと考えていました。でも、志望が変わりました。地方公務員の実態について詳しいひとから、『地方は入りやすいけど、この先どうなるかわからないよ』とアドバイスされたからです。それで、東京の特別区や、県庁などをめざすことにしました。僕は『地方やばい』って思っていますが、こういう考え方のひとって、いまは多いと思うんですよ」

 

藤原記者のつぶやき

(「アジア進出」に「地方やばい」か……。村上龍さんの小説「希望の国のエクソダス」の一節を思い出してしまうな。「この国には何でもある。だが、希望だけがない」。地方に希望を見いだすのは多くの学生にとって夢物語なんだろうか。)

 
小黒教授のずばっと解説
【地方創世はやっぱり無理?】地方創生はなんとかする必要がありますが、現状の枠組みでは、地方の衰退はなかなか止められないと現実に思います。分権国家に移行すれば話は別ですが、市場メカニズムそのものなんですね。政治はいろいろな資源をまくわけですが、それで市場メカニズムを一時的に歪めることができても、明治維新以降の中央集権国家を改め、統治機構を抜本改革しない限り、その流れを決定的に変えるというのは無理な気がしますね。

32歳の驚きと納得「若者はわかってた」

daisan  学生たちは想像以上に合理的に物事を考えています。「日本の地方はこれから衰退するのでは」「そもそも日本が衰退するのでは」という確かな危機感を持ち、そこに立ち向かっていくというよりもひらりとかわし、個々の生き方を追求する。そんな姿勢が印象的でした。

 今後数十年は止まらない縮小化に、どう向き合うのか。簡単に答えは見つかりそうにありませんが、少なくともファイティングポーズを崩すことだけは、しないでおこうと思います。

小黒教授からのメッセージ「何を守り、何を諦めるのか」

daisan 「平成」という一つの時代の節目がもうすぐ終わります。人口減少、少子高齢化が本格化するのはこれからですが、我々世代よりも若い学生の方が、その深刻さや衝撃を理解し、必死に行動しつつあると実感しました。

 「平成」は、戦後に築き上げた様々な仕組みが時代や環境変化に適応できなかった時代でした。漸進主義的で抜本改革が進まず、もがく30年だったように思います。特に人口減少への対応は、財政・社会保障改革を含め、「道半ば」でした。

 今を生きる我々は将来世代に対し、持続可能な日本の未来を託す責任があります。「何を守り、何を諦めるのか」といった視点や国と地方のあり方を含め、現実を直視し、既成概念にとらわれず、徹底的な議論を行い、問題の解決策を模索する義務があると思います。

 

老化を防ぐというアンチエイジング商品はありますが、老いる国家に効く対策は簡単ではありません。朝日新聞では、日本の将来を案じ、現状にあらがう人々を取り上げるシリーズ「エイジング・ニッポン」をはじめました。この国のすべての人が直面する未来。平成の終わりに見えた私たちの持続可能性とは……?
死んでゆく島・脱出する頭脳・AIがはじき出した2万通りの未来
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「高齢化率日本一」の村で見た想像こえた光景
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高齢化率が日本一の群馬県南牧村は、山間部の谷にあるため太陽が顔を出す時間が短い。晴れると美しい青空が広がる=2018年12月12日、群馬県南牧村
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