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2018年09月07日

いじめ、ピアノに救われた子ども時代 「思い出のマーニー」作曲家


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作曲家・ピアニストの村松崇継さん

作曲家・ピアニストの村松崇継さん

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 映画「思い出のマーニー」や「メアリと魔女の花」、「クライマーズ・ハイ」などの音楽を手がけ、日本アカデミー賞音楽賞優秀賞の受賞歴がある作曲家でピアニストの村松崇継(たかつぐ)さん(40)。輝かしい音楽人生ですが、小学生のときはいじめにあったり、進路を決める時にはピアニストに向いていないと言われたり、何度も壁にぶつかりました。村松さんの音楽の源流に迫ります。(朝日新聞文化くらし報道部記者・三ツ木勝巳)

学校では仲間はずれ、ピアノが友達

<静岡県浜松市で育ち、幼稚園の時にピアノを始めました。小学校の頃は毎日3時間、夏休みは8時間みっちり練習していました。全国大会に出場するまでになりましたが、唯一の友達はピアノ。学校ではいじめに悩みました>

 「市の北部にある水田地帯の小学校でした。ピアノをやっている男の子なんてほとんどいない。夏のコンクールが近くなると、ドッジボールとかバスケットボールとか、指を守るためにピアノの先生から体育の球技は見学するように言われていました」

 「でも、僕はピアノをやっているって説明するのがいやだったので、友達からは『なにサボっているんだ』みたいに見られるんですよね」

<学校の下校はいつも一人。言葉を発しない子どもになりました>

 「放課後も、みんなは運動場でドッジボールをやっていましたが、僕の場合は親が校門で待っていて、ピアノのレッスンに行ったり、練習のために家に帰ったり。みんなで戯れることもできなかった。5年生くらいまでは仲間はずれのようないじめにあいました」

 「家ではいつもピアノに話しかけてもいました。どうやってピアノの部屋で楽しもうかと思うようになって始めたのが『遊び弾き』です。最初は、テレビで流れた曲を弾いてみるとか。でたらめに弾いていた。学校でつらかったことも『絵日記』のように曲にしていました」

出典: 朝日新聞

「音楽を頑張れば未来を変えられる」

そのころ、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に出会いました。主人公の少年がいじめられている姿が自身と重なり、どんどんはまっていきました

 「マーティーという主人公も結構いじめられていた。だけど、どこかで夢を追っていました。彼は、僕と同じように背が高くないんですよ。その彼が冒険をして成長していく。そして、年上の友人で博士のドクに、未来はまだ真っ白で何事もなせばなる、と言われるんです。僕も音楽を頑張れば未来を変えられるんだとすごく感銘を受けた。頑張ろうと思うきっかけになりました」

 「映画っていいなと思い、どんどんはまっていきました。仲間はずれは、仕方ない部分もあったと思います。でも、6年生のとき、教頭先生から言われて、ショパンの『別れの曲』を弾くことになった。そうしたら、いきなり大人気になりました。すごいなお前、みたいに。ピアノが助けてくれました」

ピアノの先生からの一言

<中学生のとき、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の音楽を担当した米国の音楽家アラン・シルヴェストリに、弟子入り志願の手紙を何十通も送りました>

 「女性の英語の先生と仲が良くて、一緒に英文で書きました。卒業後の進路を決めなければならなくて、僕は高校から海外へ行きたいと親に話して、だめだと言われていました。漠然と米国へ行けばアラン・シルヴェストリに会えると思っていたんです。返事はありませんでした」

 「一方で、中学に入ると、ピアノのコンクールでは全国大会に進めない。進路決める時、親も音楽の道へ行かせるかどうか、迷い始めてピアノの先生にいろいろ相談するようになったんです。その時、ピアノの先生から、ピアニスト一本でいくには手が小さいとはっきり言われました。落ち込みましたね」

 「でも僕には作曲ができるという思いがあった。浜松は音楽の街なので、音楽高校もあります。僕はそこもいいと思ったのですが、親の反対もあって普通の高校に進学しました。進学の前には、音楽はあきらめて学業の道に行きなさいと言われたのですが、反抗して1年生の時に、親に内緒で中学生の時に書いた曲で地元の作曲コンテストに応募しました」

<ここから少しずつ状況が変わっていきました>

 「『恐れを知らない探検家たち』という曲でした。音楽への反対が強く、当時あこがれていたインディ・ジョーンズをまねたいでたちでピアノを弾きました。コンテストで入賞することで、自分だってやればできるということを見せたかった。スカウトもあって、3年生の時にCDデビューもしました。普通の大学も受けることを条件に音大受験の提案をして認めてもらいました」

