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盆踊りは「ダンシング・ヒーロー」謎の進化を遂げた地方があった!
盆踊りってどの地域でも大して変わらないと思っていませんか。東海地域に来れば、これまでのイメージが覆されます。荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」に合わせて、老若男女が息ピッタリに踊る姿は圧巻。ほかにも「おどるポンポコリン」などJポップが多用され、選曲が独特なのです。
7月に愛知県一宮市であった「一宮七夕まつり」で、初めて目にしたときは衝撃でした。「ダンシング・ヒーロー」の曲が流れ出すと、やぐらを囲んでいた人たちが踊り出しました。くるっと体を1回転させたり、片手を上げてジャンプしたり。「ヘイヘイヘイヘイ」と、原曲にはない合いの手も息ピッタリです。
飛び入り参加ばかりのはずなのに、どこで練習してきたのだろうと思っていると、会場で出会った地元の女性が教えてくれました。
「ダンシング・ヒーローは、1年に何十回も踊る曲」なんだそうです。「ダンシング・ヒーロー」が一宮七夕まつりで流れ始めたのは、ヒット翌年の1986年。30年を超える立派な伝統曲です。
ついには今年、本家の荻野目洋子さんが盆踊り会場に登場しました。生歌で踊るという、なんともぜいたくな盆踊りです。舞台上で荻野目さんは「毎年踊ってくださって、ありがとうございます。それを伝えにきました」と感謝の言葉を口にしました。
荻野目さんが帰った後も熱は冷めません。再び「ダンシング・ヒーロー」を流して踊り始めます。炭坑節などをはさみながら「およげ!たいやきくん」や、B.B.クィーンズの「おどるポンポコリン」、モーニング娘。の「恋のダンスサイト」と続きます。
え、この曲も? と驚きの連続です。「およげ!たいやきくん」で「フゥー!」と合いの手が入った時は、思わず笑ってしまいました。「恋のダンスサイト」で一段と輪が大きくなり、勢いも増したように感じました。世代を超えた踊りに、Jポップの力を実感しました。
一宮民踊連盟代表の加藤豊香玉さんは「若い人には激しい踊りが喜ばれます」と、Jポップを流すようになった経緯を教えてくれました。「年配の方も一緒に夢中になって、踊りに魂が入る。形よりも楽しかった、と思ってもらえることが大切です」と話します。
「ダンシング・ヒーロー」や「おどるポンポコリン」などの振り付けを考えたのは、名古屋市が拠点で全国に師範のいる日本民踊研究会です。可知豊親会長は「若者に楽しく踊ってもらおうと作られた」とふり返ります。
ポップス音楽が使われるようになったのは「ダンシング・ヒーロー」のころからで、師範を通じて広がっていきました。
その中でも「愛知は特に浸透している」といいます。理由として、愛知には伝統的な盆踊り曲がなかったからだそうです。「愛知の人々は毎年、新しい曲を楽しみにしています」
AKB48や氣志團など、毎年新しい曲に振り付けをし送り出してきました。「ダンシング・ヒーロー」のように長く残るものもあれば、2、3年で消えるものもあるといいます。
愛知で始まった盆踊りも、今では東海地域で親しまれています。岐阜県美濃加茂市の「おん祭MINOKAMO」では、毎年「ダンシング・ヒーロー」で大盛り上がり。採り入れたのは地元盆踊りサークル「舞童」の今井一彦さん。1995年ごろ、岐阜県可児市で見たことがきっかけだったそうです。「発祥は愛知だけど、勢いは負けません」と、魅力にはまる人は増えているようです。
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