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お金と仕事

年金は「人生の保険」シャレにならない…「長生きリスク」との戦い方

年金は「人生の保険」ってどういうこと?突っ込みを入れる、たかまつななさん
年金は「人生の保険」ってどういうこと?突っ込みを入れる、たかまつななさん

目次

 「年金払って意味あるんですか?」。お嬢様芸人たかまつななさんと高校生記者から寄せられた素朴な質問。その答えを考えるヒントに「年金は人生の保険」という考え方があります。それでも年金が必要な理由について考えます。

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ややこしい!民間の「年金」って?

  素朴な疑問を投げかけるのはお嬢様芸人、たかまつななさんと、高校生記者の山田璃々子さん。回答するのは朝日新聞で18年、社会保障について取材を続けてきた浜田陽太郎編集委員です。

 

たかまつさん

「年金は貯金ではないんですね」

 

浜田編集委員

「すごく間違いやすいんです」

 

たかまつさん

「なぜでしょう?」

 

浜田編集委員

「民間の保険会社が売ってる個人年金と混同しやすいんです」

 

たかまつさん

「どう違うのかしら?」

 

浜田編集委員

「民間の個人年金の多くは、ざっくりいうと貯金です(注)」

 

たかまつさん

「年金という名前なのに貯金!?」

 

浜田編集委員

「お客さんが払い込んだお金を保険会社が運用して増やします」

 

たかまつさん

「なるほど、それは貯金です」

 

浜田編集委員

「それを一定の年齢になった後、10年などの期間に分けて支払いを受けます」

 

たかまつさん

「1年ごとに分けて受け取るから年金という名前をおつけになったと?」

 

浜田編集委員

「そういうことです」

 

たかまつさん

「貯金した分がなくなったら……」

 

浜田編集委員

「それで終わりです」

 

たかまつさん

「死ぬまでもらえるわけではないのですね」

 

浜田編集委員

「はい、もらえません」

(注)終身受け取れる民間の年金商品もあるが数は少ない。

国の年金は「仕送り」本人と会社が半分ずつ

 

高校生記者の山田さん

「国の年金が、貯金ではないとすると、何なのでしょう?」

 

浜田編集委員

「国の年金は、貯金ではなくて仕送りです」

 

高校生記者の山田さん

「誰から誰への仕送り?」

 

浜田編集委員

「あなたから、今のお年寄りにです」

 

高校生記者の山田さん

「私、ですか!」

 

浜田編集委員

「あ、高校生だと働いていいない人の方が多いですね。でも、働いて稼ぎのある人は、ほぼすべてです」

 

高校生記者の山田さん

「仕送りって、いくらぐらいなのでしょう?」

 

浜田編集委員

「東京の大卒社員の初任給は約20万円ですが、その18.3%ですので、仕送り額は3万6600円です」

 

高校生記者の山田さん

「高っ!」

 

浜田編集委員

「ただし、本人の給料から天引きされるのは、半額の1万8300円。残りは会社が出します」

 

高校生記者の山田さん

「それが、お年寄りの年金に回るということですか?」

 

浜田編集委員

「さようです。みんなが入る『国民仕送りクラブ』みたいなものです」

公的年金は「保険」?

 

浜田編集委員

「もうひとつ、国が運営する年金は保険という意味があります」

 

たかまつさん

「年金が保険? 自動車保険とは違いますの?」

 

浜田編集委員

「似ています。たかまつさんは安全運転ですか」

 

たかまつさん

「お嬢様ですので、おしとやかに」

 

浜田編集委員

「それでも保険には入りますよね」

 

たかまつさん

「普通はそうしますよね。事故にあったら大変ですわ」

 

浜田編集委員

「そう交通事故というリスクのために保険がある。年金も同じです」

「長生き」というリスク

 

浜田編集委員

「唐突ですが、たかまつさんはいま25歳ですね」

 

たかまつさん

「さようでございます」

 

浜田編集委員

「厚生労働省の予想ですと、この年齢の人はあと63年。87歳まで生きます」

 

たかまつさん

「まあ、長生きですこと」

 

浜田編集委員

「もちろん、これは平均です。もっと早く亡くなる人もいるし、もっと長生きする人もいます」

 

たかまつさん

「人生何が起きるか、わかりませんわね」

 

浜田編集委員

「わたしの父は61歳で亡くなりましたので、ずっと保険料を払い続けていたのに、年金を受け取れませんでした」

 

たかまつさん

「あらまあ」

 

浜田編集委員

「私の母は76歳になります。ぜいたくはしませんが、映画を見たり、たまに旅行したり元気に暮らしています」

 

たかまつさん

「それはよろしいですわね」

 

浜田編集委員

「ただし、もう働いて生活費を稼ぐほど体力があるわけではありません。もし年金がなかったら……」

 

たかまつさん

「暮らしていけなくなる?」

 

浜田編集委員

「それが長生きというリスクです」

自動車の事故もリスク、それと同じ

 

たかまつさん

「長生きがリスク……」

 

浜田編集委員

「わたしの母は長生きというリスクが現実になったので保険金を受け取りました」

 

たかまつさん

「そういう考え方もできますわね」

 

浜田編集委員

「一方、父だって病気をしなかったら長生きしたかもしれない。そのために年金という保険に入っていたのですね」

 

たかまつさん

「自動車の事故もリスク、長生きもリスク。それに備えるための保険なのですわね」

国を支えた人を国が支える

 

高校生記者の山田さん

「そもそも、なぜ年金ができたんですか?」

 

浜田編集委員

「一番最初にできたのは19世紀末のドイツです。ビスマルクという宰相がつくりました」

 

高校生記者の山田さん

「あのヒゲで鉄のヘルメットをかぶった怖そうな人……」

 

浜田編集委員

「はい、歴史の教科書で鉄血宰相と紹介される人です」

 

高校生記者の山田さん

「剛腕系の人が、なぜ年金?」

 

浜田編集委員

「一言でいうとアメとムチですね。社会主義者は弾圧しつつ、病気や老後の心配には国がお金を出して支える」

 

高校生記者の山田さん

「日本はどうだったんですか?」

 

浜田編集委員

「戦争が関係しています。工場で働く人を対象にした年金は1941年にできました」

 

高校生記者の山田さん

「いわゆる士気高揚?」

 

浜田編集委員

「そうです。老後の不安を取りのぞいて、生産活動に専念せしめ、戦力の増強につなげると」

 

高校生記者の山田さん

「暗い時代にできたのですね」

もし老後が不幸だと……

 

浜田編集委員

「戦争が終わって平和になっても年金は続き、1961年にはすべての国民が入れるようになりました」

 

高校生記者の山田さん

「広げていったわけですね」

 

浜田編集委員

「人は誰でも年をとります。働けなくなります」

 

高校生記者の山田さん

「この年で想像したくないですが……」

 

浜田編集委員

「収入がなくなったお年寄りが道ばたでゴロゴロ倒れている。そんなすさんだ社会は暴動も起きそうです」

 

高校生記者の山田さん

「そうならないように、仕送りで暮らせるようにするんですね」

 

浜田編集委員

「そう。私は結婚していますが、子どもがいません。貯金はしていますが、年金がないと困ると思います」

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