出典: 朝日新聞

「とにかく映画音楽の仕事に携わりたい」

<東京にある国立音楽大作曲学科に進学。在学中に配給会社を通して送ったデビューCDや自作曲が原田眞人監督の目にとまり、映画「狗神(いぬがみ)」の音楽に抜擢(ばってき)されました。2002年の「突入せよ!『あさま山荘』事件」や08年の「クライマーズ・ハイ」といった大作も担当しました>

 「最初は、とにかく映画音楽の仕事に携わりたい、その一心でした。どうしたら携われるか考えた時、その昔、アラン・シルヴェストリさんに手紙を書いた時のことではないですが、好きな監督さんにちょっとでも僕の曲を聞いてもらいたいと思うようになっていました」
 
 「『経験はありませんが、こういう曲をつくれます。監督に渡してください』と配給会社の人に送ったら、本当に届いたんです。原田監督との作品は僕の代表作として残っているので、ありがたいですね」

情景を音楽にする

<2004年に放送されたNHK連続テレビ小説「天花」の音楽を担当しました。そのサウンドトラックは、自身の「ルーツのよう」と言います>

 「最終的に親が認めてくれたのは、『天花』を担当した時です。ドラマのポスターも家に貼ってくれました。仙台市青葉区の話なのですが、水田地帯が舞台です。ロケ地が自分が生まれ育った環境ととても似ていていて、天花のサウンドトラックは自分のルーツのよう」

 「中学のころ、ピアノの部屋から見える田園風景の四季や訪れる鳥の姿なども曲にしていました。今でも情景を音楽にするのが得意だねとよく言われますが、幼少期のそういう体験が生きている。高校のころから書きためていた曲がいくつも投入されています」

<08~09年には同テレビ小説「だんだん」の音楽も担当。作曲した挿入歌「いのちの歌」は、竹内まりやさんが「Miyabi」というペンネームで作詞し、「マナカナ」(三倉茉奈さんと佳奈さん)が歌いました。その後、竹内さんらがカバーしています>

 「『いのちの歌』は、育ての母が子どもを産みの母に送る場面に使われました。その時は歌詞のない『マザー』という曲だったんです。松江の宍道湖のロケを見に行って、宍道湖の夕日と子を思う母の気持ちや命の尊さにつながっていくことをイメージしています」

40歳、シンガー・ソングライターの道へ

<日本アカデミー賞音楽賞優秀賞を、「64 ロクヨン」(16年)、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(17年)で連続受賞しました。40歳になった今年、「いのちの歌」のセルフカバー曲を収めた「青き海辺のカタルシス」をリリース。シンガー・ソングライターとしても始動しました>

 「外から見ると、すごく順調に思われるんですよ。でも、自分のなかで今のこの自分でいいのかという焦りみたいなものが常にあるんです。特に今、とてもすてきな作品に恵まれ、映画もドラマもいろいろやらせていただいている。それはもちろん楽しいです」

 「(映画やドラマで流れる音楽を担当する)劇伴作曲家は、プロとして演出家の感性に合わせたものがどうできるかです。勉強にもなるし、成長もできます。でも、そうやって感性を合わせていくことばかりをずーっとやっていると、アーティストとしての僕はどういう曲を書くのか見失いがちになってしまいます」

 「音楽家の村松崇継という部分がぶれないように、いろんな作品を形にしていきたい。自分のアルバムを出すことは、村松崇継という音楽家の統制をとっているみたいなところがありますね」

 「自分の声で歌っているアルバムができていく時はとても新鮮でした。シンガー・ソングライターとしての曲は、これまでのインスツルメントの曲と違って歌詞があるので、ストレートに自分の思いを伝えることができます。8日はシンガー・ソングライターとして初の本格的なライブがあります。シンガーとしての僕の世界観も聴いていただきたいですが、映画やドラマの世界観もライブでつくりあげていきたいと思っています。どちらのファンの方も楽しめる内容にしたいと思っています」

出典: 朝日新聞

 ◇ ◇ ◇
 むらまつ・たかつぐ 1978年、静岡県出身。これまでに50を超える映画やテレビドラマ、舞台などの音楽を手がけ、国内外のアーティストにも楽曲を提供してきた。アルバム「青き海辺のカタルシス」には、アニメーション映画「メアリと魔女の花」の音楽など、最近2年間の代表的な曲も収めた。公開中の短編アニメ映画「ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―」、これから公開の映画「あの日のオルガン」の音楽も担当している。

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