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なんで薬を人にあげちゃうの? SNSで話題「薬の恐い使い方」の真相
SNSで湿布薬として知られる「ケトプロフェンテープ」による色素沈着のトラブルが話題になりました。他にも、目薬を使っていたことを黙っていて入院する羽目になった人。ピルの効果を弱める意外な薬。うつ病の治療で男性から出た“おっぱい”。意外と知らない薬のトラブルや副作用について紹介します。(薬剤師ライター・高垣育)
話を聞いたのは、つるさん薬局管理薬剤師の鶴原伸尚さんです。
ケトプロフェンテープと同じく、痛み止めの湿布によるトラブルはほかにもあると鶴原さんは言います。
「自分がもらってきて、とっておいた湿布を家族にあげたことや、おじいちゃんやおばあちゃんがもらってきた湿布を譲ってもらって使ったことはありませんか。ぜんそくの方が解熱鎮痛薬を使うと“アスピリンぜんそく”といって、ぜんそく発作や鼻炎症状を起こすことがあります」
「アスピリン」と名前がつくので、アスピリンにだけ注意しておけば良いと誤解されがちですが、ほとんどの解熱鎮痛薬で起こり得るそうです。
飲み薬だけではなく、飲み薬や注射薬以外の、目薬、塗り薬、貼り薬など皮膚や粘膜の表面に使う薬である外用薬の使用でも注意が必要です。
「困っていたから、親切のつもりで……」
「自分にはこの薬がとてもよく効いたから、あなたにも……」
調子の悪い人に少しでもよくなってもらいたい。病院に行くのは大変そう。お金や時間を使わせるのはもったいないから……。そんな親切から譲った薬が、逆に健康トラブルの原因になったら本末転倒です。
また、湿布のような外用薬でまさかトラブルが起こるとは思わず、軽い気持ちで譲ってしまう場合も。
しかし、病院でもらう薬は、医師がその人の症状、年齢、血液検査の結果、他に使っている薬、持病、アレルギーなどを確認した上で出されています。実は、ものすごく高度な知識が必要なのです。
自分にはよく効いて、副作用が起こらなくても、他の人にはあわず、思わぬ副作用が起こることがあります。
避妊の目的で低用量ピルを飲んでいる女性は薬の飲み合わせに注意が必要です。
「ピルを飲んでいるときに、感染症の治療などに使われるペニシリン系およびテトラサイクリン系という種類の抗生物質を一緒に飲むと、ピルの効果が弱まると報告されています」
そのため、抗生物質服用中はピル以外の方法を用いて避妊する必要があります。
飲み終わった後も、抗生物質の影響が続く場合があります。注意を要する期間や対処法についても確認が必要です。
飲み合わせによるトラブルは、ピルだけではありません。
複数の薬を使うことによって、薬の効き目が強くなったり、弱くなったり、思わぬ作用が現れたりする場合があります。
専門知識がない普通の人が把握するのは無理です。では、どうやって防げばいいのでしょうか?
そんな時の「お薬手帳」です。
病院や薬局に行くときに持参して、いま使っている薬との飲み合わせを確認しましょう。
もう一つ、注意したいのはサプリメントや健康食品、お酒やタバコなどの嗜好品、処方箋なしで買える一般用医薬品などです。
飲み合わせによるトラブルは、お医者さんからもらっている薬だけで起きるわけではありません。
心配になったときには薬を買った薬局などに相談してみてください。
「緑内障の患者さんが、頻尿の治療のために飲んだ薬の影響で急に眼圧が高くなり、入院になったことがあります」
緑内障は、目の中の圧力「眼圧」の上昇などによって視神経が傷む病気です。
視神経はものを見るのに重要な役割を果たしていて、傷つくと見えづらくなるなどの障がいが起こります。
この患者さんは、頻尿の治療のために近所の内科を受診しました。しかし、緑内障の治療のことを内科の医師にも薬局にも伝えていなかったそうです。
持病って、これまでの個人的な経験から「たいしたことないや」「外用薬しか使ってないし、伝えなくていいや」など、自分で判断してしまいがちです。
でも、ちょっと待って。
病院で処方される薬によって、持病に想像もしない影響が起きることがあるんです。
薬というのは、ある病気にはよく効いても、別の病気に対しては悪影響を及ぼす方に働いて、体に大きなダメージを与えかねません。
それだけに、医師や薬剤師は一つの薬に対しても、高度な訓練によって得られた知識と、様々な情報を元に判断をしています。
注意したいのは、二つ以上の病院を「掛け持ち」する時です。
治療中の病気がある人は、他の病院にかかって新しく薬を使い始める時、トラブルになる可能性が高まります。新しく処方された薬が持病に好ましくない影響を及ぼす場合があるからです。
迷ったら、医師に相談する。なんでも医師に伝える。これ鉄則です。
ぜんそくの治療に使うことがある「吸入ステロイド薬」。気道の炎症を抑えてぜんそくの発作が起こらないようにする大切な薬です。
「吸入ステロイド薬を使った後には必ずうがいをします。薬が口の中に残ると、これが原因となって“口腔(こうくう)カンジダ症”になることがあるためです」
舌が痛くなるなどの症状が出る口腔カンジダ症の原因菌「カンジダ菌」は、健康な人の体にも存在する菌です。
長期間の吸入ステロイド薬の使用により口の粘膜の免疫力が低下すると、カンジダ菌が繁殖しやすい環境になり、口腔カンジダ症を発症する場合があります。
「うつ病の治療で、スルピリドという薬を飲んでいた男性の患者さんから“おっぱい”が出ると相談されたことがあります」
スルピリドのような「ドパミン」というホルモンのはたらきを抑える薬を飲むと、乳汁を出す「プロラクチン」というホルモンが分泌されます。
その結果、授乳中ではない女性や、男性の胸から“おっぱい”が出てくる場合があるのです。
「飲み薬だけではなく、目薬や貼り薬などの外用薬も大切な薬です。現在飲んでいる薬や、治療中の病気のことを医師や薬剤師などに伝えてください」と鶴原さんは強調します。
「それが、本来防ぐことができる薬によるトラブルを起こさないようにし、ご自身の健康を守ることにつながります」
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