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お金と仕事

青森トヨタ「残業5分の1」改革 慣例の「納車引き取り」やめるまで…

青森トヨタ自動車が顧客約3万5千人に宛てて送った「納引き」中止を知らせる手紙
青森トヨタ自動車が顧客約3万5千人に宛てて送った「納引き」中止を知らせる手紙

目次

 当たり前だと思っていた業務をやめたことで、残業代が5分の1になる――。「納車引き取り」をやめた青森トヨタ自動車(青森市)の取り組みを紹介したところ、大きな反響がありました。取材のきっかけは、トヨタ車に乗っている自分の家に届いた手紙。「トップダウンで言わなければ会社は動かない」と言う会社が取り組んだ働き方改革を振り返ります。(朝日新聞青森総局記者・中野浩至)

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想像以上の成果

 「お客様各位 車両の引取り・納車時の『ご来店』のお願い」

 そんな手紙がトヨタ車に乗っていた私の自宅に届いたのは昨年11月。車検の際などに、青森トヨタ自動車(青森市)の従業員が顧客宅まで直接車を引き取りに行ったり届けたりする「納車引き取り(納引き)」をやめる、という内容でした。

 「働き方改革」が世の潮流とはいえ思い切ったことをするものだと思い、取材を申し込みました。「始めたばかりなので、結果が出る来春まで待ってほしい」という回答だったため、半年待って再度連絡を取ったところ、「残業時間が従来の5分の1」というこちらの想像以上の成果が出ていることが分かりました。

納引きをやめた後は「子どもと触れ合う時間が増えた」と話すエンジニアの池田智寛さん=青森市
納引きをやめた後は「子どもと触れ合う時間が増えた」と話すエンジニアの池田智寛さん=青森市 出典: 朝日新聞

「昔ながらの感覚」で続けた業務

 「エンジニアはスパナを持つのが仕事。営業は商談をしてなんぼ」

 取材に応じた小寺秀樹専務の説明は明快でした。「トップダウンで言わなければ会社は動かない」と強調した言葉どおり、私を含めた顧客計約3万5千人あてに出した手紙の差出人は、小野大介社長名でした。

 現場のエンジニアや営業担当者は「昔ながらの感覚というか、当たり前のことだった」と、納引きに疑問を持っていなかったという。廃止するという会社の方針には、客離れを起こさないかという不安のほうがむしろ大きかったようです。

 しかし、いざ取り組みを始めてみると、これまで顧客宅と職場の往復に費やしてきた時間を、書類の作成や車の点検に充てられるように。納引きがそういった本来の業務より優先されていたとすれば、小寺専務の言うように「異常」なことだったと言えるかもしれません。

青森トヨタの取り組み
青森トヨタの取り組み 出典: 朝日新聞

サービスを縮小しワーク・ライフ・バランス

 一方、顧客のほとんどが来店するようになり、エンジニアは点検だけでなく、接客や検査事項の説明、精算にも追われるようになりました。

 以前なら店舗のフロント担当者が引き受けていた業務にエンジニアも駆り出された格好で、限られた点検時間が圧迫されることもあるといいます。エンジニアの1人は「手を抜くようなことだけは絶対にしない」と語気を強めました。

 宅配業者が配達時間の指定区分を見直すなど、サービスを縮小しながら従業員のワーク・ライフ・バランスを確保する動きは、今後も広がるかもしれません。私たち消費者はそうした流れを理解しなければならない半面、商品そのものの「質」が低下していないか、見極める必要があると思いました。

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