IT・科学
ロボコンじゃない!地味な存在…ロボカップって? 無双する小学生も
「高専でロボットを作っていました」。そんな言葉を口にすると、決まって返される言葉があります。「え、もしかして高専ロボコン?」。何度も聞くセリフに、僕は苦し紛れに答えます。「いや、ロボカップジュニアっていう、あの…そういう大会でして」。知名度は高くないけれど魅力にあふれたロボカップを紹介します。
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「高専でロボットを作っていました」。そんな言葉を口にすると、決まって返される言葉があります。「え、もしかして高専ロボコン?」。何度も聞くセリフに、僕は苦し紛れに答えます。「いや、ロボカップジュニアっていう、あの…そういう大会でして」。知名度は高くないけれど魅力にあふれたロボカップを紹介します。
NHKで今日、「高専ロボコン」が生放送されます。誰しも一度は名前を聞いたことがあるでしょう。ですが、もう一つ、熱いロボットの大会があることをご存じですか? その名も「ロボカップ」。紛らわしい名前ですが、小学生が高校生相手に無双することもある実力が第一の大会です。知名度は高くないけれど魅力にあふれたロボカップを紹介します。(山田裕士)
「高専でロボットを作っていました」。そんな言葉を口にすると、「え、もしかして高専ロボコン?」と返されます。何度も聞くセリフに、僕は苦し紛れに答えます。「いや、ロボカップジュニアっていう、あの…そういう大会でして」
高専ロボコンとは高専生が参加する「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」のこと。特徴としては、競技テーマが毎年異なること。新年度に発表されたテーマに合わせて、自分たちのアイデアでロボットを設計・製作し、チームごとに得点やタイムを競うコンテストです。
高専自体の認知度が低い中、高専ロボコンに関してはNHKのおかげで認識が広まっており、「高専でロボットを作る」=「高専ロボコンに出場する」という方程式で考えてしまう方がかなりの割合でいらっしゃいます。ええ、別にいいんです。有名ですから。
でも、僕はそうじゃないんです。すみません!
紛らわしいロボカップとは何なのでしょう。これは、2050年までに「サッカーの世界チャンピオンチームに勝てる、自律型ロボットのチームを作る」という夢に向かって人工知能やロボット工学などの研究を推進し、様々な分野の基礎技術として波及させることを目的としたプロジェクトだそうです。
いくつか部門があり、僕が参加していたのは「ロボカップジュニア」。これは、毎年7月1日時点で19歳以下の子どもが参加できる、主に小学生〜高校生を対象とした部門です。開催の県や市などでつくる委員会が主催をしています。今春に和歌山で開かれた大会には約5千人が参加したといいます。
ロボカップジュニアの中でも「サッカー」「レスキュー」「ダンス」の3部門に分かれ、僕は高専1年生の時に「サッカー」、高専2~3年生の時に「レスキュー」に出場しました。
2012年度に関西地方の高専へ入学した当初、僕が入ったのはロボカップジュニアとは無縁の部活でした。それは、ソーラーカーのチーム。でも実際の活動はかなりハードで、軟弱な僕は、入部して数カ月でやめてしまったのです。
やめたばかりの夏。補習授業を終えて帰ろうとした僕に1人の5年生が声をかけました。手には入部届と部活のTシャツがしっかりと握られています。そう、この部こそがロボカップジュニアに参加していた部活でした。
「ぜひ、うちの部へ」。満面の笑みで入部届を差し出され、固まる僕。部活をやめたという情報は、どこから仕入れてきたのか。そんな疑問は夏の暑さで溶けてしまったように、気づけば僕は入部届を受け取り、連れられるがまま、部室へと足を運びました。
こうして、僕のロボット製作が始まったのです。
ロボコンとロボカップでは、ロボットの大きさが異なります。ロボコンは数人で持ち上げなければなりませんが、ロボカップはほとんどが両手で抱えられる小ささ。その上、三つの部門から自分の好きな部門を選んでチャレンジすることができます。この手軽さがロボカップの魅力かもしれません。
ロボコンは毎年テーマが異なるため、新しく作る必要がありますが、ロボカップは大きく変更したり、作り直したりする必要はありません。ただし、毎年少しずつルールが改変されます。それでも、テーマが変わるよりは断然作りやすいと思います。
ロボコンは、人間の操作がメインになるのに対し、ロボカップは自律型。人間が操作しなくてもスイッチを押すだけで勝手に動くのです。思い通りに動いてくれない愛らしさや歯がゆさと成長できるのも、ロボカップの大きな魅力です。
また、ロボカップでは小学生から高校生の幅広い年代が参加しているのも大きな特徴です。機械工学などの小難しい内容を学んでいる高専生が、いとも簡単に小学生に負けます。年齢でなく、実力で下克上ができるのは、他の大会ではなかなか実現できないことだと思っています。
魅力的なロボカップですが、悲しいことに、ロボコンとは認知度が違いすぎます。
高専ロボコンはNHKが大々的に、国技館から生中継しています。対するロボカップの全国大会が配信されるのはUstream。高専ロボコンで全国大会に出場するとなれば、各高専から大応援団が来ますが、ロボカップの全国大会に応援団は来ません。
以前、東京で開催された全国大会に神戸から来てくれたのは、変わり者として定評のある僕の母だけでした。
認知度に差があると、資金も変わってきます。僕が所属していた部は、学校から支給される予算と部員からかき集めた部費が全てで、部活の中にもチームが複数あったので、均等に分けたとしても数万円が限界。ギリギリで戦っていました。
ロボカップで対戦した中には、スポンサー付きの小学生チームもありました。かなり強く、けちょんけちょんにやられます。「世の中金か?」。若き高専生、突きつけられる悲しい現実がそこにはありました。
この記事が配信される日には、ロボコンの全国大会があります。もちろん生中継も。実は僕の母校も出ますし、割と応援しています。
けれど、僕はロボカップジュニアを知ってほしい。
この記事を読んでくださった方が、少しでもロボカップに興味を持ってもらえたら、書いて良かったなと思います。
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