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野焼き法律的にOK?長野に住んで驚いた…「下草火災」が多い理由

煙を上げて燃える山林火災=2017年5月5日、飯田市南信濃南和田、静岡県消防防災航空隊提供
煙を上げて燃える山林火災=2017年5月5日、飯田市南信濃南和田、静岡県消防防災航空隊提供

目次

 長野に転勤してきて驚いたこと。それは「下草火災」です。しょっちゅう起きるのです。どうして長野でこんなに多いのでしょう。県外出身の我々2人にとって「長野に来て驚いたことベスト5」に入る謎です。特にこの春は下草火災が急増していて、7人もの方がお亡くなりになっています。犠牲者まで出ていることを考えると、これはもう一種の社会問題。シタクサカサイに迫ります。(朝日新聞長野総局記者・田中奏子=島根出身、大野択生=東京出身)

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【動画】2015年に発生した長野県岡谷市の山火事現場

2月以降、198件7人死亡

 

択生

そもそもシタクサカサイって何ですか?

 

長野県消防課

たき火や野焼きの火が、周りの下草に燃え移ること、です。
【ミニ解説・呼び方は色々】
実は下草火災と呼ぶのは警察で、長野県は枯れ草火災と呼ぶ(ややこしいので、以下は下草火災で統一)。

 

択生

被害が深刻です

 

長野県消防課

風が飛び火させるケースが多く、下草火災が山火事になることも少なくありません。
ヘリによる放水活動=2018年4月6日、長野市若穂綿内
ヘリによる放水活動=2018年4月6日、長野市若穂綿内 出典: 朝日新聞

「過去5年間で最悪の数字です」

 

択生

最近ではどんな被害が?

 

長野県消防課

今年4月6日、強風にあおられて山林約24ヘクタールが焼けました。

 

択生

今年の傾向は?

 

長野県消防課

今年2月から4月15日までの間に県内で発生した下草火災は198件です。

 

択生

そんなにも!

 

長野県消防課

林野火災が20件。死者は7人に上り、19人がけがをしています。

 

択生

それって……?

 

長野県消防課

過去5年間で最悪の数字です死者は7人に上り、19人がけがをしています。

 

択生

火災が集中する季節は?

 

長野県消防課

下草火災は例年、春に集中します。農作業が始まる前の春先に野焼きをするためです。

 

択生

今年、増えた理由は?

 

長野県消防課

今年は3月中旬以降雨が少なく乾燥した日が続き、火災も増えました。
消火活動にあたる自衛隊のヘリコプター=2015年3月31日、岡谷市、朝日新聞ヘリから、日吉健吾撮影
消火活動にあたる自衛隊のヘリコプター=2015年3月31日、岡谷市、朝日新聞ヘリから、日吉健吾撮影 出典: 朝日新聞

県によってもバラバラ

 

奏子

ちょっと待ってください! 私は隣の新潟県から今月異動してきたんですが……

 

奏子

新潟では『下草火災』って聞いたことがありませんでした

 

奏子

ちなみに私、出身は島根県で、島根でも聞いた記憶はないんですけど……
【ミニ解説・他県でも違う】
実は「下草火災」について、他県は微妙に違う。新潟は「枯れ草火災」、岐阜は「たき火火災」。

【ミニ解説・長野は数字でも突出】
呼び方が違うとはいえ、発生件数で長野が突出しているのは事実。岐阜県の発生件数は、昨年1年間で82件。新潟県に至っては「少ないので統計を取っていない」
 
燃えて白い煙を上げる山林=2018年4月2日、飯田市千代、長野県警提供
燃えて白い煙を上げる山林=2018年4月2日、飯田市千代、長野県警提供 出典: 朝日新聞

野焼き、法律的には……

 

奏子

なぜ長野で多いのでしょう?

 

長野県農業技術課

長野では草刈り後、乾いた草を焼いて処分する『枯れ草処分』だけでなく……

 

奏子

だけでなく……?

 

長野県農業技術課

畑の表面を焼くことで雑草の種子や害虫を駆除する『焼き畑』のために火をつけることもあります

 

奏子

法律的にはOK?

 

長野県農業技術課

家庭ゴミを燃やすことを禁じる廃棄物処理法では、農業で出たゴミに限って燃やしてもOKです

 

奏子

つまり……

 

長野県農業技術課

法的には何の問題もありません

 

奏子

では、なぜ長野だけが多いんですか?

 

長野県農業技術課

ちょっと存じ上げないですね……
【ミニ解説・結局原因は?】
畑作が多い、空気が乾燥している、風が強い、昔からの習慣、などなど思いつく理由はあるが、決め手はない。
白煙を上げる山林=2018年4月2日、飯田市千代、長野県警提供
白煙を上げる山林=2018年4月2日、飯田市千代、長野県警提供

「燃やさせぬ」試みも

 「燃やさせない」試みを始めたところもあります。

 長野市は2005年度から、農家が枝切りした果樹の枝を、まきストーブの燃料に使う家庭に提供する仲介事業を進めています。

 これまでに延べ約1800人が利用しました。

 市によると、毎年秋に枝の提供者と希望者から申し込みを受け付け、条件に見合う人をマッチング。金品の授受は禁じたうえで、あとのやりとりは利用者同士に任せています。

 事業を始めたきっかけは火災の原因となる野焼きや煙への苦情を減らすこと。

 焼却以外の処分方法を農家に呼び掛けている県農業技術課は、「長野市の事業は先進事例の一つだ」と説明しています。

     ◇

 田中奏子(かなこ)2017年入社、23歳。島根出身。ハムスターのたまちゃんを新潟に置いてきた。酒は飲めない。

 大野択生(たくみ)2016年入社、24歳。東京出身。取材で挑戦したトレランにはまりそう。

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