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食パン袋とめるアレ、名前知ってる? 国内唯一の会社が年30億個製造
食パンの袋についている水色や白色の留め具。あのパーツの名前を知っていますか?
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食パンの袋についている水色や白色の留め具。あのパーツの名前を知っていますか?
ツイッターで人気のハッシュタグ「#世界一いらない報告をする見た人もやる」。その投稿の一つに、食パンの袋についている白や水色の留め具の名前を紹介するものがありました。その名は「バッグ・クロージャー」。国内で唯一製造している会社を取材すると、同じ形でも大きさが何種類もあることや、穴の部分がハートになっていたり、×になっていたりすること、ほぼあの商品だけで年間14億円を売り上げていることがわかりました。
バッグ・クロージャーを製造しているのは、クイック・ロック・ジャパン(埼玉県川口市)です。
大手製パン会社などに販売しているクロージャーは、本社にある第一工場と隣にある第二工場ですべて製造しており、その数は年間約30億個です。
「クロージャー単体ではなく、製造ラインでクロージャーを取り付ける『結束機』を導入していただいた上で、必要な数をお届けしています」と話すのは広報担当の鈴木敦さん(43)です。
バッグ・クロージャーが誕生したのは1952年。
アメリカで包装機械事業を営んでいたフロイド・パクストン氏が、「りんごを袋詰めしたあとに袋の口を簡単に閉じる方法はないか?」と依頼され、飛行機の中で原型を考案しました。
日本では食パンの留め具というイメージが強いですが、アメリカでは今でも野菜や果物の包装に使われることが多いといいます。
国内での用途は、ほとんどが食パン向け。昨年度は約14億円を売り上げたクイック・ロック・ジャパンですが、そのほとんどが製パン会社関連です。
食パンの売れ行きは、それほど大きな変動がないため、製造量も安定しているそうですが、他の留め方が広がることへの心配はないのでしょうか?
「製パン会社様の視点でいえば、工場のライン効率化、そして結束の確実性、食パンでよく見られる『巾着包装』の見栄えの良さ、といった点で優位です。使う側から見ても、開けた後も何度も使える利点があります。これが今も支持され続けている理由です」と鈴木さん。
メイン商品については立体商標も取得。機械とセットで販売する点や、クロージャーの素材や形状など独自のノウハウがあることから、同じような新規参入はないそうです。
食パンなどに使われる最もポピュラーなクロージャーで、立体商標も取得しているのが「J-NRP」です。
色は全部で7色。製パン会社の依頼に応じて異なる色を納入しています。また、この商品だけでも穴の部分の形状が9種類もあります。
リンゴのように見えるものや、ディズニーのキャラクターのシルエットのように見えるもの、ハートや×のかたちをしたものもあります。
「袋の厚みや幅に応じて、しっかり留めることができようにラインナップしています。ちなみに×になっているものは、みかんなどを入れるネット用に使われているんですよ」と鈴木さん。
真ん中の穴の理由はわかりましたが、J-NRPは外側も左右非対称で、突起やへこみもあります。それは何のためなのか?
「製造ラインのことを考慮した結果です。結束の前にロールが切れてはいけないし、結束時にはスムーズに切れないといけない。いかに効率よく、なめらかに作業できるかを考えた結果が、あの突起やへこみなんです」
一見して敵無しのようにも見えますが、「クロージャーは弊社だけかもしれませんが、袋を留めるという点では競合する会社も多いんです」と鈴木さん。
食パン以外に目を向ければ、簡易なテープ留めや、圧着式など他の方法が採用されていることも多いといいます。
そんな中、これからも留め具の「一本足打法」を続けるというクイック・ロック・ジャパン。
クロージャーと商品ラベルを一体化した「ラベルクロージャー」など、付加価値の高い留め具を販売したり、食パン以外の販路を見つけたり、といった取り組みをしています。
「食パンを見てわかるように、私どもの商品は主役ではなく、それを支える商品です。これからもさらに磨きをかけて、しっかり支えていきたいと思います」
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